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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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原始種族のご主人様

 サニヤとリアを人身御供にして自室に戻ったのは、午後8時過ぎだった。

 昴と夕食を食べてノンビリしていたら結構早く時間が過ぎてしまったようだ。

 午後に昴を迎えに行ってからずっと動かなかった人形が、自室に入るなりピョーンと腕の中から飛び降りた。


 「あてて、失敗失敗」


 飛び降りたものの、着地に失敗して顔面から床に落ちた人形が照れくさそうな声を出しながら起き上がる。


 「痛くないの?」


 あまりに見事な墜落ぶりに心配になって声をかけると、


 「大丈夫。痛覚は搭載してないから」


 と、何故か誇らしげに腰に手を当てて上半身を反らした。

 そういう問題でもないような気がするけれど、布と、恐らく中身は綿であろうその身体なら、落下の衝撃はそう多くはなかっただろう。硬い素材ではない分、衝撃には強そうだけれど代わりに良く燃えそうだ。

 火を使う時は、側に寄せないように注意しておこう。


 「昴ちゃんとお泊りにならなくて助かったよー」


 人形は、ソファーの上にチョコンと座る。

 僕としても、泊めるという選択肢はなかった。

 中身が成人男性だからね、とは口にしない。でも、恐らくある程度は察してくれているだろう。

 同じ男同士だし?

 僕は、人形の対面になる位置に腰掛ける。


 「話には聞いていたけど、昴ちゃんの眷属化は困ったもんだね。あの人も余計なお節介するなあ」

 「あの人?」

 「昴ちゃんを眷属化したヤツだよ」


 人形は、物凄く面倒くさそうな声で言った。

 神様のやったことを余計なお節介と!

 まあ、正直な気持ちを言えば、僕も余計なことしやがってと思わないでもない。

 眷属化がなければ、今と違う状況になっていたはずだ。

 昴の記憶を消さずに残すことを選んだとしても、迷宮ダンジョンに連れて行くなんてことは絶対になかったはずだ。

 迷宮ダンジョンでは、絶対防御なのだから良いってだろうって風には思えない。

 昴は、日本の、普通のか弱い女子中学生なのだ。

 迷宮ダンジョンで行われることは、食べる為の狩猟であったとしても、子供が経験するようなことではないのだ。現代の日本社会では。

 そうしなければ生きていけないのなら、仕方がないと割り切れる。

 けれど、昴には必要ないはずだ。


 「まあ、吹雪君にやる気を出させる餌みたいなつもりだろうから、彼女と行く時は手頃な階層で遊んだらいいよ」

 「え?いいの?」


 てっきり、昴と最前線へ向かう必要があるものだと思っていたので肩透かしを食らったような気持ちになる。


 「大丈夫。350階層の仕掛けをした本人がそう言ってるんだから間違いないよ」


 サラリと爆弾を投下された。


 「え?」

 「俺が、350階層まで行って仕掛けをしたんだよ。流石に、昔の吹雪君にこちらに飛べるだけの肉体強度はなかったからね。だから、こちらでは『落ち人』として認識されてなかったでしょ?」

 「そうなんだ」


 次々に明らかになる事実を必死に心のメモ帳に記す。

 そういえば、昔、迷宮ダンジョンの最大到達階層の話になった時に、その人はもう亡くなっているみたいな話を聞いたことがあったな、と思い出した。

 この人形の製造主マスターのことだったのか。


 「製造主マスターさんって、異端ディザスターだったの?」


 ふと思いついた疑問を口にしてみる。


 「違うよ。んー、限りなく近いけど、異能ギフトの一種だね。ただ、血族的には、異端ディザスターが産まれる可能性は高いんじゃないかなー」


 人形からの答えに、シノハラさんとの血の繋がりの可能性を感じた。

 シノハラさんも、異端ディザスターに遺伝の可能性を考えていたし、その長男である暮さんだけれはあるが、実際に発現している。

 暮さんと、人形の製造者マスターの距離感からも、ただの知人というよりは、血族と考えた方が納得出来る部分が多い。


 「じゃあ、僕とも血縁関係があったりするの?」


 人形の製造者マスターが親戚の誰かであるのならば、色々と繋がっているのもわかる。

 けれど、それは否定された。


 「ないよー。それに、吹雪君のは、異端ディザスターに見えるけど、実際には違うから」

 「え?じゃあ、異能ギフトなの?」


 異能ギフトだと思うには、自分でも驚くくらい色々な属性の能力スキルが使えるし、シノハラさんも僕のことを異端ディザスターだと思っていたようなので、疑ったことがなかった。


 「んー、どう表現するべきか。吹雪君のは、原始魔法、とでも呼ぶべきかな?心当たりはあるでしょ?原始種族の『ご主人様』」


 原始魔法。

 初めて聞く言葉だった。

 元々、そんな言葉はないのかもしれない。

 人形の口ぶりだと、そう名付けてみたというところだろうか。

 それは、僕が原始種族の『ご主人様』だから?

 僕が、唖然としていると、人形は器用に首を傾けて、


 「その辺りは、良さんには言わない方がいいと思うよ?あと、原始種族のお嬢さんたちにもね」


 と、強い口調で言った。

 その理由はよくわからないけれど、今この話をしたのは、サニヤとリアが一緒にいないからなのだろう。

 人形は、やっぱり2人を、というか原始種族を警戒していたのか。

 良さんにも秘密なのはなぜなのだろう?

 異端ディザスターに似た強力な能力スキル分類があることは好ましくないのだろうか。

 微妙な表情をしていたからだろうか、人形から念押しのような怖い話を聞かされた。


 「原始魔法の方が、異端ディザスターより上位能力だからね、良さん経由でシノハラさんの耳に入ったら、ねえ?」


 シノハラさんに面白がられて興味方位にどこまでも振り回されている未来の自分の姿が簡単に想像することが出来た。

 いくら上位能力だとしても、使い方そのものの記憶がバッサリと削除されている現段階、シノハラさんに勝てるようになるまで、どれほどの時間を振り回されることになるのか。

 怖い。怖すぎる。


 「聞かなかったことにしとく」


 ゴクリと喉を鳴らして頷いた僕に、


 「うん。今はそれでいいんじゃないかな」


 と、人形は笑った。

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