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神様の日記 ―睡蓮様は今日も眠たい―  作者: くじら


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第六話:ガラクタの舞踏会 ――すり替えられた奇跡――





◯月◯日 :神殿の裏庭に聳え立つ神樹に止まり鳴く焼き鳥を見たキミマロが卒倒した。この前、裏山に生息する悪鬼に投げ与えた筈が、どうやら一匹だけ取り零したようだ。


ーーー




「のぉ、キミマロ面白いと思わぬか?リリナと対照的にあの娘、黒いと思わぬか?実に黒い。あの年齢であそこまで黒いのも珍しい!だがこれが人間!実に愉快だ!」


睡蓮の言葉に床を拭いてたキミマロが顔をあげる。


「げ……睡蓮様、思わず心眼で見てしまいました!見て損した!今拭いてる床より黒いってどう言うことです!?」



ふむ……神殿の床は神界でも丈夫な天木で作られた黒い床


その床の色はどの黒よりも深いと言うのにキミマロの奴



「中々言うでは無いか」


笑う睡蓮に嫌そうな顔を向けるキミマロ


睡蓮は持ってた扇子をパチンと閉じニヤリと笑う。


「よし、笑わせてくれた礼をせねばな。そうだな……」


少し考えた睡蓮は一つ瞬きをし、キミマロを見つめた後、再びニヤリと笑う。



「よし、これで良い」


そう言った睡蓮の指先からあっという間に神気が漏れ落ちる



その量は僅か数滴



だがキミマロは顔を真っ青にして叫ぶ。


「ぎゃぁぁ!す、すす睡蓮様なにを……まさか今のは……し、神気では……!?」


一瞬の事でキミマロは何が行われたのか把握出来ずにいた。


瞬きをした瞬間、それ(神気)は既に落とされており、キミマロは雑巾を握り締め倒れてしまう。



そんなキミマロを受け止めた睡蓮はキミマロを自身の膝へ横たえ、フッと笑う。


「仕方のない奴だ」


そして、キミマロを扇子で扇ぎ始めながら、下界を見つめるのだった。



そこには真っ赤な髪をした綺麗な少女の姿。



「さて……どうなるか……」



ーーー


私の名前はアンナ。



私は、あの子が大っ嫌いだ。


最初から嫌いだった。



あの子が来るまで私は一番、可愛くて賢くて、みんなの憧れの存在だった。


そう、あの日までは



あの子、リリナが来たのはこんな雪の降る季節だった。



頬を真っ赤にさせ、やせ細り、枝みたいな手足、ボロボロの布を纏ったみすぼらしい少女だった。



彼女を見た瞬間、勝ったと思った。



容姿も衣服も、教養も出来ることも、持ってるモノも私の方が遥かに多くて、孤児院で一番の稼ぎ頭だった私。



院長先生のお気に入りで、いずれ貴族の養子で貰われて行く予定だった。



唯一の欠点と言えば生まれが華街だと言う事くらい。



私を産んだ母親は華街一の売れっ子だった。


赤薔薇ローズ、それが私の母親。母親譲りの真っ赤な髪に瞳。


父親は分からない。母は死ぬまでその存在を語らなかった。唯一、教えてくれたのは父親の特徴だけ。


金色の髪と緑色の瞳の父親。



リリナの何が気に入らないか?



全てよ。全てが気に入らない。



一番気に食わないのは、私が目を掛けてたルークを奪ったから。


金色のサラサラの髪の男の子。青い瞳は宝石みたいに綺麗でゾクゾクする程魅力的な顔立ち。


私とピッタリお似合いだと何度も言われた。


私が貴族へ貰われて行く時、ルークも連れ

て行ってあげようと思ってたのに。



いつの間に仲良くなったのか、ルークの隣にはリリナが居るようになった。



それにあんなに薄汚れてたのに、身体を洗い、身なりを整えて出て来たリリナはとても綺麗だった。



ルークとお揃いみたいに綺麗な金色の髪も気に入らない。



緑色の瞳は私が欲しかった色。



真っ白い肌に桃色の唇。貴族の女の子が持ってるビスクドールみたいな容姿に院長先生が目の色を変えたのを見逃さなかった。


「これなら高値で売れる……」


ボソッと呟かれた言葉を私は聞き逃がさなかった。孤児院の実態を私は、把握してる。


その中でも私は高価で取り引きされると分かってる。


だけど、簡単にそこら辺の孤児と一緒にされる訳にもいかない。


私は寄り良い所へと貰われていくんだ。


そう思い常日頃、チャンスを見逃さないように立ち回ってる。



そしてやっぱり世界は私を中心に回ってると思う出来事が訪れた。



チャンスが目の前に!それを見逃す筈も無く私は院長先生の言葉に頷いた。



「アンナ、良いな?上手く言含めるんだ」


私はやっぱり特別な女の子だ!



あのウイリアム伯爵家が私を養女にと!



リリナが伯爵様に出会ったあの日、本来なら私が出会う筈だった。



そして、私が売るはずだった花を買い、たいそう気に入ったと聞いた。


その後から、花が飛ぶように売れてる。



それも私が売る筈だった花のおかげだろう。




なんでも最近、奇跡の花と言う噂を聞いた。



私が売る筈だった花のことだ。



あの日、具合が悪いフリをしなければ、奇跡の花を売っていたのも、伯爵様に出会ってたのも私



伯爵様は奇跡の花の売り子をご所望らしい



それは勿論、私の事だ。



元々花は私のモノなんだから!



今日も、リリナと一緒に孤児院の裏に咲いてる花を摘み、街角に立つ予定だ。


「リリナは、赤い花以外にしてよね」


当然でしょ、という顔でアンナは赤い花だけを籠へと入れていく。


奇跡の花は全て私が売ろう。


可愛くて愛想も良い私が売る方が更に奇跡は起きるかもしれない。



リリナは、苦笑いしながら赤以外の花を花籠へと入れていく。


その時、頭上から落ちてきた金色の小さな水滴。


「やだ……雨?」


だが、空は快晴。雨雲一つ見当たらない。


おかしいわね? と頭を傾け、リリナの花籠の中身をチェックする。


黄色に青に白に紫の花たち。それも開花の時期が遅く、蕾ばかりの花たちに、私は小さく鼻で笑う。


――「奇跡」は、私の赤い花にしか起きないんだから。



苦笑いするリリナ



そんなリリナを引き連れ、街角へ立つと、声を掛けていく。



私は自分の見た目を良く知ってるから男を中心に声を掛けていく。



「お兄さん、お花をどうぞ?」


「え?」


「ふふ、お兄さんみたいな格好良い人にお花買って貰えたら嬉しい!」



「そ、そうかな……」



照れたように笑う、そばかす混じりの若い男



「ありがとうございました〜」


私の花は次から次へと売れていく。



反対にリリナの花はまだ半分も売れていない。



横目でチラリ見ながらニヤリと笑う。



あぁ、早く伯爵様、来ないかしら?



「あの……」



物思いに浸ってる私にオズオズと声が掛かる。



見ると、みすぼらしい物乞いの子供二人が私を見上げていた。



「何?」


「「お花をください……」」


「あんた達、金は持ってるの?」



思ったより低い声が出てしまった。



「僕たち、奇跡の花をお母さんにあげたくて……」


そう言いながらオズオズと差し出して来たのは銅貨



私はため息を吐きながら嫌そうに手を振る



「残念だけど奇跡の花は銀貨一枚からよ」


シッシッと犬を追い払うように物乞い二人を追い払い、次の客(男)へと声を掛ける。


「あ、お兄さん!お花を買っていかない?今噂の奇跡の花よ?」


「っ……そんな……」


物乞いが泣きそうな顔で見上げて来るから耳元で邪魔だと呟いたら泣きながら逃げていった。



その二人の後を慌ててリリナが追いかけて行ったけど私は知らない。



リリナが赤い顔でフラフラしてたけど、具合悪いなら休んでれば良いのにバカみたい。


リリナが居なくなり、数分後



「失礼……花を頂けるかな?」



目の前にシルクハットを上品に被った見るからに金を持ってそうな格好の男性が声を掛けてきた。



金色の髪に青い瞳!



間違いない!ウイリアム伯爵よ!





【観測対象: 自分が金貨だと思い込んでいるアンナ(お前は銅貨くらいだと思うが?いや、銅貨にも及ばぬか?)】


【神気残量:99.6%】

(アンナに「真実の輝き」をひとさじ与えた分、わずかに減った。我ながらよく考えた!アンナに真実の輝き!さぁ、その輝きが毒となるか、薬となるか、実に楽しみだ)


【キミマロのストレス値:測定不能オーバーフロー

一度目を覚ましたキミマロが(物乞いの子供に暴言を吐いたアンナに対し、「あの女を今すぐ神罰でカエルに変えてやりたい!」と、神界の禁忌を平気で口走っている。お前、たまに私より過激な裁きを下そうとするな。落ち着け、まずは焼き鳥でも食え)


【今日の一言: 嘘というものは、美しく飾り立てるほど、剥がれ落ちた時の顔が醜くなる。伯爵よ、お前の自慢の『鑑定眼』、試させてもらうぞ。】


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