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コミカル三国志(第一部)  作者: ダメ人間
第八章 狂狼の愛
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百七十六.吉兆は貴重である

 郿塢城の門前にて。

 董卓は貂蝉を呼び寄せ、彼女に自分が帝になることを話していた。


「貂蝉!よろこべ!わしは皇帝の座に就くことになった!これでそなたは貴妃(きひ)となる!わしと共に栄耀栄華(えいようえいが)を尽くそうぞ!!」


「まぁ!本当ですか!それは・・・嬉しい!!」


 董卓の話を聞いて、貂蝉は瞳を輝かせて返答した。

 そんな彼女の愛(う)いらしい姿を見て、彼はご満悦になった。その言葉、表情、動作、全てが偽りで彩られていとも知らずにだ。


「ぬははははは!喜んでくれて嬉しいぞ、貂蝉よ!今から宮中に赴き、帝の位に就いて来る!そなたはここでわしの帰りを待つが良い!!」


「は~い!行ってらっしゃいまし~~~!!」


 貂蝉はもう二度とここへは戻ってこないであろうことを察しつつ、郿塢城の門前にて董卓の出立を見送ったのであった。



 董卓は数千の兵に守られて郿塢城を出立した。

 その行列は目が眩むほど豪勢であり、数千の槍が放つ光は道行く者たち全てを威圧した。


(我が道に遮るモノは何もなし!)


 一点の曇りも見当たらぬ栄光の道を突き進んでいる現状に、董卓は大満足していた。

 ところが・・・


「うわっ!?」


 董卓は思わず声を上げた。

 董卓の乗っている馬車の車軸が折れたのだ。

 グラリと大きく揺さぶられ、彼は酷く狼狽した。


「ぬぬぬ・・・!折角良い気分に浸っておったというのに・・・!沿道の百姓どもが道の整備を怠っていたからじゃ!!見せしめに村長の首をちょん切れ!!!」


 兵たちに命令を下した後、彼は怒りながら馬車を降り、新たな馬車へと乗り換えた。


「まったく・・・気分を害するわ・・・。」


 董卓が不機嫌にブツブツと呟いていると今度は霧がかかってきた。


「なんじゃ!なんじゃ!今度は霧か!しかも風が強くなってきた!!一体どうなっとるんじゃ!!!」


 馬車は壊れて、天気も悪い。

 悪いことが2度続き、彼はまたしてもワーキャー!と叫び始めた。

 そんな彼をなだめるべく、偽の勅使を演じた李粛が言葉を発する。


「太師、落ち着いて下さい。これは吉兆です。ご安心めされい。(慌てろ慌てろ!ビビれビビれ!!)」


「吉兆だと?何を根拠にそんなことを抜かす!!」


「太師、アレをご覧下され。(さっさと見やがれ!このボケナスが!!)」


 そう言って李粛は太陽を指さした。

 彼が指さした太陽には、霧の影響により虹色の環(わ)がかかっていた。

 その美しい環を見た董卓は心を落ち着かせた。


「なるほど。確かにお主の言う通り、これは吉兆の知らせであるな。」


「左様です。それに先ほどの馬車の件ですが、あれは旧きを捨て、新しき時代に変わる吉兆の知らせにございます。(逆だよ!逆!あれは凶兆の知らせだよ!マヌケが!!)」


「うむ。明らかな解釈だ。」


 頭脳明晰な李粛の解釈を聞いた董卓は大きく頷き納得した。

 しかし、それと同時に警戒もした。


(吉兆の知らせとはいえ、どうも悪い知らせ方であるな。・・・用心せねば。)


 『二度あることは三度ある』


 その諺を思い出した董卓は、護衛兵たちに周囲の警戒を強めるよう指示を出した。

 それを見た李粛は、


「さすが太師。吉兆も警戒するとは、相変わらず抜け目のない人ですな。(無駄無駄!どう警戒してもテメェは死ぬんだよ!せいぜい悪あがきでもするんだな!!)」


とクスクスと笑い、場の緊張感を緩めた。


 そうこうしている内に、一行は長安の城外へとたどり着いた。


「やっと着いたな・・・むっ!? あの一群は何だ!!」


 城門へと近づこうとした董卓は声を荒げて叫んだ。

 城門の近くに無数の人影が見えたのだ。


 緊張が走る中、その一群から一騎が飛び出し、董卓の元へと近づいてきた。


「太師。私です。呂布です。太師をお迎えに上がりました。」


 一群より近づいてきた者は呂布であった。

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