↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
127/163

第五話 森山花蓮の受難――公園跡地――現自転車置き場

 時刻は夜七時を回っていた。

 写真の数字から導き出した場所――かつて公園があったという場所。今では自転車置き場に変わっている。鉄骨の屋根の下に整然と並べられた自転車たち。その光景からは、昔ここで子供たちが遊んでいた面影など微塵も感じられなかった。

「ここが……87度と4度の方角か」

 私は自転車置き場の脇に車を停め外に出た。

 辺りはすっかり暗くなり街灯がぽつぽつと光を落としている。

 人通りはほとんどない。

「相棒、この地の記憶を読んでくれないか」

 私はしゃがみ込み右手をアスファルトに触れた。

『ああ。少し待て』

 ブレスレットがかすかに熱を帯びディストレイの意識が大地へと浸透していく。

『確かに昔はここに公園があった。小さな児童公園だ。遊具がいくつかありベンチが二つ。そして……よくそこで遊ぶ子供たちの姿が見える』

「やはりか。ありがとう」

 私は立ち上がり自転車置き場を見回した。

 何か異変は起こっていないか注意深く観察する。だが、見たところ特に変わった様子はない。

 その時だった。

 自転車置き場の奥に、一人の女性が立っていることに気づいた。彼女はうつむいており顔は見えない。黒いワンピースを着て長い髪が風もないのにゆらゆらと揺れている。

(あれは……)

 私は恐る恐る近づいた。

 だが、あと数メートルというところで彼女から突然どす黒い負の念が立ち上った。

「なっ……!」

 危険を感じて私は反射的に後方へ飛び退いた。

 その瞬間、女性が顔を上げた。

 深淵に飲み込まれたような漆黒の瞳。その目が私をじっと睨みつけている。

 そして、彼女は無言のまま私に向かって襲いかかってきた。

「うおっ、危ない!」

 私は転がるように一撃を避けた。彼女の手が、私が今までいた空間を切り裂く。ヒュッという音が空気を震わせた。

「いきなり襲ってくるとは……ただの浮遊霊か? それとも地縛霊か?」

 私が身構えた直後ディストレイが話しかけてきた。

『主よ奴はエレベーターの前で立っていた赤いワンピースの女性と似ているな』

「エレベーター? あの赤いワンピースの女性と?」

『ああ。主は赤いワンピースの少女しか見えなかったようだがな』

 言われてはっと気づいた。昨日、確かにエレベーターの前に立っている霊を見た。森山花蓮は「赤いワンピースの女性」と言っていたが、私の目には「赤いワンピースの少女」に見えたのだ。だから、この女性とあの霊が結びつかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。