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第五話 森山花蓮の受難――願い

『はい。始めは私と会いたいという気持ちが強かったようですが、今は人を殺すことに快感を覚えているような気がします。そのせいで杏奈は、あのマンションに住む人たちに、恐怖を振りまくようになりました。私は止めようとしましたが、私の声は届くことは叶わず、あの子は私を探しながら殺戮を繰り返しています』

 おそらく、ディザスターが杏奈にパラサイトグリードを寄生させておいたのだろう。その影響がもろに出ているな。

『どうにかあの子を助けてあげたかったのですが、私はここから出られず、魂の半分の入った人形は喋ることができない。絶望する毎日でしたが、そんな時、あなたが現れました。あなたから漂う心地の良いオーラなら、この悲劇を終わらせてくれると思ったんです』

「オ、オーラですか?」

『はい』

(あ、相棒、私はそんなオーラを出しているのかい?)

『知らん』

 と一掃されてしまった。

「オ、オホン。えー、それで写真を私に?」

『はい。数字は、私が杏奈を探し続けた場所を示していました。30と54は無縁仏の墓、87

と――』

 美咲の手元には黒い写真が握られている。彼女が写真を撫でると、黒い部分が消えて全体像が見えてきた。

 それは誕生日ケーキ、それに刺された4という数字、そしてその横にプリンが写っていた。

『これは杏奈が4歳の誕生日に買ってあげたケーキとプリンの写真です。この4と87は公園の方角を指しています。あなたはちゃんと気づいてくれましたね』

 美咲は、かすかに微笑んだ。

 それは長い年月の中で、初めて見せた安堵の笑みだったのかもしれない。

『お願いです。杏奈を、止めてあげてください。あの子は、もう十分に苦しみました。母を探して、一人ぼっちでずっと。私のせいなんです。全部、私のせいなんです』

「あなたのせいじゃない」

 私は静かに、しかしはっきりと言った。

「悪いのは貴方たちを利用したあの腐れ外、いや、ディザスターです。私が貴方たちを解き放ってあげましょう」

『ありがとうございます』

 美咲の声が、わずかに震えた。

 それは安堵か、それとも長年の悲しみが溢れたのか。

「では、無縁仏の墓へ行きましょう。娘さんの遺骨の場所へ」

『ですが、私はここから動くことが――』

「大丈夫です。貴方は自由なはずだ」

 美咲を縛っていたものは、娘に会えなかったという後悔の念が大きな鎖となってこの土地に打ち付けられていたからだ。それを『浄化の炎』で癒したので、その鎖から解き放たれたのだ。

「さぁ、無縁仏の墓へ」



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