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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第三章 アオハル編

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 パパとローズ・ベルリエのことの話をしながら、光の魔法の一族と闇の魔法の一族の因縁について考え込んだ。


 光の魔法の一族と闇の魔法の一族は、国の建国当初から仲が良くなかったという。特に光の魔法の一族の闇の魔法の一族嫌いは、かなり深刻だったらしい。


 悪魔と契約をするラヴァルディが邪悪な一族に見えるのだろう。魔獣討伐と言いながら、時には魔獣を生きたまま地下世界へ送り返すラヴァルディは、魔獣や魔物と癒着しているように見え、また、時にはラヴァルディが魔獣を操って地下世界から地上へ呼び出している、なんていう極端な噂まで存在した。


 そして、光と闇の一族の歴史の中で、闇を嫌った光の一族の一人が、闇の一族の一人を殺す事件が発生した。それに怒った闇の一族が光の一族に報復を行い、一時期、国は大混乱に陥ったという。


 それから、仲裁には皇帝が入るようになり、闇の一族は悪ではなく闇の魔法が使えるだけで、光の魔法一族と変わらない人間なのだと、互いに話し合うことをした。


 昔の因縁があるから、今も光と闇は一般的には不仲とされる。実際に、決して仲が良いとは言わないが、現在はいがみ合っているということもない。国の会議のため、パパは皇宮に行くこともあるが、そこでベルリエ公爵と会っても、特に喧嘩なんかはしないという。もちろん、会議の中で多少の意見の食い違いはあるらしいが、それは光と闇は関係ない事項であるし、昔ほど現在の光と闇は関係が悪いことはない。


 まあ、そうはいっても、世間的には、やはり光と闇は仲が良くない、というのは一般認識ではある。リディだって、リュカとは仲が良いが、それはベルリエとしてという認識はまったくなく、リュカ個人としてなのだ。


 ローズ・ベルリエがリディに何かしら思うことがありそうではある。それは、もしかしたら、小さい頃などに、闇の魔法一族のラヴァルディとは、仲良くするな、などと教えられているから、ということもあるのかもしれない。リディもパパからは、リュカと仲良くしたとしても、リュカはあくまでベルリエだから、ラヴァルディの内部の事を何でも話してはいけない、と教えられているから。


 そんなことを考えていると、ソファーの前のテーブルに置かれた、手紙や書類といったものが乱雑に置いてある中の一つの手紙が気になった。それを手に取ったところ、横からパパがその手紙を奪い、一瞬でその手紙は燃えた。たぶん、パパは火属性の魔法も使えるので、それで燃やしたのだろう。


「え!? パパ、今燃やした?」

「リディは見なくていい」

「え~……パパの名前の下に、私の名前も書いてあったのに……」

「気のせいだ」


 気のせいではないと思うのだけど。ブリスを見ると、苦笑している。


「もしかして……私に縁談?」

「んなわけない」

「もう! 絶対縁談でしょ?」

「違う」


 実は時々、リディの婚約者としてうちの息子はどうですか、みたいな手紙や話が来ている、とブリスが教えてくれた。ただし、リディには一度もそういう話をパパから聞いたことがない。きっとパパが話を握りつぶしているに違いない。


