第五話 森山花蓮の受難――タイムリミット目前
時刻はすでに午後七時を回っていた。
私たちはあれから手がかりを求めて、マンション周辺や古い喫茶店地元の図書館などを奔走した。
しかし赤いワンピースの女性の正体は、マスターから聞いた「四号室の女」以上のことはわからず、時間だけが無情に過ぎていく。
「くそっ……何かあるはずなんだ……」
柿谷がスマートフォンを握りしめ、苛立ちをあらわにする。彼の手には、すでに何本もの知人とのやり取りが残っていた。オカルト研究家仲間にも連絡を入れたが、決定的な情報は得られていない。
「私のせいで……柿谷さんまで巻き込んでしまって……」
「何言ってるんですか。森山さんが謝ることじゃないですよ。それに俺は自分の意思でここにいるんです。最後まで付き合わせてください」
その言葉に私は救われる思いだった。
(紅さん……今どこで何をしているの……)
そんな時、私のスマートフォンが震えた。
着信画面には『紅翔太』の文字。
「紅さん!」
『森山さん、遅くなってすみません。写真の秘密がわかりました』
「本当ですか⁉」
『ええ。今からその場所へ向かいます。そちらはどうですか?』
「まだ……何も。ごめんなさい」
『謝らないでください。あなたのせいではありません。それからもし期限に間に合わず、あの女と戦わざるを得ない状況になる可能性を考えて、一人護衛をつけています。ご安心を』
「護衛……ですか?」
『ええ。必ずあなたたちを守ってくれるはずです。それでは私はこれから例の場所へ向かいます。何かあったらすぐ連絡してください』
通話が切れた。
私はスマートフォンを握りしめたまま、しばらく動けなかった。
(紅さんは、あれからずっと動き続けてくれてる。私も諦めるわけにはいかない)
「柿谷さん、紅さんが写真の秘密を暴いたそうです。今からその場所へ向かうと。それと、私たちには護衛がついているそうです」
「護衛? そうか……なるほど」
柿谷は一瞬考え込み、すぐに納得したように頷いた。
「翔太が護衛をつけたと言うなら、本当に俺たちを護衛してくれているのでしょう。今もどこかで俺たちを見守ってくれてるはずです。見えなくてもね」
「そうですね。信じましょう」
私は気力を振り絞り、再び捜索を開始した。
それでも、何も見つからないまま時計の針は進み続けた。
七時三十分。
七時四十分。
七時五十分。
ついにタイムリミットが目前に迫っていた。
「森山さん! もう時間がないです!」
柿谷の声が焦りに満ちている。




