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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第三章 アオハル編

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84/111

84 ※レナート視点

 皇宮の一室。この日、レナートは定期的に行われる国の会議に出席していた。


 この席には、皇帝、皇太子であるシャルロット皇女、少し前から出席するようになった皇太子の子息レオポルド殿下、ラヴァルディ公爵であるレナート、ベルリエ公爵、そのほか国の重要な役職に付いている貴族たちが十五名ほど着席している。その中の数名、発言権はないが後継者も連れて出席している当主もいる。


 いくつかの議題を話し合い、本日の議題が終わりとなったころ、ベルリエ公爵が声を上げた。


「この場で陛下をはじめ、みなさんに紹介したい人がいます」


 レナートは訝し気に思いながら、会議の部屋の入口の扉が開き、部屋に入ってきた人物を見た。あれは、ベルリエ公爵の子息であるリュカ。リディが仲良くしていることを知っているので、何度かリディに内密に街中で一緒にいるのを確認したことがある。もしや、リュカをベルリエ公爵の後継者として、今後この会議に参加させたい、そういった話かと一瞬は思ったが、すぐに違うことに気づいた。


 リュカはいつものリュカとは違っていた。それに気づいた人たちが、ざわざわとしていた。


 レナートの記憶では、リュカは普段、淡い金髪というか蜂蜜色のような髪だったはず。それなのに今は銀髪だった。あれは皇族の色。


 リュカがベルリエ公爵の隣に立つと、ベルリエ公爵が口を開いた。


「ご紹介します。すでにご存じの方もおられると思いますが、私の息子リュカ・ベルリエです。……息子として育ててきましたが、見ての通り、リュカは皇家の血を引いています。リュカは亡くなられたシメオン元皇太子殿下と、亡くなった私の従兄妹リュシーの息子です」

「……どういう、ことだ」

「陛下、驚かせてしまい申し訳ありません。シメオン殿下が亡くなり、従兄妹のリュシーは失意にあり、リュカの存在を皇家に知らせれば、赤子のリュカが皇家に連れて行かれてしまうのではと悩んでおりました。しかし、リュシーは病床で目を開けなくなり、リュシーの意思を確認できないうちは、私の息子として育てようと思ったのです。しかし、リュシーも亡くなり、最近になって、リュカを本来の場所に戻すべきではないかと考えるようになりました」


 皇帝、皇太子、レオポルド殿下の全員がリュカを見ていたが、みな表情の読めない顔をしていた。それらを他の貴族が固唾を飲んで見ていた。


「陛下、リュカは間違いなくシメオン殿下の息子です。どうか、リュカを皇族に戻していただけますよう、お願い申し上げます」


 リュカがシメオン殿下の息子。レナートは自身より少し年上だったシメオン殿下を思い出した。そう言われると、少しリュカと似ているかもしれない。


 シメオン殿下は、色々と問題のある人だった。その問題について箝口令は敷かれていたものの、あの頃のスキャンダルを覚えている貴族も少しはいるだろう。


 皇帝はどうするのか。みなの視線を集めた皇帝は、いったんこの場の散会を選んだ。それはそうだ。この場で回答ができるはずもない。本当にリュカがシメオン殿下の息子なのかどうか、これから皇家で真実の調査が行われるだろう。


 レナートは会議の後、世界樹の部屋へやってきた。世界樹はいつも通りの姿。何も変化がないことだけ確認し、レナートが踵を返したところ、遠くから意外な人物が歩いてくるのに気づく。


「ベルリエ公爵」

「これはこれは、ラヴァルディ公爵」


 ベルリエ公爵は、レナートの横に立つと、世界樹を眺めた。


「珍しいな。貴公が世界樹を見に来るとは」

「そうだな。十年ぶりくらいかもしれん」


 世界樹を見ながら目を細めるベルリエ公爵を見ながら、レナートは口を開いた。


「何を考えている?」

「何とは?」

「リュカ・ベルリエのことだ。なぜ今になって皇族などと発言した?」

「あの時言った通りだ。リュカの母もいなくなり、リュカの将来を考えて知らせることにしたまでのこと。リュカの血筋を考えれば、本来受けるべき資格が与えられるべきではないか?」


 ベルリエ公爵はそれだけ言うと、すぐに踵を返し、世界樹の前から去っていく。


 ベルリエ公爵は何がしたい。リュカを皇族に戻し、まさかリュカに皇帝の座を狙わせようというのか。


 レナートは舌打ちした。

 先日のリディの聖水の事件を思い出す。ベルリエ公爵の娘が関わったとして、謝罪の意味と称し、ベルリエ公爵から土地を貰うことになった。やけにあっさりと土地を渡すと言ってきたと疑問には思っていたが、これが原因か。


 今回のリュカの件を予定していたのだろう。だから、リディの聖水の事件を長引かせたくなくて、あっさりと土地を渡してきたのだ。


 ベルリエ公爵の意図を探る必要があるが、あの男も簡単には情報は渡さないだろう。


 それに、なぜ今回ベルリエ公爵が世界樹を見に来たのか。ベルリエ公爵家に世界樹に関わる資格があるとしても、あの男は今まで世界樹には興味がなかったはず。十年ぶりに見に来たと言っているくらい、普段はまったく見に来ることはないのに。


 リュカが皇族に戻ることを見越し、リュカが将来的に皇帝になる場合を想定しているなら、未来の皇帝が関わることになる世界樹の代替わりについて、やっと興味が出てきたということか。それとも――。


 どこか不穏な気配を感じる。色々と探らねばと、レナートも踵を返すのだった。

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