第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――神
光の球体が、ふっと消えた。
すでにご神木からは生気が抜けている。
「……お疲れ様、でした」
私はご神木に手を合わせて祈った瞬間、ご神木の巨体が静かに傾き、その根元から幹へ幹から枝へと、ゆっくりと光が広がっていく。葉の一枚一枚が金色に輝き、やがて木全体がまばゆい光に包まれた。
「これは……!」
私が目を細めると、ご神木の亡骸から無数の光の粒子が立ち上っていく。それはまるで五百年分の祈りが天に還っていくかのようだった。
そして、その光の中からいくつもの人影が現れた。
「……神々……?」
カナリアが息を呑む。
私も言葉を失った。
光の中に立っていたのは白い装束をまとった七柱の神々だった。その姿は人間のようでもあり、光そのもののようでもある。彼らは皆穏やかな表情で私を見つめていた。
(人の子よ)
神々の声が、直接私の心に響いてくる。
それはディストレイの声とも、ご神木の声とも違うもっと深く、もっと遠い原初の響きだった。
(よくぞ、我らが同胞を解放してくれた)
(あの者は、かつてこの地を愛し人々を愛した神であった。その心が歪み、堕ちてしまったのは我らにも責任がある)
(そんな時、貴方が現れた。その結果、本来ならばこの地を破滅に導くはずだったあの者を解放してくれた。その慈悲に、我らは深く感謝する)
私は神々の言葉に、ただ黙って耳を傾けていた。彼らの声には、悲しみと安堵と、そして私への感謝が込められていた。
(そして、この地と、そこに生きる人々を守ってくれたことにも礼を言おう)
(我らとは違う神々が創造せし、神造ディメンダム。その相棒ディストレイは、今回の戦いで大きな傷を負った。我らにできることは少ないが、せめてもの祝福を贈らせてほしい)
神々の一人が手をかざすと、光の粒子が私の左腕のブレスレットに集まっていく。消えていた三色の宝石が再び輝きを取り戻していく。
「これは……!」
(ディストレイよ。お主の勇気と献身に我らは敬意を表する。その傷を癒し、再び戦う力を与えよう)
ブレスレットの光が強くなり、私の体全体を温かな波動が包み込んだ。
ディストレイの気配が再び私の中に戻ってくるのを感じる。
『これは……神々の祝福か。ありがたく受け取ろう』
ディストレイの声が、驚きと感謝を込めて響いた。
(人の子よ。お前にも祝福を贈ろう)
神々の光が私の体を包む。疲れ果てていた体がみるみるうちに回復していく。傷が癒え、力が満ちていく。
(我らはお前に、一つの言葉を伝えよう)




