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第三楽章 『雷鎚』
黒雲だけが城を裂き
濡れた石畳 火花を呑む
鉄の柄巻き軋むたび
掌だけが冬を知る
崩れた門を越える風
白旗さえ泥に沈む
振り返らぬ背の向こう
塔だけが月を抱いていた
誰の祈りも届かずに
雷は空を縫い続け
砕けた兜へ降る雨は
静かに血を洗ってゆく
天は蒼く裂けてゆく
銀の火花を散らしながら
振り上げたその一撃は
夜明けさえ拒み続ける
轟く空を背負う影
名も刻まれぬまま倒れ
白い花だけ胸に抱き
誰にも見送られはしない
折れた剣へ指を添え
遠い鐘の音を数えた
霞む視界のその先で
窓辺に灯が揺れていた
雷は一度だけ鳴り
雲は静かに裂けてゆく
握った柄から零れ落ちた
古い鍵だけ光っていた
その鍵を誰が拾い
誰の胸へ隠したのか
答えを知る者はもう
嵐の中にも残らない
天は蒼く裂けてゆく
砕けた雲を引き連れて
倒れ伏したその影へ
白い百合だけ降り積もる
遠く霞んだ森の奥
霧だけが静かに揺れた
誰かが袖を伸ばしたように
風だけが頬を撫でていた




