五十八話
もちろん、そのようなやりとりを行っているのは、ほんの一握りだ。
大方は、鬼獣群と死にもの狂いで闘っている。
砲弾弾雨の中を鬼獣群は、奇声を発しながらしつこく繰り返し、100、
1,000体(匹?)と単位で猛烈な勢いで襲いかかる。
しかし、それに続くものは、防衛軍側の想像を絶する事になった。
「おいっ!?あれなんだよっ」
H&K MP5をぶっ放していた17地区の男性住民が、何かに気づいて叫ぶ。
「何だ!!」
その隣で、M16自動小銃をぶっ放していた17地区の男性住民が尋ねる。
「あれを見ろよっ!」
H&K MP5をぶっ放していた17地区の男性住民が指を指す。
その先には、頭上の空気を引き裂いて飛来した砲弾が落下し、轟音と共に火柱を
上げていた。
その火柱の中を鬼獣群は、密集し、三列、四列、五列の横隊で突っ込んでくる。
しかし、その鬼獣群の種類は、誰も彼も見たこともない種類だった。
その鬼獣は、目視だけで判断すれば、約4メートル級の身長で、暗褐色の肌を
硬い鱗で覆った強靱な巨体を誇っていた。
その身長は、大型鬼獣「デバステーター」と匹敵する。
手には打撃武器の棍棒やハンマーを持ち武装しているが、ただ、巨体のためか
若干動きが遅い様であった。
問題は、その鬼獣が1000体(匹?)以上いることだ。
「おい、嘘だろ・・・・新種の鬼獣じゃねぇか・・・・」
その光景を見た住民達は、ほぼそう思いながら唖然として、大地を踏みならして
接近する新種の鬼獣を眺めた。
重火器で武装している住民も日本決死隊の隊員も、恐怖で心臓を早鐘の様に
慣らした。
誰がこれに耐えられるのか・・・・
「撃て撃て撃てーーーーーーーっ!! 奴らを殺らなきゃ俺達が殺られるぞっ!」
誰かが叫び、それと同時に全ての重火器類が吠えたて始めた。
無数のRPG7のロケットや、猛烈な砲撃を浴びせる。
それでも新種の鬼獣は、雄叫びを発しながら肉迫してくる。
崩れ落ちた鬼獣の死骸を踏み越えながらだ。
肉迫を許した場所では、新種の鬼獣により、棍棒やハンマーで叩きつけられ、
悲鳴と絶叫が上がり、この世の地獄が出来上がっていた。
しかし、それでも誰も避難する者はおらず、犠牲を払いながらも死守を続ける。
その血みどろの闘いを繰り広げている中には、オートバイ、自転車、自動車に乗り込んでいる住民の姿があった。
この場所から逃げ出そうしている様子はない。
オートバイ、自転車、自動車を良く見れば大量の爆発物を設置されているのが
見える。
その住民がこれから行うのは、「グランド・ゼロ」以前の中東などで
行われていた自爆攻撃だ。
彼らは、誰かに強制されたわけでも命令された様子もない。
いや、むしろその行為を止めようとしている住民達の姿もある。
車などに乗り込んだ住民の表情は、鬼の様な形相だ。
そんな彼らの状態を、この世界の人間は『英雄症候群』と称している。




