第五話 森山花蓮の受難――少女の叫び
『これなら直接『浄化の炎』でダメージを与えられるはずだ』
「ああ」
私はすぐに『浄化の炎』を発動させた。
真紅の炎が右手に灯り周囲の闇を照らし出す。
そして私は地面に右手を押し付けた。
瞬間、炎は地面を伝わり地中深くへと浸透していく。
負の念を糧にして炎は燃え上がり眠っている遺骨まで焼き尽くす。
地中からは無数の悲鳴が響き上がった。それは杏奈の霊に囚われていた無縁仏たちの魂か、それとも杏奈自身の悲鳴か。
「うおっ……!」
地中から噴き出した負の念が炎と反応し小規模な爆発が起こる。
私は片手で顔を庇いながらも炎を絶やさない。
地面が赤く脈打ち土が弾ける。
『ぎゃあああ!!』
一際大きな悲鳴が響いた。
それは間違いなく杏奈の声だった。
空気が震えあたりに立っていた草が一斉に枯れていく。
そして地中に眠っていた無数の遺骨が浄化されていくのが感じられた。
「これで……終わったのか?」
『勝手に終わらすな!』
怨嗟の声とともに地面が裂け杏奈が姿を現した。
赤いワンピースに小さな体。
しかしその瞳は虚ろで、体に纏う負の念は一介の霊が持つにはあまりにも強力すぎる。周囲の空気が歪み、草木が一斉に枯れていく。
「これは……」
『パラサイトグリードとなったな。しかも……『受肉』寸前だ』
ディストレイの声が緊張を帯びる。私も即座に理解した。
ディザスターが杏奈に寄生させたパラサイトグリードが、この悲劇と怨念を糧に成長し今まさに完全体になろうとしているのだ。
『お前、私の邪魔をするな!』
杏奈が叫ぶ。その声は少女のものとは思えないほど低く、怨念が幾重にも重なったような響きだった。同時に彼女の周囲の負の念が巨大な竜巻となって私に襲い掛かる。
「これはまずい! ディストレイ!」
私は右手で空間を横殴りした。
バリッという音とともに空間に亀裂が走り魔方陣が出現する。その中からオリジナルの『浄化の炎』が壁となって現れ、竜巻を一瞬で浄化した。
『ああ何で邪魔をする! 私はただお母さんに会いたいだけなのにぃぃ!』
杏奈の怨嗟の声がさらに大きくなる。彼女の体から溢れ出す負の念はさっきよりも濃密で、周囲の空気を圧迫し地面を腐食させていく。
私は思わず後退りしながらも、右手に『浄化の炎』を灯し続けた。
「うおっ……!」
このままでは対処しきれなくなる。
杏奈の力は刻一刻と増している。彼女の悲しみと怨みが力となって無限に湧き出ているかのようだ。
『杏奈!』




