第六話 白鷺会若頭・真田圭吾――動画
「物資が消えた?」
「そう。食料とか衣料とか医薬品とか。当時はもう食い詰めた連中がたくさんいたからな。誰かが盗んだんだろ。だが問題はその後で、運転手は軍に責められて自殺したらしい。それ以来、あのトンネルでは時々運転手の霊が出るって話が残ってる」
「なるほど。それで最近の噂は?」
「最近はな、そこで人が消えるって話だ」
「人が消える?」
私は受話器を握り直した。
ただの心霊スポットでは済まない。
何かがそこに巣食っている。
「詳しい話を聞かせてくれ」
「それがよ、俺もまだ情報がまとまってないんだ。ただ、一つ気になる動画を見つけた。今お前に送るから見てくれ」
「ああ、頼む」
私は電話を切り、すぐにスマートフォンを開いた。柿谷から送られてきたのは一本の動画ファイルだった。
タイトルは『【拡散禁止】廃トンネルで撮影された心霊映像』。
再生時間は三分ほどのようだ。
私はイヤホンを装着し動画を再生した。
画面には四人の若者が映っていた。
白鷺会の若い連中ではない。
別のグループだ。彼らは笑いながらトンネルの中へと入っていく。ライトを手に、ふざけ合いながら進む姿はどこにでもある心霊スポット探索動画に見えた。
「おいおい、マジで暗いな」
「やめとく? 今ならまだ戻れるぜ」
「バカ言え。最後まで行くぞ」
そんな軽口が飛び交う中彼らはトンネルの奥へと進んでいく。
やがてトンネルの中腹あたりに差し掛かった時、異変は起きた。
「なあ、今の音……聞こえたか?」
「音? 何も聞こえなかったけど」
「いや、女の声みたいな……」
「お前、ビビりすぎだって」
笑い合う彼らだったが、次の瞬間、カメラが激しく揺れた。
「うわっ! なんだこれ!」
「おい! 誰か俺の肩を叩いたか!」
「誰も叩いてねえよ!」
「マジかよ……」
彼らの声から笑いが消える。
カメラは乱れ、ライトが壁を照らした。
その光の中に――一瞬だけ、紫の服を着た女の姿が映った。
「今の見たか! 紫の服の女!」
「見た! 俺も見た!」
「走れ!」
彼らは一斉に走り出した。カメラが激しく上下に揺れる。息遣いが荒くなり、悲鳴がトンネル内に木霊した。
「出口はまだか!」
「もうすぐだ!」
ライトが前方を照らす。
出口の光が見えた。
あと少し。
誰もがそう思った瞬間だった。
カメラが突然後方を向いた。そこには紫の服を着た女が立っていた。青白い顔に、不気味な笑みを浮かべて。
「ぎゃああああ!」
動画はそこで途切れていた。
最後の数秒間、画面には女の顔が大写しに映り、その目がじっとこちらを見つめていた。




