五十七話
中型鬼獣「イントゥルーダー」、従来型鬼獣「ソルジャー」、猟犬型鬼獣
「インベイダー」で占められている鬼獣群は、何が何でも人間を蹂躙するためか、
耳障りな奇声を発しながら、防衛陣へと肉迫を繰り返す。
防衛陣まで約400メートルまで接近した時、無数の榴弾が鬼獣群の頭上に降り
注ぐ。
さらに続いて、迫撃砲やロケット砲が鬼獣群に飛んでいく。
至近距離で、鬼獣群に榴弾やロケット砲が炸裂し、その突撃を粉砕をする。
しかし、それでも鬼獣群は後から後から湧き水如く現れては進撃を止めない。
他地区住民と十七地区の住民、日本決死隊の隊員、死社会人部隊の隊員は、
憎悪を滾らせながら、手に持つ重火器をぶっ放す。
一部の所では、白兵戦(?)が始まり、手榴弾、拳銃、銃剣、スコップ、
打撃武器、斬撃武器で渡り合う。
鬼獣と人間が入り乱れ始めたが、それでもお構いなく味方の砲撃が次々と飛来
してくる。
そんな修羅場な場所でも、マイペースな者達はいた。
「どうもー、喫茶店「しゅれねこ」ですっ!!ご注文の商品お届けにきましたっ!」
ヘルメットを頭に被った女性ウェイトレスが周囲を警戒しながら、出前の商品を
手渡す。
ちなみに、商品を届けにきた女性ウェイトレスは、喫茶店「しゅれねこ」で雇用されている網田めいという女性店員だ。
また、服装も迷彩服ではなく、喫茶店の制服を着込んでいる。
そして右肩からは肩からホルスターを吊っている。
「戦闘がいつもこんなんなら、楽なんだけどなぁ・・・これ代金」
他地区の男性住民が、携帯でメールを送っている同じ他地区の男性住民に
告げながら、代金を払って商品を受け取る。
その商品は、喫茶店「しゅれねこ」の大盛り肉丼だ。
肉、肉、脂、そして肉・・・白いご飯が見えないほどのぎっしりとした丼だ。
「まぁ、なんとかなるんじゃね? その丼食い終わる頃には終わるだろ」
携帯でメールを送っている同じ他地区の男性住民が応える。
「丼は、指定の場所に置いておいてくださいっ、回収しますのでーーーっ!!」
網田めいは、代金を受け取ると脱兎の如く立ち去っていく。
ーーーその途中、一体(匹?)の猟犬型鬼獣「インベイダー」が、網田めいに
向かって、襲いかかろうとした。
網田めいは素早くホルスターから銃を抜く。
ホルスターから抜かれた銃は、回転式拳銃S&W M2。
ある映画作品シリーズの主人公、ハリー・キャラハンも使っている愛銃だ。
網田めいは、撃鉄を起こして引き金を絞る。
S&W M2は、轟音を発し、弾丸はそのまま猟犬型鬼獣「インベイダー」を
貫いた。
さらに、手早く三回引き金を絞り、猟犬型鬼獣「インベイダー」が動かなく
なったのを確認すると、網田めいは何事もなかった様に立ち去っていく。
「忙しいウェイトレスだな」
その光景を見ながら、そう告げて注文品の丼を食べ始める。
「しっかし、よくまぁ、こんな忙しい時に飯なんて食えるな、尊敬するぜ」
携帯でメールを送っている同じ他地区の男性住民が告げる。
「お前こそ、こんな忙しい時に彼女に携帯メール送れるなぁ・・・・、というか、さ、お前、本当にお前の彼女・・・十四歳なのか? 犯罪だろ」
肉丼を食べている他地区の男性住民がそう尋ねる。
「惚れた彼女が、年齢が十四歳だっただけだ。それと、先日彼女の両親に土下座
しながら、「手塩にかけて育てた娘さんと結婚させてくださいっ」って
言ったし」
携帯でメールを送っている同じ他地区の男性住民が応えた。
「・・・・お前、今年で25だろ? お前の所のご両親と、向こうのご両親は
どう思っているんだよ・・・」
注文品の丼を食べながら、若干あきれた様な声で尋ねる。
「なんか、ぎゃーぎゃー言われたけどな。あ、そうそう、その土下座の許しを
したのは、ほら、お前が紹介してくれたレストランだよ」
携帯でメールを送っている同じ他地区の男性住民が告げる。
「ちょっ!? お前正気か!! 結構客も入っている、あのレストランで土下座
したのかよっ!」
注文品の丼を食べていた地区の男性住民が、驚きながら食事を中断する。
「惚れた女と結婚するためなら、俺は土下座でも何でもするぜ? 相手のご両親も
俺の両親も、俺の熱意が伝わって許してくれたぞ。」
携帯でメールを送っている同じ他地区の男性住民が、何処か貌を緩めながら
応える。
「・・・・それ違うと思うぞ・・・お前の尋常ではない迫力で大衆の面前で土下座
されたら、誰だって拒めないって」
注文品の丼を食べていた地区の男性住民が、どん引きしながら告げる。
「そうか?俺はひたすら土下座しながら、「お願いしますっ、お願いしますっ
結婚させてくださいっ、俺はあなた方の娘さんとどうしても結婚したいんですっ!!」って、涙流したくらいだぞ」
携帯でメールを送っている同じ他地区の男性住民が、短く応える。
「・・・マジで結婚するんだったら、三年ぐらい待てよ」
注文品の丼を食べていた地区の男性住民が溜息混じりに告げる。
「彼女と出会いは、彼女が12才の時だった。もう、それから二年だぞ。
これ以上俺は待てないから、この戦闘が終わったら結婚式する事に決めた」
携帯でメールを送っている同じ他地区の男性住民が即答で応えた。
「おうっ、こっちだって待ってられねぇんだよっ!! お前らさぼってないで
銃を撃てよっ!!」
AK-47の弾倉を変えていた、他地区の男性住民が2人に向けて怒鳴り散らした。




