表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/40

下僕は増えるよ、どこまでも

「ギャオオオ……」


キング・ベアの巨体が、ズシンと音を立てて地に伏した。

戦闘時間、わずか数十秒。

ベルンが脚の腱を切り裂いて体勢を崩させ、その隙にアリアが特大の『雷撃サンダーボルト』を脳天に叩き込むという、無慈悲な連携プレーの結果だった。


「ふぅ。お疲れ様、お兄様」

「アリア様もお見事でした! あのタイミングでの雷撃、痺れました!」


兄妹はお互いを讃え合う。

そしてアリアは、横たわる巨大な熊の死体に近づくと、小さな手をペタリと触れた。


「『収納インベントリ』」


次の瞬間、5メートルを超える巨体が、シュンッという音と共に跡形もなく消滅した。

アキラの知識によって解放された、容量無制限の『亜空間収納』スキルだ。本来なら高レベルの空間魔術師しか使えない代物だが、アリアにかかればこの通りだ。


「……消え、た……?」

「馬鹿な……マジックバッグだって、あんなデカいもんは入らねぇぞ……」


部屋の隅で腰を抜かしていた騎士二人が、震える声で呟く。

彼らの理解の範疇を、今日の出来事はあまりにも超えすぎていた。


アリアはクルリと振り返り、ニッコリと微笑んだ。

天使のような愛らしい笑顔。だが、今の彼らにとっては、死神の微笑みにしか見えなかっただろう。


「ねえ、騎士のおじ様たち」


アリアがトテトテと近づいていく。騎士たちは反射的にズルズルと後ずさる。


「き、今日のことは他言無用で頼む……! 俺たちは何も見てない! な!?」

「そ、そうだ! 坊ちゃんと嬢ちゃんは、入り口で遊んでただけだ!」


必死に記憶を改ざんしようとする騎士たちに、アリアは首を横に振った。


「ううん、違うの。そうじゃなくて」


アリアは彼らの目の前で屈み込み、その瞳を覗き込んだ。


「ねえ、強くなりたくない?」


「……は?」


唐突な問いかけに、騎士たちが固まる。


「あなたたち、弱すぎよ。公爵家の騎士なのに、あんな雑魚ウサギにビビって、私とお兄様を盾にするなんて」


グサリ、と痛いところを突かれ、騎士たちが押し黙る。


「でも、見込みはあるわ。最後まで逃げずに(腰を抜かしてだけど)ここにいたもの。だから、チャンスをあげる」


アリアの瞳が、怪しく輝いた。


「強くなりたいわよね? なりたいわよね?」


それは質問ではなく、強制だった。

拒否権などない。

この秘密を知ってしまった以上、「共犯者」になるか、あるいは――アリアの小さな手が、意味深に空を握りしめる。


「……な、なれますか? 俺たちみたいな、落ちこぼれの騎士でも……」


一人の騎士が、ゴクリと唾を飲み込んで尋ねた。

彼らとて、騎士になった当初は夢があったはずだ。だが、現実に打ちのめされ、腐っていた。

今日、目の前で見せつけられた圧倒的な「力」。

五歳児と十歳児に可能なら、自分たちにもあるいは、という淡い、しかし強烈な渇望が芽生えていた。


「なれるわ。私の言う通りにすれば、ね」


アリアは自信満々に頷いた。

脳内のデータベースには、『効率的な騎士育成プログラム(地獄編)』というメニューが表示されている。


「お兄様だって、二年前は弱かったもの。ね?」

「はい! アリア様のご指導のおかげで、僕は生まれ変わりました!」


ベルンが良い笑顔で親指を立てる。

その笑顔の裏に、どれほどの血と汗と涙があったのかは、今は語るまい。


騎士二人は顔を見合わせた。

そして、覚悟を決めたように、アリアの前で膝をつき、深く頭を下げた。


「お、お願いします……! 俺たちを、強くしてください!」

「一生ついていきます、アリア様!」


『ピロン♪ 配下を獲得しました』


脳内で軽快な音が鳴る。

アリアは満足げに頷いた。


「よろしい。名前は?」

「ガイルです!」

「ロイドです!」

「いい返事ね、ガイル、ロイド。今日からあなたたちは私の直属よ。まずは……そうね、帰りの馬車を走って追いかけるところから始めましょうか」


「「えっ」」


「体力作りは基本よ? さあ、帰りましょう」


アリアはスキップしながら出口へと向かう。

その後ろを、新たな下僕となった騎士たちが、顔面蒼白で追いかけていく。


こうして、アリアの「最強への道」に、便利な手駒(兼、遊び相手)が二つ加わったのだった。

下僕、一気に二人増員。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