プロローグ 廃病院の怪――終了
私が手元の操作でディストレイを解除すると、巨人は光の粒子となって消え、私は再び廃病院の跡地に降り立った。
「むっ、電話か」
電話に出ると、相手は清水だった。
『お疲れ様です、紅さん。こちらでも、パラサイトグリードの消失が確認されました。それと助け出していただいた三名も、こちらで保護しております。』
「了解です。では、今回の依頼は完了、ということでよろしいですか?」
『はい。後処理はこちらでやっておきます。本日は急な依頼を完遂していただきありがとうございました』
「こちらこそ、サポートありがとうございました」
通話を終えると、サテライトビームの光が弱くなり始めると同時に世界の修復が始まる。
パラサイトグリードが出現した時に破壊した廃病院、避ける時と触手が外れて砕いたアスファルトの道路、家、樹木、みんな元通りになっていく。
そして光が完全に消えると、そこには巨大ロボと化け物の戦いの痕跡はなく、ただの廃れた病院だけが残され、本来の夜の静けさが戻ってくる。。
遠くでサイレンの音が聞こえ始めていた。
警察の到着だろう。
清水の言う通り、彼らに現場を任せることにしよう。
「翔太、お疲れ様!」
『さすがだな、契約者よ』
「ありがとう、二人とも」
カナリアとディストレイの声が聞こえ、私は左腕のブレスレットを見た。
三色の灯りが再び点滅し始めている。
まだ休息は訪れないかもしれない。
だが、私には戦う力と、仲間がいる。
「さてと、一応、報告書は作っておきますか」
腕や首を回しながら、私は自分の店に戻る。
アンティーク紅のカウンターで飲むコーヒーだけが、今の私のささやかな楽しみだ。明日もまた閑古鳥が鳴いているかもしれないが、それでいい。
この平和な退屈を守るために、私はこれからも剣と盾を振るうのだから。




