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あたたかい食事-1
着ているスーツの衣装に皺がつかないように、両脇にいたスタッフを支えにして、スタイリストに丁寧にレースアップの革靴を履かされると、椿の気持ちがキュッと引き締まった。
椿が着れば、どんな衣装でも服の世界観が拡大する。
あるときは、ただのスタジオがヨーロッパの街角に。あるときは、遠い異国の山あいの村に変わるような。
そんな評価をされてきたが、ここ数年の椿は、カメラを向けられているとき以外は、視線を落とすようになった。
人と話しているときも、長い指で顔を隠すような仕草をして、無意識に他人との間に壁を作っていた。
だが、今日の椿は前を見て歩き、指定された位置に立った。
椿は無意識下で、今日の撮影は上手くいくと確信を得ていたのだ。
「(なんか今日楽しいな。少し肌が綺麗になったから?)」
昨夜起こったこと、渚から知らされた話、全てに現実味が無かったが、今はそれを考える時間ではない。
シャッターを切られる度に、椿は撮影に没入していった。




