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第五話 森本花蓮の受難――被害者の手紙

「うーん」

 今度はベッドルームへ移動。

 そこは乱れたシーツと、遺体が運び出された後に残った人型の窪みが生々しかった。

「何か見落としているものはないか……」

 彼は押入れの前に立った。

 襖を開けると中には衣類や布団が詰め込まれている。

「ふむふむ……ん、これは?」

 彼の視線が天井へ向けられる。見れば天井付近に不自然な膨らみがあった。

 彼がそこを触ると、その箇所だけいたが外れた。迷わずそこへ上半身を入れて、スマホの光で中を確認すること一分。

 彼は何かを掴んで戻ってきた。

 よく見ると、それはクッキーの装飾が施された長方形の箱だった。

「森山さん、これを見てください」

「これは……クッキーの箱?」

 私が首をかしげる。

「この箱から負の念を感じ取れたので、おそらく何かが隠されていると思います。少し待ってくださいね。今、浄化しますので」

 彼は右手をかざし『浄化の炎』を発動させた。

 真紅の炎が箱を包み込み、付着していた負の念を焼き尽くしていく。しばらくして炎が消えると、箱はただの飾り箱に戻っていた。

「もう大丈夫です。開けましょう」

 彼が箱の蓋を持ち上げると、中には三枚の写真と一通の手紙が入っていた。写真にはそれぞれ数字が書かれている。一枚には「30」、もう一枚には「54」、そして最後の一枚は真っ黒に塗りつぶされていた。手紙は几帳面な字で書かれた走り書きだった。



『この手紙を読んでいるということは、俺はもういないのだろう。

赤いワンピースの女に会ったのはちょうど一ヶ月前のことだった。マンションのエレベーターで一緒になっただけの、何の変哲もない出会いだった。しかし彼女は降り際に振り返り、こう言った。「あなたの命は、あと30日ね」と。

最初は悪質な冗談だと思った。だが、その日から毎晩夢に彼女が出るようになった。夢の中で彼女はカレンダーを指さし、残りの日数を告げるのだ。そして日に日にその数字は減っていった。

俺は必死になった。神社にも行った。寺にも行った。霊能者にも相談した。しかしどこへ行っても「力が強すぎて手が出せない」と言われるだけだった。ある霊能者は「住んでいる場所が事故物件か、周辺で過去に事故が起きていないか調べろ。写真にヒントがあるはずだ」と言った。

俺は調べた。このマンションの歴史も周辺の事件事故も、ありとあらゆる資料を当たった。しかし何もわからなかった。

除霊を試みるたびに宣告される日数は減っていった。30日が29日に、29日が28日に。除霊行為そのものが彼女を怒らせるらしい。

結局、何もわからなかった。

写真の数字が何を意味するのかも。

俺は、ただ怖い』


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