第六話 白鷺会若頭・真田圭吾――師弟
ざわつきが広がり、立ちはだかった若い団員の顔色が変わる。
「紅さん……! 申し訳ありません、失礼いたしました!」
彼は慌てて頭を下げ、道を開けた。
すると、奥から数人の男たちが早足で近づいてくる。その中に見知った顔があった。白鷺会若頭補佐の黒崎恭平だ。年は三十代半ばで、短く刈り込んだ髪に鋭い眼光。背は高く、体格もがっしりとしている。私の姿を認めると、彼は丁寧に頭を下げた。
「紅さん、お久しぶりです。よくお越しくださいました」
「黒崎君。久しぶりですね」
「若頭がお待ちです。こちらへどうぞ」
私は黒崎の案内で奥へと進んだ。廊下は無機質な作りで、壁には防犯カメラが等間隔に設置されている。
いくつものドアを通り過ぎ、突き当たりのエレベーターに乗り込む。
黒崎がボタンを押すと、エレベーターはゆっくりと上昇していった。
「若頭も紅さんが来てくださると聞いて、とても喜んでいました」
「そうですか。彼は……いや、あいつは相変わらずですか?」
「ええ、お変わりなく。ただ最近は忙しくされていて、少しお疲れのご様子ですが」
「忙しいのは結構なことでしょう」
エレベーターが止まり、ドアが開く。
最上階。
ここが若頭の執務室があるフロアだ。
廊下の奥に、重厚な木製のドアが見える。
黒崎が先に立ち、ドアを三回ノックした。
「若頭、紅さんをお連れしました」
「入れ」
低く落ち着いた声が聞こえた。黒崎がドアを開け、私を中へと促す。
私は一歩足を踏み入れた。
そこは応接室と執務室を兼ねた広い部屋だった。
大きな窓からは街の夜景が見渡せる。
部屋の中央には高級そうなソファセットがあり、奥には重厚な机が置かれている。
そして、その机の向こうに――
一人の男が座っていた。
白鷺会若頭・真田圭吾。年齢は三十代半ば。黒いシャツにスーツを羽織り、長い脚を組んで私のことをじっと見つめている。その瞳は鋭く、それでいてどこか懐かしむような光を宿していた。
「久しぶりだな、師匠」
真田圭吾はそう言うと私をソファへと促した。
私も軽く会釈を返し、彼と向かい合うように腰を下ろす。
「元気そうだね」
「ええ。おかげさまで。師匠も変わらないようで安心しました」
「お前こそ、若頭だか何だか私には分からないけど、随分偉くなったじゃないか」
「組織の看板に振り回されてるだけですよ。実態は雑用係です」
圭吾は肩をすくめて見せるが、その目はまったく笑っていなかった。
昔からそうだ。彼は冗談を言う時ほど本心を隠している。
私は単刀直入に尋ねた。




