第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――エピローグ
「ありがとうございます」
(もうすぐ、地を這う者と森を駆ける者が目を覚まします)
神々の言葉が、静かに私の心に響いた。
それを聞いた私は思わず微笑んでいた。
心当たりがある。いや、心当たりどころではない。私がずっと待ち望んでいた知らせだった。
「地を這う者と……森を駆ける者……そうですか。ありがとうございます」
私は深く頭を下げた。
神々は満足げに頷くとその姿を光の粒子へと変え、天へと昇っていく。ご神木の亡骸もまた最後の輝きを放ったあと静かに大地へと還っていった。
私は左手首のブレスレットを見つめた。三色の宝石は、神々の祝福を受けて再び力強く輝いている。ディストレイの気配も完全に戻っていた。
今回の戦いで思い知った。
パラサイトグリードだけであれば、今のディストレイだけでも対抗できる。しかし、ナイトメア、ディザスターといった上位のパラサイトグリードたちには、たとえディストレイの力を最大限に引き出しても、彼らを倒すには難しいだろう。
「分散していた力を終結させる時が来たようだ」
『そうだな。地を這う者と森を駆ける者――あの二体が目覚めれば、戦力は格段に強化される』
「私としては、二人と久しぶりに会えるのが楽しみだな」
カナリアは再び仲間と会えることに喜んでいる。
「そうだな。私も会うのが楽しみだよ」
私は拳を握り締めた。
神々が伝えてくれた予言に期待をしていると、竹林の向こうからバタバタと走ってくる足音が聞こえた。
「翔太ーっ!!」
柿谷だった。
息を切らせながら私の前にたどり着くと、私の無事な姿を見て大きく安堵の息を吐く。
「よかった……お前、生きてたんだな……」
「当たり前だ。そっちはどうだった?」
「ああ、地下室にいた人たちは全員無事だ。負の念の影響で少し衰弱してるが命に別状はない。救急車も呼んだ」
「そうか……よかった」
「それで……あのピエロの上位互換みたいな奴は?」
「ディザスターか。逃げられた」
「ちっ、やっぱりか」
柿谷は悔しそうに舌打ちしたが、すぐに表情を切り替えた。
「まあいいさ。お前が無事で、屋敷の人たちも助かった。今回はそれで十分だ」
「ああ」
私は空を見上げた。
分厚い雲が消え青空が顔を覗かせている。雨は完全に上がり、庭園の木々の葉が雨露に輝いていた。
長い一日だった。しかし、これで終わりではない。むしろ本当の戦いはこれから始まるのだ。
「それで、これからどうする」
「とりあえず、蔵の中にある骨董品の鑑定をしよう。一応、仕事はしないとね」
私たちは踵を翻し、蔵の方へ歩いていく。すでに負の念はなく、大量にあった骨董品を二日がかりで査定をして、私たちの仕事はようやく完了したのだった。




