第五話 森山花蓮の受難――元凶
『建材として使われたのは墓石と土だけで、あの子の骨はまだ無縁仏の墓跡地で眠っているんです。ですので、本来ならばあのマンションよりも、無縁仏の墓跡地の方で今も縛られているはずでした。あの男が来るまでは』
あの男、という言葉を耳にした時、自然とあの忌々しい上位存在と顔が浮かんだ。
「もしかして、その男はディザスターと名乗りませんでしたか?」
『そ、そうですが……貴方もあの男に何かやられたことがあるのですね』
どうやら不快な表情が表にでていたようで、彼女にもばれてしまった。
しかし、今回の事件にあの男が暗躍していたということは、あの時の傷が癒えたのか。
あのままもっと苦しんだらよかったのに。
「ええ。いずれあの男にはそれ相応の痛みを与えてやりますよ。で、ディザスターは娘さんに何を?」
『詳しくは分かりませんが、娘と何かしらの契約をして力を与えたようです。その力で杏奈は、人を呪い殺す力、マンションと無縁仏の墓跡地を行き来できる力、そして私があげた人形を使役する力を得たのです』
「なるほど。娘さんは分かりました。では、貴方にはどんな提案を?」
『娘と合わせてくれることを条件に、私の魂を半分要求してきました。もちろん、娘と会えるという甘美な響きに誘われた私は、首を縦に振る以外の選択肢はありませんでした。そしてその魂は杏奈の持つ人形に入れられました。それにより、私と人形はお互いに見聞きできるようになったので、あの子がこれまでにした事も認知しています。貴方のお連れの女性があの子に命を狙われていることも』
「そうですか。では美咲さんにお聞きします。娘さんの目的は何ですか?」
『私と会うことです』
「あなたと会うこと? にしては、方法が過激すぎる気がしますけど」
『それはあの男がそう言いくるめたのです。『人間を襲えば襲うほど、君はお母さんと会える日が近づくよ』とね』
「あ、あの野郎!」
状況をややこしくしやがって本当に忌々しい奴だ。
完全に私に対する嫌がらせとしか思えない。
今、この間もあいつの笑い声がどこからか聞こえてきそうだ。
(あはははは、感謝してくれよ。君のために素敵なプレゼントを用意したのだからね、ディストレイの契約者よ)
潰す。
今度会ったら、絶対に潰す。
「ふう、纏めると、美咲さんと会うために娘さんは人を殺している、と。そういう認識で間違いないですかね」




