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人魚の雫  作者: 麻婆豆子
女の闘い

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女の闘い- 4

「じゃあ、ロビーで待ってるから、何かあったら連絡してね」


 廊下でマネージャーと別れた葵は、控室に入り、目立ちにくい隅の席に座ると、静かに胸を撫で下ろした。



 葵は、梨花からの敵意をしっかりと感じ取っていた。


「(ちょっと怖かった。でも私、頑張りましたよ。椿さん)」


 


 それは昨日、葵が椿と食事をしたときのことだった。


 葵は椿に、急激に注目度が上がり、嬉しい反面、周りの自分への扱いが変わったことに、戸惑いや違和感を感じていると話した。


 椿は、口につけていたシャンパングラスをテーブルに置くと、スラリとした指を組んで、真っ直ぐに葵を見つめて微笑んだ。


「もしも自分に敵意を向ける人に会ったら、何も言わずに、ただ微笑んでみせればいい。

敵意を向けられるほど脅威であるんだと、自信に変えるんだ」



 その椿の姿に、葵はまるで作品を見ているかのようだと感じた。


 トップモデルの、静かな迫力を帯びた美しさに息を呑み、積み上げてきた経験の重みを感じ取り、納得した。




──

───



「次の方、移動してください」


オーディションのスタッフに呼ばれた葵は、席を立ち、審査員が待つ部屋に向かった。



「(強くなる近道は無い。今できることを、一つ一つ積み重ねていくだけ)」





 控室から立ち去る葵の姿を、離れたところに座っていた梨花が横目で追いかけたが、無性に鼻についた。


「(何? あの〝自分は違います〟感)」



 梨花はバッグの中から飲み物を取るふりをして、こっそりとスマホの画面を触った。




.

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