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リディが食堂で知人ではない三人の女生徒から嵌められそうになって、三日が経過した。三人がわざとリディを嵌めようとしたことが生徒会の調査で分かり、三人は三日の謹慎を言い渡されたという。三人の謹慎が解け、学園に出来てきた三人からリディに謝罪したいと申し出があった。
しかし、リディは謝罪を断った。そもそも知人でもないし、普段から顔を合わせることもない。わざわざ嵌めようとした三人の顔も見たくはない。それに、パパにこの件のことを伝えたことで、ちょっと面倒なことになりそうだ、と思っていることを避けたい事項がある。
実はこの件に関して、リディはリュカから裏の事情を聞いていた。この三人は、自分たちで計画してやった、と言っているそうだが、実はローズ・ベルリエが指示した可能性が高いということだった。ただ、三人はあくまでも自分たちで計画した、と言っており、ローズも否定しているから、ローズを追及するのは難しいだろう、とのことだった。
リディはちょっと意外だと思っていた。実行した三人の裏に誰かがいるとしたら、エミリー・カリエではないかと思っていたからだ。エミリーとはそんなに関わりもないのに、なぜか目の敵にされている気がするから。
それにしても、なぜにローズ・ベルリエが指示するんだろう。彼女こそエミリー・カリエ以上に関わりの少ない相手である。
とにかく、三人からの謝罪を断ったのだが、なぜかその三人は強硬手段に出てきたのだ。
その日の食堂で、ララとフェルナンと三人で食堂にやってきた時、急にその三人が近寄ってきた。
「先日の行いを謝ります。ごめんなさい。許してください!」
いきなりそう言って、三人は一斉に頭を下げた。もう、本当になんなんだ。また注目を浴びてしまっているではないか。
「リディは謝罪を断ってたでしょう! なのに、無理に近寄って謝罪するなんて、自分勝手過ぎるんじゃない? リディを嵌めようとしたことは、最低の行いよ!」
「わ、分かっています! それでも謝罪はさせてほしくて! ごめんなさい! 許してください!」
ララの怒った言葉にも、めげずに三人は謝罪を続ける。
うーん、これは、もしかして別の意図があったりするのかな。またもやローズ・ベルリエに、騒ぎを起こしてリディを困らせるように指示されたとか? もしくは、リディに謝罪しているのを他の人に見せることで、自分たちの悪い印象を少しでも変えたいとか? もしくは、ローズに友人関係を切られて焦り、ラヴァルディ公爵家と仲よくしようとしているとか?
疑い出したらキリがない。リディは溜め息を吐いた。できれば避けたいと思っていたが、パパに言われたことをする必要がありあそうだ。
リディは少し前に出て、悲しい顔をしているように努めながら口を開いた。注目を浴びているので、リディの声は少し離れている人にも聞こえるだろう。
「私は怖いの。またあなたたち三人に嵌められるのではないかって。あの時はずいぶん傷つきました。ただ、そこまでおっしゃるなら、謝罪は受けます。ですが、今後学園にいる間は、私の視界には入らないでいただきたいです。また、学園を卒業されても、ラヴァルディ公爵家はあなた方三人がおられる場には参りませんので」
「え!?」
「あなた方の希望通り、謝罪は受けました。ですから、私の希望も受けてくださいね」
リディはそう言うと、踵を返した。ララとフェルナンもついてくる。
この食堂での話は、すぐに噂が広まるだろう。あの三人は、もしかしたらローズ・ベルリエが後ろ盾だったのかもしれないが、ラヴァルディ公爵家を敵に回したのだ。
本当は、パパがあの三人の家ごと潰すと言っていたのだが、リディとしてはそこまでする必要はないとパパに言ったのだ。ただし、パパは実行した三人自身は潰せ、と言っていた。リディとしては気が重かったが、今言った言葉で彼女ら三人の将来は狭まったに等しいだろう。ラヴァルディ公爵家と懇意の人たちは、彼女らをパーティーに招待はしないだろうし、職にも着かせないだろうし、貴族であれば嫁に迎えようとも思わないだろう。
そして、この件は、リディに悪意を向けると同じようなことが起きるぞ、と周りの子達への警告にもなる。ラヴァルディ公爵家を敵に回したくない人は多い。今回の件を教訓に、これ以上リディに何も起きないなら、それでいい。
何度も回帰しているリディに何かあると、パパはピリピリする。何がきっかけでリディが命を落とすか分からないから。だから今回のように実害のあった不安の種は、できるだけ取り除きたいのだ。
その日、家に帰ると、週末なのでリディはラヴァルディ領へ帰った。玄関ホールでルシアンを発見する。
「お兄様! ただいま!」
「おー、リディ、おかえり」
ルシアンに抱きつきに行く。ルシアンがリディを一度抱きしめ、そしてリディの手を握った。
「兄上のところに行くよな? ちょうど俺も行こうとしていたから、一緒に行くか」
「うん」
パパの執務室へ行くと、パパはブリスと他の部下と仕事の話をしていた。しかし、リディを見ると、部下の人が気を利かせて、部屋を出ていく。
「ただいま、パパ!」
「おかえり」
リディはパパのところへ行き、パパの横に座った。パパはリディの腰を片腕で抱き寄せ、リディのこめかみにキスをくれる。
「ここ数日、何事もなかったか?」
「えっとねー……」
ここ数日の出来事と、今回の三人の謝罪を受けて今後は近づくな、と言ったことなどを話す。
「家ごと潰してよかったんだが」
「いいよぉ、そこまでしなくて。実行した子たちは、自分でしたことを自分で責任とってもらうから、それでいいの」
「ベルリエの娘は?」
「そっちは様子見。実行した子たちは、あくまでも自分で計画したって言うみたいで、ローズ・ベルリエが指示した証拠はないみたいだから」
「実行犯の三人の口も割らせられないのか、ベルリエの息子は」
「ご、拷問しろってこと? さすがに子供に拷問はどうだろ?」
「拷問以外にも、口を割らせる方法はある」
「そこまでしなくていいよぉ。リュカは十分してくれているんだよ。ローズ・ベルリエのことだって、妹のことなのに教えてくれたし」
そもそも、なぜローズ・ベルリエがリディを嵌めようとしたのかが分からない。やはり、光の魔法の一族と闇の魔法の一族の因縁みたいなのから来る嫌悪とか?
「今回、実行の三人には、今後私に関わらないでって伝えたでしょ。だからローズ・ベルリエも、今回のことでもう私には関わってこないかもしれないもの。しばらくは様子見がいいと思うの」
「ったく。俺の娘は甘すぎないか? ……まあいいだろう。ただし、これ以上何かあるなら、俺も黙っていないからな」
「はぁい」
ローズ・ベルリエよ、大人しくしていてね。パパがキレるようなことはしないで。
リディは、何もなければいい、と祈るのだった。




