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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第三章 アオハル編

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「ええ? それじゃあ、シメオン殿下は、さすがに皇太子の座を降ろされたんじゃ?」

「いや。そのあたりが陛下の甘いところだな。この件に関しては、父上も調査に絡んだから俺も知っているが、この薬はすでに大昔に使用を禁止された薬物だった」


 亡くなったラヴァルディ前公爵のおじい様が調査したのか。まあ、その頃なら、パパもまだ今のリディより小さい年齢だったのだろう。


「今は魔獣といえば、国の八割ほどの魔獣はラヴァルディが討伐してしまう。だが、まだそういう決まりもなく、ラヴァルディ関係なく魔獣を一般人それぞれが討伐していた大昔、一般人の力では魔獣討伐には難しいということで、使われていた薬物があった。一般人が、一時的に力を増幅させて戦うために使用していた。ただ、この薬物は副作用が強い。一回程度の使用なら問題ないらしいが、何度も継続して飲み続けると、精神が崩壊し、危険な思想、危険な行動を取ったりするようになる。だから、現在では使用を禁止されている。当時は禁止薬物として指定されたことに反対もあったらしいが、今はそれを知る者もいないはずだ」

「え、反対があったの? 危険な薬物なのに?」

「さっき、一回程度の使用なら問題ない、と言ったが、本当に一回程度なら、逆に良いところばかりな薬だと言われていたらしい。まあ、一時的に力を増幅させると言ったが、筋力や魔力、体力なんかが一時的に増幅するらしいから、元気な者にさらに元気を生み出すとか言われていたようだ。あとは、病気の者には一時的に元気にさせるとか、死の淵にいるものは驚いて目を覚ますとか、疑わしい話まであるがな。薬は何でも使い方次第だ。容量用法を守っていれば、大事にはならないはずだが、どこにでも外れた使い方をし出す者はいる。だから禁止されたんだろう」


 なるほど、とリディは頷いた。


「あとは、その頃は今ほど神殿の力も強くなく、怪我や病気を神聖力を使って治す、ということが一般的ではない時代だった、ということもある。だから、使用禁止に反対があったんだろう」

「せっかく使用禁止だったのに、シメオン殿下が復活させちゃったのね」

「ああ。シメオン殿下はただの好奇心だったのだろうが。あの人は、何でも遊びに変えてしまうところがある。近くに面白いおもちゃがあったから、使ってみたくなったのだろう」

「近くに?」

「ああ。あの薬は、皇宮の地下に今でもある。薬などと言っているが、実は竜の血だ。竜の死骸から取得するらしい」

「……竜? ……えっと、皇族は竜人族の末裔だよね?」

「そうだ。今、リディが想像したような竜が、本当に皇宮の地下にいるらしい。俺は見たことはないが」


 想像したのが、パパにバレていた。それにしても、死骸とはいえ、本当に竜がいるとは。世界樹もあるんだから、別に驚きはしないが。そういえば、竜って、魔獣の一種だろうか。


「とまあ、薬物がシメオン殿下の仕業ということは分かったが、結果的にそれに関しては箝口令が敷かれ、シメオン殿下は皇太子のままだった。この薬に関して、調査には時間がかかっているから、結局事件が解決したのは、シメオン殿下がリンバルム学園を卒業して三年くらいは経っていた」

「そんなに?」

「シメオン殿下は馬鹿のようで馬鹿じゃない。のらりくらりとかわされていたらしいな。事件は解決したものの、シメオン殿下の悪い噂も別の噂で霞んでいった」

「別の噂?」

「……ラヴァルディ公爵家の後継者の出奔だ」

「……パパのことぉ!?」

「そうだ」


 パパ、というのはリディの実の父セザールのことだった。


「セザール兄上が失踪し、その噂は瞬く間に広がった。すぐに父上が俺を後継者にする、と声明を出したことで、今度は俺の噂が広がった。それと同時に、もう一つの噂が出た。その当時に当主を引き継いだ現在のベルリエ公爵の婚約者が失踪した」

「……リュカのママのリュシー・ベルリエ?」

「そうだ。あと、リディの母のリリアナも姉と同じ時期に失踪していることは調査済みだ。ベルリエ前公爵の長女ではなく次女で、ベルリエ公爵の後継者でもなく婚約者でもないから、今のところ噂として大きく取り沙汰されることがなかったから、話は聞いたことはないがな」

「……パパとママって、そのころに駆け落ちしたんだ」

「たぶんな。リンバルム学園で出会ったんだろう。同じ年齢で、同じ魔法クラスだったから。仲良くしている、という話は聞いたことがなかったから、恋愛関係にあることは隠していたんだろうな」


 なるほどー。リディは父と母の出会いを見たかった、とちょっとドキドキした。泣き虫の父は、しっかり者の母に、いつも「仕方ないわね」と言われながらも、仲が良かったのを思い出す。


「セザール兄上の失踪、俺の後継者繰り上がり、リュシー・ベルリエの失踪などは、あの頃のスキャンダルの中心だったから、シメオン殿下の噂は霞んでいったと言える」

「な、なるほど」

「とはいえ、そのすぐあとにシメオン殿下も亡くなった。パーティーに出かけた後、酒に酔い、川に落ちて亡くなった。らしいっちゃらしい最後だな」

「そうなんだ……」

「その後、失踪していたリュシー・ベルリエがベルリエ公爵の元に戻ったというのは聞いていた。子を産み、体調が悪くベッドから起き上がれないからと、正妻の努めができない、ということで、ベルリエ公爵はリュシーとは別の女性を正妻に迎えた。……まあ、ここまでが、これまで知っていた情報だった。昨日、それが覆されたがな」

「リュカが本当はベルリエ公爵ではなく、シメオン殿下の子だったのね」

「ああ。リュシー・ベルリエはすでに亡くなっているし、彼女の真意はもう分からないだろうな。ベルリエ公爵の言うことが全て真実とは限らない。リュカが皇族だと皇家の調査で分かった以上、まずはこれからリュカをどうするのか、陛下の動向を待つしかない」


 リディは頷いた。


 きっと、リュカは知っていたのではないだろうか。自分が皇族の血筋だということを。誰にも言えずに、今まで辛かっただろう。

 また、リュカの事でレオは今、どのような心情なのだろうか。複雑な思いを抱いていることは間違いないだろう。


 二人を思い、リディもまた二人にどのように寄り添っていけばいいのだろう、と悩むのだった。

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