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神様の日記 ―睡蓮様は今日も眠たい―  作者: くじら


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第三話:清らかな個体と悪魔の微笑






◯月◯日 天候:起きたら文明が一段階進んでいた



「……様。睡蓮様、起きてください! 何時まで寝てるんですか!?そろそろ起きてください!」



鼓膜を突き破るような絶叫。


「あと100年は寝たい」


「何言ってるんですか!ちょうど100年です!」


さすがの俺も重い腰、もとい重い瞼を持ち上げざるを得なかった。


視界に飛び込んできたのは、般若のような顔をしたキミマロだ。


「……んん。うるさいぞキミマロ。なんだ、もう明日になったのか?」


「百年後の明日です! 一休みと言ってから、地上では一世紀が過ぎましたよ! あのドロドロの貴族も、とっくに骨どころか塵になっています!」


キミマロの剣幕に、俺は欠伸を一つ。



神にとっての「一晩」が人間界の「百年」になるのはよくあることだ。



その後、キミマロに布団を剥ぎ取られ、急かされるように朝食を口に入れられ、はて?と頭を傾ける。



昨日の夜、俺は何をしてた?



なにか楽しいことを考えてたような……そうではないような……




「ま、良いか……」



それにしても暇いな。



そう思いながらキミマロ手作りの釣竿を片手に神池にやってきた俺。欠伸を漏らしながら釣竿を垂らす。



餌?そんなモノ必要ない。



睡蓮は横に寝そべりウトウトしながら獲物が掛かるのを待つ。



ピクリと浮きが沈み、睡蓮は眠そうな目をしたまま指先を動かす。



すると餌をつけてない筈の針に掛かった獲物が勢い良く宙に打ち上がる。



それはビチビチと勢いよく飛び跳ねる。



それを見て睡蓮は目を細める。



「ほぉ〜なんと活きのいい色欲だ」


そこへやって来たキミマロ



「睡蓮様〜昼飯を……ひぃぃぃ!」


「おぉ〜キミマロ!見てみろ!実に活きのいい色欲ぞ」


「す、すすす睡蓮様っ!何をしているかと思ったら!おやめ下さいっ!そんな穢らわしいものっ!穢れてしまいますぅ!」


キミマロはアワアワと唇を震わせ青ざめる。


「そんなこと言わず見てみろ?この色欲、珍しくアナルセックスをしたがっておるぞ?うむ、してアナルセックスとは……なんと!キミマロ!アナルセックスとは尻穴を使うらしいぞ!そう言えば一昔前に聞いたぞ?」


