48
パパが帝都で用事があるため、リディも一緒に帝都にやってきていた。今回はブリスとルシアンも一緒だ。
この日、パパが仕事で屋敷を外出しているため、ルシアンがリディを帝都の街へ遊びに連れて行ってくれた。ルシアンと手を繋ぎ、リディは行ってみたかったアイスのお店に寄った。
「はい、リディ」
「ありがとう! お兄様!」
リディはアイスが三段になっているものを買ってもらった。三種類もアイスが食べられるなんて、嬉しすぎる。ルシアンも三段のアイスを口にしていた。
三段アイスの一番下のアイスが一番気になる。リディは一番下の苺味アイスにかぶりついた。
「あ!」
リディは一口、口に入れることに成功したものの、三段のアイスが全て地面に落ちてしまった。
「あああ……!! 私のアイスぅ!」
「ああ! 泣くな泣くな。リディ、もう一個買ってきてやるから」
「……ほんと?」
「ほんと! そこを動いちゃ駄目だぞ!」
「うん」
一瞬で目に涙がいっぱい溜まってしまったが、ルシアンの一言でリディの心は落ち着いた。リディの落としたアイスには、蟻がたかっている。あのアイスは蟻さんのご飯に分けてあげたのだ。
「ほら! リディ、アイス!」
「ありがとう! お兄様!」
「もう下から食べるんじゃないぞ。上から食べなきゃ」
「うん」
リディは、今度こそアイスを落とさないように、口に含んだ。
「美味しい~!」
「よかったな。……リディ、鼻に付いてる」
「うん?」
ルシアンがリディの鼻をパクっとして舐めた。
「……アイス、付いてた?」
「付いてた」
「じゃあ、私の顔についたアイスは、お兄様にあげる」
「なんだよ。俺に食べさせるために付けたのか?」
笑いながらルシアンはアイスを持ったままのリディを抱えた。ルシアンはいつのまにか、アイスは食べきっている。
ルシアンはリディを抱えたまま歩き出した。小さな店を回る。
「明日はベルリエ公爵子息と会うって言っていたな」
「うん、そうなんだ。公園のベンチでお話するの。公園の近くに売っているワッフルが美味しいんだ!」
「リディは食べるの、好きだなー」
「大好き!」
「出かけるときは、護衛は連れて行くんだぞ」
「はぁい」
そんな話をしながら、ルシアンにはお店で猫耳付きの可愛い帽子を買ってもらった。
その日は夕方に、帝都の屋敷へ帰るのだった。
次の日、リディは昨日買ってもらった猫耳付き帽子をかぶって、外出した。もちろん護衛付き。リュカと何度か手紙をやり取りしていて、今回会う約束をしたのだ。約束の公園のベンチに座り、リディは甘い匂いに足をバタつかせた。
「早くリュカ、来ないかな」
公園近くのワゴンでは、焼きたてワッフルを売っているので、そこで買って食べたい。
「リディ!」
公園の少し離れたところから、リュカが走ってきた。リディはベンチから立つと、リュカが抱きつくのを受け止めた。
「リュカ。ひさしぶりね」
「うん! 会いたかった」
「私も」
ニコっと笑いあう。しかし、リディはリュカが少し痩せたような気がして、眉を寄せた。リュカの両頬をリディの両手で上下に揺らした。
「リュカ、食事はしているよね?」
「……? うん、してるよ」
「なんだか、痩せた気がする」
「え? そうかな? ……最近忙しいから、少し疲れているのかも」
「リュカは、後継者になるって、前に言っていたでしょ。忙しいというのは、後継者になるための勉強とかが忙しいの?」
「うん」
「そっか……。私も後継者になるために頑張っているの」
「そうなんだ。僕と一緒だね」
「うん。お互い、頑張ろうね。そうだ! 疲れているなら、やっぱり甘いものを食べた方がいいと思うの! あそこでワッフルを買って食べよ!」
「うん」
リディはリュカと護衛を連れて、ワッフルのワゴンに近づいた。人気店であり、美味しい匂いもするからか、かなり人が並んでいる。リディたちも列に並んでいると、リディの頭に何かが当たった。その拍子に、かぶっていた猫耳付き帽子も地面に落ちる。
「……傘?」
天気がいいので、日傘をさしていた人いたのだろう。その時、リディに近寄る女の人がいた。
「ごめんなさい、お嬢さん。風で日傘が飛んでしまったの。怪我はなくて?」
「はい、大丈夫です」
「あら、もしかして、頭に当たったのかしら。髪が少し乱れてしまったわね」
女の人は、リディの髪を綺麗に整えてくれた。
「ありがとうございます」
「いいのよ。こちらこそ、申し訳なかったわ。お詫びに、ワッフルをごちそうさせていただけないかしら?」
「……いいの?」
「もちろん。少し待っていて」
女の人は、リディとリュカと護衛の分までワッフルを買ってきてくれた。
「ありがとうございます」
「温かい内に召しあがってね。では、わたくしは行きますね。また会いましょう。綺麗な御髪のお嬢さん」
また会いましょう? リディは首を傾げつつも、女の人に手を振った。
リディはリュカとベンチに座って、ワッフルを口にする。
「うーん! 甘くて美味しいね!」
「うん」
リュカとワッフルを食べながら、色々と話をする。手紙を送り合うようになってから、リュカに会うのは今回が初めてだった。
「リディの父上は、僕と会うのを怒ったりしていない? 手紙に僕と会うことを了承を得た、って書いてあったけど」
「うん。大丈夫だよ。パパに、リュカがベルリエ公爵家の子って言ってあるし、パパは知っていて、リュカと会っていいよって言ってくれたから」
本当は、パパには少し渋られたけれど、強く反対はされていないから、大丈夫だろう。
リュカは、リディの話を聞いて、ほっとしたような顔をした。
「良かった。僕と会っては駄目って言われたら、どうしようって思っていたんだ。リディに会えないのは嫌だから」
リュカはそう言いながら、ちらっと護衛に目を向けた。護衛にリュカが見張られている、と思っているのかもしれない。
「リュカはおうちの人に、私と会うとは言っていないんだよね?」
「うん。僕の事は、外で誰と会っても父上たちは気にしないから、リディと会っているって言うつもりはないんだ。ラヴァルディ公爵令嬢と会っていると言ったら、リディと会わせてもらえなくなるかもしれない。それは絶対に嫌だから」
確かに、会わせてもらえなくなる可能性は大いにある。




