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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第一章 幼女編

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 魔獣に慣れる訓練は、今日はお休み。


 リディは、パパの執務室でパパが仕事をしている横で、算数の勉強をしていた。相変わらず、パパの元には、パパの部下がたくさん行き来する。そして、パパの横でブリスがサポートしている。

 パパを観察していると、部下の報告連絡相談を聞いて、何やら返答したり指示したりしている。あとは、何か書類にサインしたり。パパはいつも偉そうに座っているだけだけど、これでもバリバリ仕事中なのだ。パパは毎日忙しい。

 時々、魔獣が大量発生したときは、リディを連れて魔獣討伐にも行く。魔獣は怖いけれど、戦っているパパはカッコいい。


 一人の部下が部屋を去り、少しすると、また執務室に人が入ってきた。ルシアンである。ルシアンは、少し前にラヴァルディ領のどこかで魔獣が数匹発生したからと、討伐に出て行ったのだ。討伐が終わり、パパに報告のために戻ってきたのだ。


 魔獣討伐は、大量発生時はパパも向かうけれど、数匹程度であれば、ルシアンや黒騎士団だけで対処することになっている。


 ルシアンがパパに報告しているのを聞いていたリディは、ルシアンの腕の服が少し赤く染まっていることに気づいた。


「お兄様! 怪我してる!」

「うん? ……ああ、これ? 魔獣が岩にぶつかった時に、飛んできた岩の破片で切ったんだ。大したことないよ」

「大したことあるよ!」


 血が滲んでいるということは、結構深く切ったのではないだろうか。

 リディは慌ててルシアンの傍に寄り、光の魔法で癒しの力を使った。リディの青目が金色に光り、癒しの力に集中している手が淡く光る。そして、目と手が光らなくなると、ルシアンに顔を向けた。


「お兄様、傷はどう?」

「……お、治ってる。ありがとう、リディ」

「どういたしまして」


 ニカっと笑うルシアンに、リディはホッとして笑みを向けた。パパの弟とはいえ、ラヴァルディの血筋でないルシアンは、癒しの力に効果があるのでよかった。


 パパが「ほう」と呟きながら、口を開いた。


「リディは、光の魔法も使えるのか」

「うん。でもね、私が使えるのは、癒しの力だけなんだよ」


 リディは再びパパの隣に座る。


 ――リンッ


 光の妖精ララが現れ、リディの頬に頬を付けた。


「ララと契約しているから癒しの力だけは使えるけれど、本来なら、もっと色々魔法が使えるはずなんだって」

『本来ならね。でも、リディは私との繋がりが弱いから、これからもリディが使えるのは、癒しの力だけだと思うわ。ラヴァルディの血の方が強いみたいだから、仕方ないわね』

「リディが癒しの力が使えるのは、癒しの力が弱い魔力で使えるという意味か?」

『いいえ。リディは魔力自体は多いもの。なんというか、そのう……相性の問題というか』


 ――ポンッ


 なぜか効果音付きで、悪魔ヴァルバスが現れた。


『要するに、リディには光の魔法の才能がないってことだろ』

『何てこと言うのよ、この馬鹿悪魔! リディの癒しの力は、すっごいんだからね! 同じ要領で、リディは聖水だって作れるんだから!』

『せ、聖水~!? 俺サマをタダレさせる気か!?』


 あはは。リディは可愛い幼児同士の会話に苦笑いした。そうなのだ。ララは庇ってくれているが、要するに、リディには光の魔法の才能がない。ララと契約しているのに、なんという残念なリディ。


「……聖水も作れるのか」

「うん、パパ。ヴァルバスは聖水に触れると、タダレちゃうの?」

「聖水の効力による。下級程度の聖水なら死にはしないが、火傷したようになるかもな」

「……」


 ヴァルバスにとっては聖水は凶器なのだと、リディは少し青くなった。そして、パパが「聖水」と言った時の少し低くなった声音が気になる。


 リディには、回帰していること以外にも、パパに言えていないことがある。できれば、一生言いたくない。だから、その記憶を無理やり外に追い出した。少し話題を逸らす。


「私は癒しの力だけしか使えないけど、ララは他にもできる魔法があるんだよね!」

『えっへん!』

「ほう。何ができる?」

「ララは光るんだ!」


 ララがピカッと光った。


「眩しっ」


 ルシアンとブリスが目を細めた。


「ララは私の色を変えられる!」


 ララが光るのを止めると、今度はリディの髪の色を変えた。


「あれ? リディの髪の色が金髪みたいな色になった」

「お兄様の髪色に似てるでしょ!」

「……色を変えている、というより、髪に光の膜を張っているな?」


 リディとララはしゅんとした。


「……どうして分かるの、パパ。分かりやすい?」

「いや。魔法だと分かるかということなら、分からない。リディが説明してから、髪色が変わったから、その仕組みを考えたというだけだ」

「さすが、パパ。髪色ね、変えられると変装できるんだ。逃げる時とか、使えるんだよ」

「……逃げる時にね」

「……?」


 なんだろう? パパがリディを見て、考え込んでいる。


「リディと光の妖精が光の魔法を使えるのは分かったが、普段は人前で使ってはダメだ。分かるな?」

「うん」

「どうしても使う必要がある場合でも、できるだけ分からないように魔法は使うこと。光の妖精も分かったな?」

『ふんっ! 分かっているわ!』


 ラヴァルディの後継者が光の魔法が使える、というのは、知る人が少ないほうがいいのだ。

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