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第五話 森山花蓮の受難――依頼達成

 私はコクピットのシートに体を預け深く息を吐いた。

 夜空を見上げると、街の明かりの向こうに小さな星が二つ並んで輝いていた。

 それはまるで親子のように寄り添っていた。

 戦いが終わり私はディストレイを戻すと地面に降り立った。

 隣には美花の姿もあった。

 時刻は八時を少し回ったところだ。

 空を見上げると、無数の星が瞬いている。

 あの親子の光が天へと還っていったあとには、澄み切った夜の空気が広がっていた。

「翔太!」

 遠くから柿谷の声が聞こえた。

 振り返ると、柿谷、森山花蓮、そして分身体の美花がこちらに向かって走ってくる。

 花蓮の姿を見て、私はようやく肩の力を抜くことができた。

「よかった……無事でしたか」

「紅さん……」

 花蓮は私の前に立つと、深く頭を下げた。

 その瞳には涙が滲んでいる。

「本当に、ありがとうございました。私またあなたに命を救われてしまって」

「顔を上げてください。あなたが無事で何よりです」

 私は花蓮の肩にそっと手を置いた。

 彼女は何度か頷きながら、それでもしばらくは顔を上げられないようだった。

「お疲れさん。美花が翔太のところへ行くと言った時は肝が冷えたけど、どうやら勝てたようだな」

「ああ。美花が来てくれなかったら、一人の少女を救うことはできなかっただろうな」

 私の言葉に、美花がにゅるりと姿を現した。

 白い大蛇は花蓮の足元に寄り添い、その顔をじっと見上げる。

『森山さん、もう大丈夫よ。あの子の呪いも、あのマンションに蔓延っていた負の念も、すべて浄化されたわ』

「美花さん……ありがとうございました」

 花蓮がしゃがみ込み、美花の頭を恐る恐る撫でる。

 美花は気持ちよさそうに目を細めた。

「さて、それじゃあ警察に連絡しないとだけど……」

 柿谷が現実的なことを口にする。

「そこは任せてください。ですが、おそらく小野寺さんの事件は、結局は心臓発作ということで処理されるでしょう。幽霊なんて非現実的な者のせいにするわけにもいきませんので」

 そこは花蓮に任せておけばいいだろう。

「今日は本当にお疲れさまでした。詳細はまた明日にでも話しましょう。森山さん、今夜はゆっくり休んでください」

「はい。紅さんも、ありがとうございました」

 花蓮はもう一度頭を下げ、それから何かを思い出したように顔を上げた。

「あの、紅さん。また何かあったら連絡してもいいですか?」

「もちろんです。私でよければ、いつでも力になります」

「ありがとうございます」


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