第五話 森本花蓮の受難――謎と赤いワンピースの女性
手紙を読み終えた彼は、三枚の写真を並べていく。
30と54という数字。
そして真っ黒に塗りつぶされた写真。
これらが何を意味するのか。
被害者は何もわからなかったと言っている。
「30と54……何かの番号でしょうか」
「住所とか、部屋番号とか……いや、それにしては妙だ」
彼は写真を裏返したり、光に透かしたりしてみたが特に隠された情報は見つからなかった。
30と54。
この数字が何を指すのか。被害者は必死に調べたがわからなかった。
当然私はさっぱりであり、彼の方も今はわからないそうだ。
「森山さん、ここでできる調査はもうなさそうだ」
「そうですね……」
私たちは部屋を出ることにした。
彼がドアノブに手をかけた時、私は気になっていたことを尋ねた。
「紅さん、一つ聞いてもいいですか」
「何ですか?」
「さっき、私に憑いていたものを浄化してくれたじゃないですか。あれが、もしかして……」
私の言葉が詰まる。彼は私が何を心配しているのかすぐに理解してくれた。
「除霊とみなされる可能性がある、ということですね」
「はい。あの手紙の男性は、除霊を試みるたびに残り日数が減ったと……」
「確かに、その可能性は否定できません。ですが森山さんはまだ何も宣告されていない。大丈夫ですよ」
彼は笑顔でそう言ったものの内心では不安が渦巻いていた。
手紙の内容を読む限り、あの赤いワンピースの女は除霊行為に対して敏感に反応していると思う。となると彼が私に憑いていた負の念を浄化したことが、果たして「除霊」とみなされるのか。もしそうなら、私に危害が及ぶ可能性がある。
不安が心に渦巻いていくが、自然と大丈夫ではという楽観的な気持ちになる。
あのピエロ事件でも、彼は妹たちを助けてくれたのだ。彼がいれば必ず助けてくれるという、深い信頼ができてもおかしくない。
「では、帰りましょうか」
ドアノブを回そうとしたその瞬間、彼は手を止めた。
彼の表情が険しくなり、視線が廊下の方へ注視されていく。
「紅さん?」
「静かに。急に廊下から負の気配が出てきました」
どうやら廊下から明確な負の気配を彼は感じ取ったらしい。
それも、彼の雰囲気を見るに、かなり濃密な気配のようだ。
彼はゆっくりとドアを開けた。
廊下は昼間の明るい光に満ちている。
しかし、エレベーターの前には――あの女が立っていた。
真っ赤なワンピース。長い黒髪。青白い顔。そして、こちらを見て浮かべるあの不気味な笑み。
「紅さん、あれ……!」




