↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
112/163

第五話 森山花蓮の受難――違和感

「赤いワンピースの女性、数字の4……なるほど」

 翔太は顎に手を当て少し考え込んだ。そこへ到着したエレベーターが音を立てて扉を開く。彼はその中へと入り、花蓮も続いた。

「森山さん、少し失礼します」

 彼がそっと花蓮の肩に手を置いた。次の瞬間、彼の右手から真紅の炎が噴き上がり花蓮の全身を包み込む。それは数ヶ月前、妹の陽子を救ったあの炎だった。しかし今回は不思議と熱くない。むしろ温かく、全身の疲れが溶けていくような感覚がある。

「これは……?」

「君に憑いていた何かだね。おそらく、その赤いワンピースの女性が何かしらしたんだろうね」

「紅さん、私はまた巻き込まれてしまったのですか」

「どうやらそのようだ。全く、君は人を引きつける何かがあるようだ」

 彼が軽く笑う。

 花蓮は複雑な気持ちで黙ってうつむいた。

 しばらくして七階に到着する。

 エレベーターの扉が開き、二人は廊下へと降り立った。

「森山さん、昨晩のうちに階段で何が起きたのか調べてみましょう」

「はい」

 彼は階段室へと歩いていく。非常灯の緑色の光が薄暗い空間を照らしている。花蓮は昨日の出来事を思い出し、無意識に拳を握りしめた。

 彼はしゃがみ込み、床や壁をじっくりと観察していたがやがて険しい表情のまま戻ってきた。

「どうしましたか?」

「微かに気配はするんだけど……何というか薄い?」

「薄い?」

「ええ、霊が現れたらそこに強い残留思念みたいなものが残されるんだけど、それが殆ど感じ取れないんですよね」

「それは、あの女性が霊ではないということですか?」

「いや、霊ではあるはずです。ただ何かが違う。あまりにも痕跡が薄すぎるんですよね」

 翔太は何かを考え込むようなしぐさをしながら、階段を後にして事件現場となった部屋へと入っていった。花蓮もその後に続く。彼は部屋の中央に立ち、ゆっくりと室内を見回した。遺体のあった寝室の扉は閉ざされたままだ。鑑識の撤収後も、室内には異様な静けさが残っている。

「……なるほど。この部屋もおかしい」

「おかしいとは?」

「ここも残留思念が薄い。いや、薄いどころか殆ど消されている。これは自然に薄れたものじゃない。誰かが故意に痕跡を消したか、それとも……」

 彼は言葉を切り部屋の奥へと進んでいった。

 その瞳には、確かな警戒の色が浮かんでいた。

 部屋の中を注意深く見回しながら、散らかっているリビングルームを隅々まで確認した後は、同じように散乱している仕事の資料やPCの周辺機器も注意深く見ていく。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。