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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第三章 アオハル編

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 狩りの二班としてレオが出発し、リディは三班の出発まで矢と弓の確認をしていると、リディを呼ぶ声がした。


「リディ!」

「……フェルナン。もしかして、フェルナンも三班?」

「そうなんだ」


 学園でリディと同じクラスのフェルナン・マリオット侯爵令息である。フェルナンは隣にフェルナンに似た子を連れていた。


「紹介するよ。俺の弟のアルフォンス。十四歳」

「ラヴァルディ公爵令嬢、初めまして」

「はじめまして、アルフォンス君。フェルナンに似てるね」

「だろう? よく言われる」


 フェルナンに似たアルフォンスは、マリオット侯爵家の三男らしい。四人兄弟で兄弟全員男なのだとか。フェルナンに比べ、少し無邪気で元気っ子のような感じだ。


「もしかして、アルフォンス君は、皇宮主催の狩りは初めて?」

「はい! 絶対に大きい獲物を捕まえます! 熊とか!」

「熊はこの森にはいないって聞いたよ?」

「そうなんですか!?」

「アルフォンス、お前無茶するなよ? 今回は小さい獲物を狙った方がいいよ」

「えー……」


 アルフォンスはがっかりしている。最初の狩りで、熊はさすがに高望みすぎる。まあ、このくらいの年齢の子は、自分がなんでもできると怖いもの知らずなものかもしれない。リディもこの狩りは初めてだから、最初から小さい獲物しか狙っていない。


 三班の出発になり、リディも一人で出発した。狩りはチームを組まないことになっているので、フェルナンたちとも分かれた。


 森を歩きながら、獲物を探す。獲物が逃げるといけないので、できるだけ歩くのにも音をたてない。すると、途中でウサギを見つけた。


「か、可愛い獲物を発見してしまった」


 可愛いので殺生は心苦しいが、ごめんなさい。ウサギは食べられるので、美味しくいただきます。


 そう思いながら、リディは弓を引き、矢を放った。


「……当たんなきゃ意味ないよぅ」


 めちゃくちゃ外しました。まったく惜しくないくらい外しました。当然、外れた矢に驚いたウサギは、逃げて行った。


 やはり、魔獣討伐とは勝手が違う。


 仕方ないので、再び獲物探し再開。

 それから、どれくらい時間が経ったのか、何度か小さい獲物を見つけるものの、全て矢を外してしまう。もしかしたら、本能的に当てたくない、というのがあるのかもしれない。下手であることから目を逸らし、そう思うことにする。


 そうこうしているうちに、結構森の奥に来てしまった。少しずつ、帰る方向へ移動しつつ、歩きながら獲物を探そうと進路を変更する。それからまた歩いていると、何かがぶつかる音と、人の鈍い悲鳴が聞こえた。


「な、何?」


 リディは音がした方へ、足を速めた。すると、そこにいたのは。


「猪!? ……アルフォンス君!?」


 猪が興奮しており、倒れているアルフォンス目掛けて突進した。リディはすぐに追いかけたが、猪がアルフォンスを頭突きするのを止められなかった。アルフォンスに頭突きした猪は、リディに気づくと、森の奥に走り去ってしまった。


「アルフォンス君! 大丈夫!?」


 アルフォンスに近づくと、リディはさっと顔を青くした。これはまずい。


 リディは猪がアルフォンスに頭突きするのを一回しか見ていないが、この感じだと、リディが来る前に何度か頭突きされている可能性があった。


 痛みからか、目を瞑っているアルフォンスの口から、うめき声が聞こえる。

 アルフォンスの足と首が変な方向を向いている。これは首が折れているのかもしれない。アルフォンスにはまだ息があるようだけど、これからリディが救護班の聖女を呼んできて間に合うだろうか。


「……」


 悩んでいる暇はない。このままでは、アルフォンスは死んでしまうだろう。ここにはアルフォンスしかいない。誰も見ていない今なら、リディが癒しの力を使っても問題はないはず。


 リディは癒しの力を使った。リディの青目が金色に光り、癒しの力に集中している手が淡く光る。


 まずは重症な首の骨からだ。折れた首の骨がくっついたのか、アルフォンスの息が少し粗くないものに変化した。それから、足の骨も癒しの力を使う。そして、肋骨あたりもなんとなく折れている気がするので、そこにも癒しの力を使った。


 そして、癒しの力を使うのを止めると、リディの瞳は金色から青色へ戻った。


「ふー……」


 もしかしたら、他にも折れていたり怪我している可能性はあるが、医師ではないリディには、ここまでが限界だ。見えない部分の傷や怪我の修復は、できれば患者本人や医師とやり取りしながら行わないと細部までは難しいのだ。

 どうやら危機は脱したようで、アルフォンスが目を開けた。


「痛っ――」

「大丈夫?」

「……公爵令嬢? あれ? 俺……痛たた」


 アルフォンスはお腹を押さえながら体を起こした。


「お腹を怪我しているのかも。アルフォンス君、猪に頭突きされたの覚えてる? 痛みがあるなら、一度救護班に見てもらった方がいいよ」

「思い出した。頭突きされました……うっ……胸あたりも痛いかも」

「もしかしたら、折れているのかもしれないわ。確か、聖女だけじゃなくて医師もいたと思うから、確認してもらいましょう。立てる? 肩は貸すけど、さすがに私じゃアルフォンス君を抱えられないから」

「あ、歩けます!」


 どうやら、リディに抱えられる自分を想像したらしい。女性に抱えられるなんて、恥ずかしい! っと思ったようだ。まあ、闇の魔法を使っていいなら、リディでも連れていけるのだが、歩けるようなのでアルフォンスには歩いてもらった。


 それから救護班に見てもらっていると、狩りから戻ってきたフェルナンが、アルフォンスを怒っていた。「無茶するな! 小さい獲物にしろって言っただろ!」っと怒られ、アルフォンスは涙目になっていた。フェルナンもお兄ちゃんなんだなぁと、リディは兄ルシアンに怒られたことがないので、怒ったフェルナンに内心ビビってしまった。


 その後、リディは狩りを再開し、偶然小さい川にいた鴨を捕まえることができた。矢を使わず、手づかみで捕まえたのだが、それを運営の管理に持っていくと、「これは『狩り』には当たりませんが、……まあいいでしょう」とおまけで了承してもらえた。一匹は捕まえられたと、ほっと息を吐く。


 色々あった狩りだったが、無事に終えることができて、リディは安心していた。


 まさか、リディが光の魔法の癒しの力を使っているところを誰かに見られていたとは、まったく思っていなかった。

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