最強令嬢と、完璧な執事(婚約者)
リナによる一連の騒動から数日後。
王城の応接室にて、事後処理の話し合いが行われていた。
「……というわけで、リナ嬢については、魔力を封じる腕輪を装着の上、教会北部の修道院にて厳重に管理することとする。これで良いだろうか、アリア嬢」
国王が疲れた顔で確認を求める。
アリアは優雅に頷いた。
「ええ。被害を受けたのはディーン様と王家の威信ですもの。陛下のご判断にお任せいたしますわ(私に関わらない場所ならどこでもいいです)」
本音は括弧の中にあるが、表向きは従順な令嬢を演じる。
要は、もう興味がないのだ。リナという「経験値にもならない障害」には。
「それで、アリア嬢。今回の功績に対し、教会側から謝罪と賠償の申し出があるのだが……」
「あら。では、以前からお願いしておりました件を」
アリアの瞳がキラリと光った。
待ってましたとばかりに、アリアは一枚の羊皮紙を取り出す。
「教会が管理する世界各地の『聖域ダンジョン』への通行許可証。および、中央大聖堂の地下書庫――禁書エリアを含む――への無制限の閲覧権限。これをいただけますか?」
「……それだけでいいのか?」
「ええ。知識と経験こそが、私にとって何よりの宝ですから」
国王は安堵のため息をついた。
領地や金銭を要求されるより余程マシだと思ったのだろう。
だが彼は知らない。
その「聖域ダンジョン」には、まだ見ぬ古代魔法や伝説級の装備が眠っており、「禁書」には世界を揺るがす真実や禁断の術式が記されていることを。
アリアにとっては、国家予算をも上回る価値があるのだ。
(ふふっ……これでまたレベルが上がるわ。新しい魔法も覚え放題……!)
アリアが内心でほくそ笑んでいると、甘い香りが鼻をくすぐった。
「アリア、どうぞ。アッサムのセカンドフラッシュだ。温度も完璧にしてある」
隣に控えていたディーンが、流れるような所作でティーカップを差し出した。
その手つきは洗練されており、王宮の筆頭メイドですら裸足で逃げ出すレベルだ。
「ありがとう、ディーン様。……うん、美味しいわ」
「よかった。昨日の練習の成果が出たよ」
ディーンは嬉しそうに微笑む。
かつてはアリアに怯え、震えていたヘタレ皇太子はもういない。
数々の修羅場(アリアとの特訓)を潜り抜け、精神的にも技術的にも成長した彼は、今やアリアの最高のサポーターとなっていた。
もっとも、その関係性は「婚約者」というより、「有能な執事」に近い気もするが。
「さて、ディーン様。このお茶を飲み終えたら、早速教会の書庫に行きましょうか。荷物持ちをお願いできます?」
「ああ、もちろん。……また新しい魔法を試す実験台が必要かい?」
「ふふ、察しがいいですね。でも大丈夫、今回は『回復魔法』の実験ですから。痛くはないはずですよ(多分)」
「はは……お手柔らかに頼むよ」
ディーンは苦笑しながらも、その目には確かな信頼と、諦めにも似た愛情が宿っていた。
アリアの手首には、あの日贈ったブレスレットが輝いている。
それだけで、彼はどんな地獄でもついていく覚悟ができていた。
窓の外には、どこまでも広がる青空。
一度目の人生とは違う、鮮やかで刺激的な未来が待っている。
「さあ、行きましょう。世界はまだ、知らないことで溢れていますわ」
学園編と言うより、アリアが悪役令嬢でリナが主人公、ディーンやカイル、ベルンが攻略対象のゲームが終わった感じです。これからは同じ世界線が舞台の違うゲームに乱入します。アリアがこの国だけで満足するはずがないのです。閑話を挟んで、続きもよろしくお願いします!




