第五話 森山花蓮の受難――最後の数字
私は言われて初めて気づいた。
コートの内ポケットから、何かが少しだけ顔を出している。
恐る恐る手を入れてみると、そこには一枚の写真があった。
「これは……!」
四枚目の写真。今度は『87』という数字が書かれている。
「こうなると、この黒い写真の数字が気になるの」
「ふむ。なら、儂に任せてもらおう」
そこには杖をつきながら近づいてくる年配の女性が。
「おお、栗さんの透視なら、この黒い写真に隠されている数字も見えるかもしれない」
この業界でも重鎮の女性、栗山明里の登場に少しざわつく。
彼女はその透視能力で数々の骨董品の鑑定士し続けたベテランで、もちろん危険な呪物なども扱ったことがあるという百戦錬磨のお方だ。
「ありがとうございます。ただ、パソコン越しですができますか?」
「心配せんでもええ。若い子が頑張っとるんじゃ。意地でも見通してやるわい」
そう言って栗山はパソコンの前に立ち、大きく目を開いて画面を覗いて――
「……4じゃな」
と数秒で答える。
「87度と4……これはどの方角だ?」
古地図研究家が地図を広げる。
私もスマートフォンで調べる。87度の方角と4度の方角、マンションからその方向へ延びる先には――
「特に何もないようですね」
「いや、待て」
年配の鑑定士が、古い地図を指さした。
「そこには以前、公園があった。小さな児童公園だ。今は再開発で消えてしまったが、四十年前までは確かに存在していた」
「公園……」
「そして、その公園にはよく小さな女の子が一人で座っていたそうだ。母親の帰りを待っていたらしい」
女の子。人形を持った女の子。無縁墓地に最後に埋葬されたという、小学一年の女の子。
「どうやら、その公園と無縁仏の墓の跡地へ行かなければならないようだ」
私は情報をくれた鑑定士たちに深く頭を下げた。
「皆さん、ありがとうございました。おかげで手がかりが見つかりました」
「気をつけてな、翔太くん」
松山が心配そうに言う。
「ええ。必ず解決してきます」
私は会合の会場を後にした。外はすでに夕暮れが迫っている。夜八時まで、あとどれだけの時間が残されているのか。
(急がなければ)
私は車に飛び乗りエンジンをかけた。
向かう先は二つ。
無縁仏の墓の跡地と、公園の跡地。
そしてその両方に共通する何かが、赤いワンピースの女性と人形を持った少女の謎を解く鍵になるはずだ。




