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ブリスが私たちの会話を聞きながら、使用人にお茶を用意してもらっていた。リディにはプリン付き。わーい、お菓子まで用意してくれるブリス大好き。
「光の魔法の話が出ましたし、ついでですから、リディに魔獣討伐についても話をしておきましょうか、兄上」
「そうだな」
リディはプリンを口に入れながら、ブリスの話を聞いた。
「帝国は、皇帝の一族を筆頭に、ラヴァルディ公爵家とベルリエ公爵家に権力が集中していますが、リディはなぜか分かりますか」
「えっと……魔力が強くて、魔獣を討伐できるから?」
「その通りです」
竜人族の末裔である皇帝の一族、闇の魔法が使えるラヴァルディ公爵家、光の魔法が使えるベルリエ公爵家は、他の人たちより魔獣を討伐するのに犠牲が必要ではない。
「大昔、まだ帝国もなかった頃は、魔獣が我が物顔で地上を跋扈し、人々は逃げまとうばかりでした。しかし、皇帝、ラヴァルディ、ベルリエの先祖が、それぞれ魔獣を倒すようになり、まともな世界が作られ始めました。そして、帝国ができ、やっと秩序ある世界になりました」
リディは相槌をした。
「それから時が経ち、今は魔獣討伐といえば、専門的に行っているのはラヴァルディ公爵家だけです」
「ラヴァルディ領が、東北の魔窟の大地だから?」
「帝都では、ラヴァルディ領をそのように言いますね。間違ってはいませんが」
魔獣は地下世界からやってくる。地上の空間に、突如現れる穴からやってくる。穴は地下世界に通じる穴だ。なぜ穴ができるのかは分かっていない。しかし、突如穴が現れて、魔獣が飛び出してくるのだ。
穴は一定期間開き、また閉じる。穴は天気と一緒なのだ。雷や嵐といった、自然現象の一種なのである。
その穴は、帝国の東北に現れやすい。ほとんどの穴は東北に現れるのだ。割合的には、帝国に現れる穴の八割は東北に現れると言われる。
「帝国ができてから、ラヴァルディ公爵家が東北の地を任されることが決まりました。なので、魔獣討伐を専門的にやっているのは、ラヴァルディ公爵家だけなのです。他の地に現れる魔獣の討伐は、ベルリエ公爵家、もしくは、魔獣討伐専門ギルド、もしくは、その地担当の帝国騎士が討伐する場合がほとんどです」
リディは、過去の回帰で、一般的な騎士が、魔獣討伐に苦戦しているのを見たことがあった。
「東北の地はラヴァルディ公爵家が魔獣討伐しますが、リディは何度か魔獣討伐についてきて見ていますよね。どうでしたか?」
「パパ、かっこいい!」
「そうですね」
「パパ、強い!」
「そのとおりです。では、他の騎士はどうでした?」
「黒騎士団も強い! ブリスもお兄様もかっこいい!」
「ありがとうございます。では、兄上のようにラヴァルディの血筋ではない私たちが、なぜ魔獣を倒せると思いますか?」
「え?」
なんで? そういえば、確かにそうだ。みんな魔獣をばりばり倒していて、魔獣って実は強くないのでは、と勘違いしそうになるほど、みんな強かった。でも、過去の回帰の記憶では、普通の騎士は、一匹の魔獣を倒すのさえ、苦戦していたのに。
「えっと……みんな、頑張ったから?」
「ふふふ、そうですね。みんな頑張っています。ただ、それだけではないのです。こういうのが使えるのですよ」
ブリスはブリスの双剣を取り出した。そしてブリスは双剣に黒い光のようなものを纏わせた。
「……闇の魔法?」
「そのとおりです。このように、闇の魔法を使えば、魔獣は倒しやすくなります」
あれ? 闇の魔法はラヴァルディの血筋だけが使えるのではなかった?
ブリスは双剣に纏わせていた闇の魔法を取り払い、双剣を元に戻した。
「闇の魔法は、先天的な使い手と後天的な使い手がいます。兄上やリディが先天的、私やルシアン、黒騎士団の騎士なんかは、後天的です」
「……黒魔術?」
「違いますよ。黒魔術は違法ですからね、リディ」
「うん」
そう、黒魔術は違法だ。なぜかといえば、黒魔術を使うには、多大なる犠牲が必要だからである。黒魔術と闇の魔法は根本的に違うのだ。
「ラヴァルディ公爵家の直系血筋は、悪魔と契約しています。リディはヴァルバスしか契約悪魔を知らないと思いますが、他にも契約している悪魔もいます。それは血自体で行っている上に、契約自体は、契約違反などが発生しない制約のない契約です。なので、魔力がありさえすれば、ラヴァルディの血筋は、闇の魔法は使い放題です。もちろん、練習は必要ですが」
リディは頷いた。リディも少しずつ、闇の魔法の練習をしているのだ。
「ラヴァルディの血筋以外で私たちのように闇の魔法が使えるものは、ラヴァルディの血筋に忠誠を誓い、ラヴァルディが服属させている悪魔と契約します。すると、使える魔法の種類は多くはありませんが、闇の魔法が使えるようになります。我々は、ラヴァルディの血筋とは違い、制約のある契約になりますので、契約違反すると何かしらの罰があります」
「ひえっ」
そういう場合の罰は、だいたいが死と決まっている。怖い。怖すぎる。
ブリスはくすっと笑った。
「リディが怖がる必要はありません。契約は違反さえしなければいいのですから、何も怖いことはないですよ。それよりも、魔獣を倒すことが重要ですし、私たちは闇の魔法を使えることを誇りに思っていますから」
リディもそれは感じていた。ブリスもルシアンも、他の黒騎士団の人たちも、みんな誇りをもって、魔獣を討伐している。
時々、東北の街中にも魔獣は現れる。パパたちが魔獣を討伐する姿を、見ている住民は多い。魔獣討伐が終わると、大歓声が起きることもある。住民たちは、魔獣が討伐されていることがどれだけすごいことなのか、みんな知っているのだ。パパたちのお陰だと、ちゃんと理解している。
リディは怖がりだから、魔獣も、闇の魔法も、まだまだ怖いと思ってしまうけれど、パパたちのように、誇りをもって魔獣討伐ができるようになりたい。
「私も闇の魔法の練習、頑張る! パパみたいに、強い闇の魔法使いになるからね!」
「リディなら、できますよ」
ブリスに頭を撫でられながら、改めてリディも頑張ろうと決心するのだった。




