表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
24/40

公爵家の変貌と、旅立ちの報告

サハルト王国への出発を控えたある日。

アリアは旅の報告をするため、実家の公爵邸を訪れていた。


「ただいま戻りました、お父様、お母様」


アリアが裏庭へと足を運ぶと、そこには貴族の屋敷とは思えない光景が広がっていた。

かつては美しく剪定された生垣や、色とりどりのバラが咲き誇っていた庭園。

今は――


「おい母さん! そのカボチャはまだ早いぞ! 葉の色をよく見るんだ!」

「あらあなた、こっちのニンジンは見事ですわよ! ペガちゃんも食べたそうにしていますわ!」


麦わら帽子を被り、首にタオルを巻いた公爵と夫人が、泥だらけになって畑作業に勤しんでいた。

その横を、白い翼を持つ巨大な馬――ペガサスが「ヒヒーン!」と嘶きながら走り回っている。あの日、リナの暴走で生まれ、アリアの拳骨で大人しくなった幻獣だ。今ではすっかり懐き、公爵家のマスコット兼害獣駆除係として働いている。


「……随分と板についてきましたわね」


アリアが声をかけると、夫妻はビクッと体を震わせ、直立不動になった。

くわとじょうろを持ったままの敬礼。シュール極まりない。


「あ、アリア! 帰っていたのか!」

「お帰りなさいアリアちゃん! ど、どうかしら今日の収穫は!?」


夫妻の目には、娘への愛情というより、教官に対する怯えと承認欲求が見え隠れしていた。

彼らがこうなったのは、ベルンの「田舎に隠居するなら、自給自足くらいできなきゃ野垂れ死にますよ」という、もっともらしい(しかしスパルタな)提案から始まった。

最初は泣きながら土をいじっていた二人だが、作物が実る喜びと、体を動かす爽快感に目覚め、今ではこの通りだ。


「ええ、立派なニンジンですわ。これなら市場に出しても恥ずかしくありません」


アリアが鑑定眼で品質をチェックし、合格点を出す。

夫妻は「やった……!」「アリアに褒められた……!」と手を取り合って喜んだ。

かつてアリアを「出来損ない」と呼んでいた二人とは思えない変貌ぶりだ。


「ところで、お話がありますの」

「な、なんだろうか? もしや、また新しいトレーニングメニューか……?」


公爵が戦々恐々とする。

前回、「足腰が弱い」と言われてスクワット1000回を課せられた悪夢が蘇る。


「いいえ。夏休みの間、ディーン様と共にサハルト王国へ行ってまいります」

「サハルト……? あの過酷な?」

「ええ。少し用事がありまして」


アリアはニッコリと笑った。

その笑顔の意味(秘宝強奪)を察することはできないが、少なくとも自分たちへの新たな課題ではないことに、夫妻は安堵のため息をついた。


「そ、そうか! 気をつけて行ってきなさい!」

「お土産は乾燥に強い作物の種がいいわね!」


「承知しました。……あ、それと。留守の間、ペガちゃんの散歩(飛行訓練)もお願いしますね。一日最低50キロは飛ばないと運動不足になりますから」


「ご、50キロ……!?」

「ベルンお兄様にも伝えておきますので。サボったら……わかりますよね?」


アリアが視線だけで庭の巨岩(ベルンが素手で砕いた残骸)を示すと、夫妻は高速で首を縦に振った。


「は、はい! 任せておけ!」

「ペガちゃんと一緒に空を飛びますわ!」


「よろしい。では、行ってまいります」


アリアは優雅にカーテシーをし、踵を返した。

背後から聞こえる「急いで準備だ!」「ペガちゃんの鞍を持ってきて!」という元気な声をBGMに、アリアはいよいよ冒険への準備を進めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