「ひぃぃ!すすす睡蓮様の麗しいく、口から、あ、あな……穴っ!っ……!」



穴、穴呟きバタンと倒れたキミマロ


口から泡を吹いて倒れる様は少しだけ哀れに見える。



「まったく……世話の焼ける傍仕えだ」



睡蓮は呆れた顔をしながらキミマロを指先で浮かし、本殿へと瞬時に移動する。



ちなみにその時釣り上げた色欲はというと、後に神界を騒がせる事になろうとは睡蓮もキミマロも知る由もなかった。


キミマロを柔らかな布団に移動させ、その傍らで頬杖をつく。


「主に世話をさせる傍仕えはお前だけぞ」


キミマロの額に指先を当て真っ直ぐ切り揃った前髪を横に払う。



すると横に伸びた切り傷に目を細める。



その傷跡を隠すように前髪を元に戻した頃、キミマロがその大きな瞳を震わせる。


「睡蓮様……」



ボーッとしたまま暫く静止するキミマロ。



だが次の瞬間ビヨンと飛び上がるように起き上がると膝を付き頭を床に擦り付ける。



「す、すす睡蓮様っ!申し訳ございません!このキミマロ!主を前に気を失い!あろう事か睡蓮様のお手を煩わせてしまい……!」



睡蓮は人差し指と親指を横に移動し、キミマロの口を結ぶと息を吐き出す。



「お前は、もうちと黙れ?俺は怒っておらん」


睡蓮の言う通り、睡蓮は滅多なことでは怒らない。



けれど、この世界で傍仕えがとる行動と言えば先程のキミマロは失格だろう。



許されないことだった。



他の神ならば、存在ごと消されてても仕方がないことだろう



だが睡蓮は眠いと一言呟き目をトロンとさせるだけ。



キミマロはそんな睡蓮が大好きだった。


口ではあれこれ言うがキミマロの唯一の存在



それが睡蓮。



キミマロは少しだけ顔を綻ばせコホンと咳払いする。


「そ、そもそも!私はあの神池での釣りはおやめくださいと申したはずですが!?」


「……はて?そうだったか?」



「そうなんです!」



「ほう……そうか?でもなぁキミマロよ、俺は暇い!暇くて死んでしまう」



「睡蓮様、だったら!あの日仰っていた『主人公選び』、再開したらどうですか?」


「主人公選び?」


「……はい!……睡蓮様?……まさか、忘れていたと?」


「……いや、忘れてないぞ」


睡蓮はそう言えば寝る前、そんなことをやったなと思い出す。


キミマロに促され思い出したのではない!と心の中で叫びながら睡蓮は立ち上がる。



その後ろをキミマロがチョコチョコと付いてくる。



「睡蓮様!下界はあれから100年の時が過ぎております!」


俺はキミマロを連れ、雲の切れ間から下界を覗き込んだ。



確かに、景色はだいぶ変わっている。以前俺が半分沈めた大陸には新しい街ができ、人間どもは相変わらずアリのようにチョコマカと動き回っていた。



「なかなか決まらん。どいつもこいつも小粒な欲望に振り回されおって……」


「それが人間という生物でございます」


右を見ても左を見ても、金、権力、色欲。


キミマロの『心眼』を通さずとも、その「汚らしさ」が透けて見えるような連中ばかりだ。


「どれもこれもパッとせんな。もっとこう……俺の指先一つで人生をメチャクチャに……いや、ドラマチックにしてやりたくなるような、骨のある奴はいないのか?」


勇者を作り上げると言うのはどうだ?



それとも別の世界から聖女なるものを召喚してやろうか?


「うむ、魔王を誕生させて人類滅亡なんて面白い」


「睡蓮様、面白半分で魔王を誕生させないでくださいっ!それに本音が漏れていますよ。」


「だがな……キミマロよ、どいつもこいつも似たり寄ったりでな……」



そこまで言いかけた睡蓮は、キミマロが心眼を駆使して下界を覗き見してるのを眠たそうに見つめる。


そのキミマロの心眼がキラリと煌めく。


「……おや? 睡蓮様、あそこの古い教会を見てください」



キミマロが指差した先。



百年前には無かった――あるいはもっとマシだったはずの――ひどく荒れ果てた孤児院が見えた。



そこで、俺の視線はある一人の少女に釘付けになった。



「……ほう」


人間にしては清らかな個体。



「どれ……見てみるか?」


そう呟いた次の瞬間、睡蓮の瞳が黒から虹色の色彩を纏う。


「……うむ」



朝から晩まで、自分より小さな子供たちの世話をしながら、大人たちの罵声を浴び、泥水をかけられても、なお「笑顔」を張り付かせている奇妙な個体。



そしてその裏でボロボロの壁を相手に一人で涙を流している。



それなのに目に見える強い光



一つの強い光に睡蓮は目を細める。



面白い。吐き気がする程清い個体。



「あの娘……キミマロ、見ろ。母親との約束か? 健気すぎて、逆に反吐が出るほどだ!」



「睡蓮様、言い方……。ですが確かに、あの娘の精神は……これほど過酷な状況で、まだ折れていないのは驚異的です」



少女の隣には、やけに気品のある少年が寄り添っている。


「ほぉ、なんとまぁ、騎士様の登場か?」



昔、暇つぶしで見た下界の物語



そこに登場した騎士と言う生き物。



あれはあの少女の騎士なのだろう。



神に分からないことはないと言わんばかりに次々と見ていく睡蓮。



アイツ、自分が王族の血筋だって隠してやがるな。


少女はそんなこと露知らず、ただの「友達」として頼っている。



「よし決めた。あの個体にする」



俺の退屈な永遠に、ようやく小さな楽しみが見つかった。



まぁ人間の短い数百年、暇つぶしには丁度いい。



さて、まずはどう揺さぶってやろうか。



睡蓮はニヤリと笑い、かの少女を見つめる。



その睡蓮の微笑は神ならぬ悪魔の微笑に見えたとか



そして睡蓮の微笑を見たキミマロが小さな悲鳴を上げ再び倒れた。



【観測対象: 孤児院の少女】(個体識別:清らかなる犠牲候補)


【神気残量: 99.999%】(「色欲」を釣り上げた程度では減りもしない)


【キミマロのストレス値: 測定不能】(気絶回数:本日2回目)


キミマロ白目を剥いて就寝中。精神的な「穢れ」により一時的な機能停止。


【今日の一言】


アナルセックス。言葉の響きは麗しいが、キミマロが即死する禁句キラーワードであったか?アナルセックスの原理を考えすぎて、また寝そうになった。これはキミマロには言えぬ。


キミマロが倒れてる間に下界で魔王を一人くらい作っても良かったが、また倒れられたら困るので止めておいた。

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