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横領司教の末路と、鎮火される炎の魔神

翌朝、アリア一行が教会を訪れると、入り口で騒ぎが起きた。


「メル! 昨日はどこに行っていた! お前の仕事は案内だけではないだろう、夜の奉仕はどうした!」


若い男(司教)が、メルを見つけるなり怒鳴りつけ、手を振り上げた。

メルが怯えて身を縮める。

その手が彼女の頬に届く寸前――


ドゴォッ!!


鈍い音が響き、司教の体がボールのように吹き飛んだ。

そのまま教会の石壁にめり込み、ピクリとも動かなくなる。


「……手が滑った」


ガイルが冷然と言い放ち、拳を振るった。

その目は完全に据わっている。


「こいつが例の司教か。……おい、そっちの爺さん。お前もグルか?」


ガイルが老司祭を睨む。

司祭は青くなりながらも、必死に首を振った。


「め、滅相もない! 私は先月赴任したばかりで……あまりにシスターたちの顔色が悪いので、待遇を改善したばかりですぞ!」

「改善?」

「うむ! 食事は一日三食、具沢山のスープと焼きたての白パン! 午後三時にはクッキーのおやつも出すように予算を計上したはずじゃ!」


それを聞いたメルが、ポカンと口を開けた。


「えっ? ……あの、私たちシスターは一日一食ですが……? 白パンもクッキーも、見たことすらありません……」

「な、なんじゃと!?」


司祭の顔が怒りで真っ赤になった。

彼は壁に埋まった司教を指差し、わなわなと震えた。


「あやつめ……! 私が渡した予算を全て着服しておったのか! 神に仕える身でありながら、なんと浅ましい!」


司祭は壁から司教を引きずり出すと、その襟首を掴んで引きずっていった。


「こやつは私が責任を持って処分(断罪)する! ……アリア様、お見苦しいところをお見せしました。ダンジョンにはお気をつけください……!メル!しっかり案内するのじゃぞ~!」


嵐のように去っていく司祭と、引きずられる司教を見送り、アリアは小さく頷いた。


「まあ、一件落着ですわね。メルさん、これからは美味しいご飯が食べられますわよ」

「は、はいっ! アリア様、ガイル様、ありがとうございます!」


メルが涙ぐんでガイルの手を握る。

ガイルは照れくさそうに鼻をこすった。


***


気を取り直して、ダンジョン攻略の再開だ。

『開かずの禁書庫』をさらに深く潜っていく。


「……様子が変わってきたな」


ディーンが呟く。

上層では綺麗な状態だった「本の魔物」たちが、下層に行くにつれ、黒く焼け焦げたものが増えてきたのだ。

ページが炭化し、炎を纏って襲いかかってくる。


「熱いですわね。本の管理状態が悪すぎますわ」


アリアは容赦なく『水球ウォーターボール』をぶつけ、消化してからインベントリへ回収していく。


そして最深部。

そこには、燃え盛る巨大な『赤のグリモワール』が鎮座しており、そのページから炎の魔神『イフリート』が召喚されていた。


「我ガ眠リヲ妨ゲ――」

「『絶対零度アブソリュート・ゼロ』」


イフリートが名乗りを上げる暇もなく、アリアの極大氷結魔法が炸裂した。

ボシュッ!

という間抜けな音と共に、炎の魔神は一瞬で鎮火され、ただの湯気となった。


「火気厳禁の図書館で暴れるなんて、言語道断ですわ」


アリアはプンプンしながら、ドロップアイテムを回収した。


『業火の魔石』

『赤の書(イフリート召喚書)』

『イフリートの卵』


「卵……? またペットが増えそうですわね」

「ペガサスと喧嘩しないといいけど……」


ディーンは苦笑しながら、また一つ増えたアリアの「戦利品」をバッグにしまった。

こうして、サハルト王国の「隠しダンジョン」も、アリアによって完全攻略(掃除)されたのであった。

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