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狩りの会場から帰ろうとしたところ、リディはレオに呼び止められた。
「リディ、話があるから少しいいかな。途中まで一緒に帰ろう」
「うん、いいよ。……でも、うちも馬車があるんだけど」
「ラヴァルディ家の馬車は、俺の馬車の後からついてくればいいと思う。リディは俺の馬車に乗って」
「分かった」
リディがレオの馬車に乗り込むと、馬車が動き出した。ラヴァルディの馬車も後ろを付いてくる。リディはレオの隣に座っている。
「今日はお疲れ様。リディも疲れたでしょう」
「少しね。弓って、難しいね。私の当たらなかった」
「リディは剣の方が得意だよね。弓は俺も狩りの時くらいしか使わないよ。あまり使いどころがないから、得意じゃなくても大丈夫」
「でも、レオは大きい獲物取ってたね! 鹿とか猪とか」
「俺は毎年狩りに出てるから。慣れだと思う」
そんな風に話していると、レオがリディの腰に手を回した。レオを見たリディの額に、レオがキスをする。
まだ慣れなくて、結局二人とも顔を赤くする。
「は、恥ずかしいね……」
「うん……。でも、これからいっぱいしたいから、リディは、逃げないでね」
「ふふふ。逃げないよ。せっかく恋人になったんだもの。レオにたくさん恋人みたいなことをしてほしい」
「……もしかして、俺って今、死んでる?」
「……ん!?」
「今日になって幸せ過ぎて、なんだか現実感がない……」
「現実現実! レオ、今から私を抱きしめて!」
リディは慌ててレオに向いて言うと、レオはふっと笑ってリディを抱き寄せた。
「……うん、現実だね。リディが胸の中にいる実感が湧いた」
「ふふふ、良かった! ……レオって、やっぱり男の人なんだね。胸が広い」
「やっぱり、俺って男だと思われていなかったか……」
「せ、性別は男性だって、知ってたよ!」
「分かってる。意識してなかったってことだよね。でも、これからは男として見て」
「うん」
もう今は、レオが異性なのだと分かってる。広い胸と腕でリディがすっぽり包まれると、すごく安心する。あと、普段のスマートなレオからは分からなかったが、胸やお腹あたりにもしっかりと筋肉があるのが分かる。
「リ、リディ? ……あまりそんな風に触らないでくれるかな……」
「え? ……あ! ごめん! 胸とかお腹とか、筋肉あるなって思って……」
リディはばっとレオから離れた。レオが顔を赤くしている。リディはなんてことをしているんだ。ルシアンや黒騎士団が訓練している時に筋肉はよく見る。ルシアンに筋肉を動かしてと言えば、上半身裸で筋肉を動かして見せてくれたりするので、それと同じ感覚で触ってしまった。
言い訳するなら、もちろん触ったのはレオの服の上からだ。
リディはアホすぎる。真っ赤になりながら、口を開いた。
「ご、ごめんね! 私ってば、痴女みたい!? あ、あのね、代わりに、私の筋肉触る? 剣を振るし筋肉トレーニングしてるから、腕なら筋肉あるよ!」
「……すごく惹かれるけど、止めておくよ……色々と止まらなくなりそうだから」
レオは赤い顔のまま息を吐き、またリディを抱き寄せた。
「リディ、まさか誰かにリディの筋肉を触らせたりしていないよね?」
「しないよ。私の筋肉って、お兄様みたいにムキムキしてないもん。触っても楽しくないと思う」
「そういう話じゃないんだけど。……たとえ腕の筋肉だとしても、俺以外に触らせないで」
「分かった!」
「……返事が軽いなぁ……本当に分かってるのかな……」
「任せて!」
「うーん……ちょっとさっき気になったんだけどね。誰かの筋肉を触って、楽しかったことがあるの?」
「うん! お兄様が筋肉を触らせてくれる! お兄様って、体格はがっちりタイプじゃないけど、脱いだら筋肉あるんだ!」
「……ルシアン卿か。他には?」
「他? うーん……他の人の筋肉を触ったりはしないかも」
「良かった。じゃあ、他の人のは触らないで。その代わり、俺のを触っていいから」
「んん!? ごめん、さっきのは無意識で……レオのももう触らないように――」
「俺のは触っていいんだ。リディの恋人だから。でも他の人のは触らないで」
「……うん。レオの恋人だから、他の人のは触らないね」
そうか、リディはレオの恋人だから、リディが他の男の人に触るのは嫌ってことか。今さら気づく。逆の立場で考える。もし、レオにべたべた触る女の人がいるのは嫌だと思った。こういうのが、恋愛というものなのかもしれない。
「……そういえば、何か話があるって、言ってたね」
「ん? ああ、話っていうか、少しでもリディと一緒にいたかったんだ。今日は週末だし、本当は昨日ラヴァルディ領に帰る予定だったんでしょう? 今日はこれから帰るのかな」
「うん、そうなんだ。帰って着替えたら、ラヴァルディ領に帰る予定」
「そうだよね。……よく考えたら、俺もリディも忙しいから、すぐにデートはできないかな……」
「あー……それもそうだねぇ。お忍びデートしたいよね。……そうだ、学校帰りに、こんな感じで一緒に帰ったりしようか? それなら、少しは会えるよね。レオは生徒会も忙しいと思うけど、時々なら一緒に帰れるでしょ?」
「そうだね、それいいね。そうしようか」
レオもリディも会う時間を作るのは大変だけど、恋人になったのだから会う時間は作りたい。
その日、レオの馬車でラヴァルディ邸まで帰り、ラヴァルディ邸から去っていくレオの馬車を見送るのだった。




