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第二楽章 『古戦場』
白芒だけが風を編み
崩れた石を撫てゆく
錆びた鐘楼 雲を抱き
鳥は誰にも歌わない
蔦に呑まれた玉座には
灰色の露が眠るだけ
砕けた窓へ射す月は
欠けた硝子を照らしていた
土へ沈んだ剣の柄を
名も知らぬ花が覆い尽くす
振り返るたび靴裏へと
遠い春だけ貼り付いた
風は何ひとつ語らない
石は誰ひとり裁かない
千年分の静寂だけが
城壁の影を伸ばしてゆく
白い百合は揺れたまま
朝露だけを飲み干して
忘れられたその名前を
今日も土へ埋めていた
崩れた橋を越えた先
古い井戸だけ息をする
覗き込めば水鏡へ
見知らぬ影が揺れていた
拾い上げた鉄の鍵は
掌よりなお冷たくて
開ける扉もないままに
旅人は空を仰いだ
遠く霞んだ森の向こう
白い霧だけ流れてゆく
誰かがそこにいるようで
風だけが袖を引いた
風は何ひとつ語らない
石は誰ひとり裁かない
朽ちた冠を抱いたまま
城は静かに眠り続ける
そして夜明け 井戸の底
一輪だけが揺れていた
それが祈りか 名残かは
誰にも分からないまま
風だけが袖を引いた




