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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第三章 アオハル編

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 リュカが実は皇族だった、という話題は、リディが学園に登校すると生徒間ではすでにその話で持ち切りだった。つい先日まで、リディの聖水毒殺未遂が話題になっていたのに、すっかりそれは過去の話となった。


 リディも昨日、パパにその話を聞いたときは驚いた。昨日の皇宮での会議の出来事とはいえ、その会議に出席した両親を持つ生徒もおり、噂が広まるのは早い。


 学園には、この日はリュカもレオも来ていない。しかし、この話題がとにかく刺激的なのか、生徒間ではすでにレオ対リュカの後継者争いまで飛躍していて、リディは眉を寄せた。


 その日、学園が終わり、帝都の屋敷に帰ると、まだパパが帝都にいたことに驚いた。今日の昼にはラヴァルディ領に戻ると聞いていたのだ。やはり、昨日の『リュカが皇族だった』ことについて、情報収集のためにパパはあと数日帝都に留まることにしたという。


 パパの執務室で、パパが座るソファーの横に座ったリディは、今日のおやつのミルフィーユを食べながら、パパとブリスの話を聞いていた。パパの情報網で、皇家の調査にて、リュカはシメオン元皇太子殿下の子だと確定したとのことだった。


「……リュカは、ベルリエ前公爵のリュシーの息子だったのよね? ってことは、私とは従兄妹ってこと?」

「そうなるな」


 リディの母もベルリエ前公爵の娘である。


「ベルリエ前公爵の長女がリュシー、次女がリリアナでリディの母だ。……言っておくが、ベルリエの息子に従兄妹だとか言ったら駄目だぞ?」

「言わないもん……」


 確かにリディはうっかり屋さんだが、これでもリディとしては成長しているつもりだ。さすがにそんなうっかりで話したりはしない。……はず。


「リュシー様は、どうしてリュカが生まれた時に皇子だと言わなかったのかな? シメオン殿下が亡くなっていたから? 結婚していなかったのよね?」

「……そうだな。そもそもだが、リュシーは今のベルリエ公爵の婚約者だった。だから、昨日ベルリエ公爵がシメオン殿下の名を出すまで、誰もリュシーとシメオン殿下がそういう関係だったことを知らないはずだ」

「……そういう関係? 浮気ってこと?」

「……まあ、そういうイメージでいいだろ」

「え? 何でそんな、ふわっと言うの? 分からないよ?」

「リディがお子様だからだろ……」

「パパ、急に悪口!?」

「はぁ。……リュシーがシメオン殿下と恋愛関係だったにしろ、ただの肉体関係だけだったにしろ、ベルリエ公爵と婚約はしていたのだから、大きく括れば浮気でいいだろ、ってことだ」


 あ、肉体関係……リディはかぁっと顔を赤くした。そういうことか。だから、パパはふわっと話を流そうとしたのだ。リディのお馬鹿さん。


「パ、パパ、私だって、もう大人だから、ちゃ、ちゃんと言っても、いいんだからねっ」

「どもりながら言うか? 動揺してるだろ」


 そりゃあね! してますとも! ちょっと恥ずかしいもん。


「……まあ、それはいいとして。こうなったらリディにも話しておくか。一応箝口令はあるが、知っている人は知っているし、リディはラヴァルディだから、知っていたほうがいいだろう」

「箝口令?」


 パパがブリスに指示すると、ブリスが何かを持ってきた。それには一人の男性が描かれていた。リディはそれを受け取る。


「シメオン殿下が皇太子になった時に描かれた肖像画だ」

「素敵な人だね。……少し、リュカに似てるかも」


 そこには十八歳ほどの青年の麗しい姿が描かれていた。容姿端麗で、さぞ女性の注目を浴びたことだろう。


「俺くらいモテていた、と聞いている」

「急にパパの自慢」

「ただの事実だが。まあ、それはいいとして、シメオン殿下は異性に人気があったのは確かだが、まあ、色々と噂の絶えない男だった。女遊び、賭博、未成年でも酒を飲み、不法薬物売買。どれも正確性のかける噂ばかりだが、まあ、ほぼ事実だ。皇族らしからぬ腐敗っぷりで、生きている内に、よく皇太子の座から降ろされなかったな、と不思議なくらいだ」

「それが事実なら、本当にそうだね……」

「陛下は甘いからな。自身の子らには特に。皇族の皇位継承は、ほぼ皇帝の指名で決まる。とはいえ、今まで基本的には、長子や男児が採用されてきた。陛下の場合も、それに則った形だろう。例えその息子がクズだろうと、皇太子である間に、少しは大人になるだろうと期待もしていたのだろうが。陛下の子で能力面で言うなら、今の皇太子殿下が一番皇太子に相応しかったと言えるから、今は収まるところに収まっていると言っていい」


 シメオン殿下は、人は見かけだけでは判断できない、というのが一番当てはまる人物なのかもしれない。


「シメオン殿下の悪い噂は絶えないが、一番問題だったのは不法薬物売買だろう。その頃の帝都では、貴族だけでなく一般人にまで、危険思想に走り、人を傷つけたりする事件が頻発していた。調査の結果、どうやらみな薬物中毒のようだったが、入手先が分からないのが問題だった。ところが、リンバルム学園の生徒で、特にシメオン殿下と親しい生徒が、自分の家から大金を盗み出す、という事件が増えた」

「……薬を買うお金を得ようと?」

「そうだ。もうすでに薬物中毒になっていたんだろう。そうなると、毎日薬を入手する方法ばかり考えるようになる。そこから、シメオン殿下に辿り着き、薬を横流ししていたのがシメオン殿下だと知るところになった」

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