 パパはあまり表には出さないけど、娘に婚約者ができるのは嫌だと思うタイプらしい。


 手紙と言えば、実際は騙されたのだが、学園で手紙を貰ったことを思い出した。


「そういえば、学園で手紙を貰ってね。告白の手紙かと思ったんだけど……」

「は?」

「あ、実際にはね、私の勘違いで告白の手紙じゃなかったの! でもね、手紙を貰った時は勘違いして、ちょっとドキドキしちゃった」

「そんな手紙、その場で燃やせ」

「いや、そんなわけにはいかないでしょ……」

「俺が許す。リディが勘違いを起こすそんな手紙を送ってくる方が悪い。変な呼び出しでもされたらどうする。リディのことだから、行ってみようとするだろ」

「……」


 どうして、呼び出された、とも、行ってみた、とも言っていないのに、分かるんだ。すでに騙された後です、とはパパには言えない。


「いいか、また手紙を貰っても、封も開けずにその場で燃やせ」

「え~……でも、次は告白の手紙だったら、どうするの? 私、告白されてみたい」

「は?」

「クラスの子ね、みんなじゃないけど、恋人いたり婚約者いたりするんだよ! 私も恋人欲しい~」

「駄目だ。リディにはまだそんなものは早い」

「早くないよ! クラスの子はいるもん! みんな同じ年齢でしょ」


 パパが隣に座るリディを抱え上げて、リディを膝に乗せた。


「俺に会うと、リディは俺がキスしなかったら、キスしてと言うだろ」

「……? うん」

「俺にキスを強請る子に、まだ恋愛は駄目だ」

「どぉしてぇ! パパにキスしてって言うの、別に普通でしょ! クラスの子、みんな、(聞いたことないけど)パパやママにしてもらっていると思う!」


 頬や額にキスなんて、家族間の挨拶でしょ! もうキスしない、などと言われたら、泣いてしまう。リディはパパに抱きついた。


「パパは私にキスしないと駄目なの! 意地悪言わないで!」

「キスしないとは言ってないだろ」


 むーっとしながら、リディはパパから体を離す。


「じゃあ、キスして」


 リディは頬をパパに向けた。パパが頬にキスしてくれたので、リディもパパにキスを返す。


「パパは毎回、私にキスしてね」

「はいはい」

「じゃあ、私も恋人作っていい?」

「その『じゃあ』の流れが、まったく分からない。駄目だ」

「どぉして! パパだけ、ずるい!」

「は?」

「パパが学園に通っていた頃、恋人がたくさんいたって聞いた! どうして、パパは恋人いたのに、私は駄目なの?」

「……」


 お、パパが黙った。よし、このままいけば、恋人を作っていいという許可が貰えるかもしれない。


「……そんなに恋人欲しいなら」

「うん! 欲しい!」

「俺が恋人ごっこでもしてやる」

「……意味がわからないんですけど!? そういうことじゃないの! なんか違う!」

「何が違う。耳元で愛でも囁いてやろうか?」

「それ、いつものことでしょ! パパ、いつも私に『愛してる』って言ってる! そういうことじゃないんだもん~。パパに愛を囁かれても、ドキドキしない~。パパじゃない人に甘やかされたいの!」


 パパは舌打ちして、ブリスを指した。


「贅沢な奴だな。じゃあ、恋人ごっこの相手、ブリスならどうだ?」

「……私ですか?」

「ブリス、婚約者いるもん! もうすぐ結婚するでしょ! 恋人ごっこにブリスが了承したら、婚約者にブリスが浮気してるって言いつけてやるんだから!」

「止めてくれますか!?」


 そう、ブリスはもうすぐ結婚するのである。美人な婚約者となかなか良い雰囲気なのだ。


 パパが再び舌打ちして、今度はルシアンを指した。


「よし、ルシアンで手を打て」

「俺? 俺はいいけど」

「お兄様もキスも抱っこもしてくれるけど、ドキドキはしないもん! それに、恋人ごっこじゃなくても、お兄様は甘やかしてくれないと駄目なの!」

「恋人ごっこなら、俺がいつも以上に甘やかしてやろうか?」

「そうじゃないの! お兄様と恋人ごっこじゃなくて、恋人が欲しいの! 同じくらいの年齢の子がいい~」

「俺かルシアンかの恋人ごっこ以外は、まだリディには早い。絶対に駄目だ」


 駄目だ。パパの壁は厚い。

 むーっとした顔をパパに向けてみるものの、パパは今のところ、絶対に意見を曲げてくれなさそうだ。

 まあ、仕方ない。パパはリディのことが可愛くて仕方ないのだと思う。リディを愛してやまないパパを、リディも大好きだから。だからリディがパパに今は合わせてあげるのだ。

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