第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――決着と代償
「お疲れ、相棒」
『ああ……お疲れさまだ、主よ』
労いの言葉を交わす。ディストレイの声はかすかに疲弊していたがそれでも私を気遣う温かさがあった。
私は左手首を見た。砕け散ったはずのブレスレットはいつの間にか元の形に戻っている。しかし三色の宝石から光は消えていた。ディストレイが一定期間召喚できなくなるというデメリットが現実のものとなったのだ。
「しばらくは、私一人で戦わないといけないな」
『すまない主よ。我が力が及ばぬばかりに……』
「気にしないでくれ。召喚はできないが会話はできる。今は回復に努めて欲しい」
『ふふ。承知した』
空を見上げると、私たちを覆っていた結界がゆっくりと消えていく。
天からの光も収まり世界は修復を始めていた。腐敗していた庭園の木々が少しずつ色を取り戻し淀んでいた池の水も透明さを取り戻していく。
「ねぇ、翔太……ご神木のところに行こう」
「ああ。無事だといいがな」
私はカナリアを肩に乗せご神木の元へと足を向けた。庭園を抜け竹林を横切り結界のあった場所へと戻る。あれほど強力だった結界は完全に消滅し、今はただの静かな森の一角になっていた。
ご神木は変わらずそこに立っていた。しかしその姿はさっきよりもさらに弱々しく葉の色もくすんでいる。土地神が消滅したことで封印の役目は終えたはずだがその体は限界を迎えようとしていた。
私が近づくと光の球体がふわりと現れた。その輝きはもうほとんど消えかかっている。
「……ご神木」
私が近づくと光の球体がふわりと現れた。その輝きはもうほとんど消えかかっている。
(人の子よ……あなたは本当に……あの方を……)
「ああ。倒したよ。いや、解放した、と言うべきか」
光の球体がかすかに揺れた。
(ありがとう……ありがとうございます……これで、あの方もようやく眠りにつくことができます……)
「あなたの仲間たちもきっと喜んでいますよ」
光の球体の輝きがさらに弱まる。その声も今にも消え入りそうだ。
「あなたはこれからどうする?」
(私の役目は終わりました。あとは静かにこの大地に還るだけです)
私は黙って頷いた。
この精霊もまた、五百年もの長い使命を終えようとしている。悲しみはない。むしろ安らかな気持ちなのだろう。




