第五話 森山花蓮の受難――奇怪な能力 ディストレイVSパラサイトグリード(杏奈)
ディストレイの両腕に力が漲る。
『行くぞ、ディストレイ』
『ああ。あの娘を……救おう』
巨神が動き出す。
その一歩が地響きとなって夜の空き地に響き渡った。
杏奈だったものも咆哮を上げ無数の触手を一斉に伸ばしてくる。その先端の口が、私たちを喰らおうと牙を剥いていた。
戦闘が始まった。
しかし、まだ『サテライトビーム』が照射されていない。つまり、この戦闘で破壊された物質は元に戻らないのだ。街路樹も、電柱もアスファルトも。すべてがこのまま傷ついていく。
「くそっ……早く来てくれ!」
私はそう願いながらも迫りくる触手の群れに意識を集中させた。
ディストレイの右手の甲からオリルフィアが展開され、真紅の刀身が『浄化の炎』を纏って輝く。
「斬る!」
巨神の一閃が空を裂く。
オリルフィアの刃は触手の半数を一瞬で斬り落とした。だが、残った触手は執拗に迫ってくる。私は左腕のアトランリアを掲げ、逆五角形の盾で受け止めた。ドゴォンという衝撃がコクピットを揺らす。
「数が多すぎる……!」
斬っても斬っても触手は再生し、その先端の口がさらに増えていく。まさに無限地獄だ。このままではジリ貧になる。
その時だった。
空が光った。
「来たか!」
私はコクピットで叫んだ。
雲の切れ間から一条の光が降り注ぎ、私たちの周囲を覆い始める。
待ちに待った『サテライトビーム』だ。
これで破壊された部分は、光が消えると同時に修復が開始される。
「アトランリア、砲撃モード!」
枷が外れたので、ここからは全力で戦わせもらおう。
私は操縦桿を操作し左腕の盾を変形させた。逆五角形の盾が展開し、内部から砲身がせり出す。そこに雷のエネルギーがチャージされていく。
「喰らえ! 『裁きの雷弾』!」
極太の雷撃が一発、杏奈だったものに向かって放たれる。目にもとまらぬ速さで一直線に飛翔し、その巨体に着弾する。
しかし――
バチィン!
雷弾は敵の体に触れた瞬間、まるでゴムボールのように弾かれて空中で消滅した。
ダメージは与えられていない。
「なっ……弾かれた⁉」
『むう、奇怪な能力だ』
「ならば、これならどうだ!」
ディストレイの声が冷静に分析する。
「ならば、これならどうだ!」
私はアトランリアの出力を最大に引き上げた。
チャージされたエネルギーは弾丸ではなく、極限まで圧縮された光のビームへと変わる。
「『裁きの雷光』!」
放たれた光のビームは空間を切り裂きながら杏奈の巨体を貫こうと迫る。
その時だった。
『うっ、くううう』




