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二十七話

 


 尚文露店主が「聖剣」フラガラッハを取り出した同時間帯――――――、

 店番を頼まれていた彼は、発注商品を持ってきた輸送業者から渡された一枚の受け取り確認書にサインをしながら困惑していた。

「(何かおかしい)」

 露店内は慌ただしい雰囲気に包まれている事が、疑問に思っている事ではない。

 17地区で大規模な奪還戦が開始されるらしく、それらの商品を売り捌く準備の

 対応をしているのだ。

 その事については、彼も理解している。


 彼が疑問に思っているのは、紙に書かれている発注商品名と、トラックから降ろされている商品がまったく違っている事だ。

 トラックからは、屈強な体格の業者が、商品を次々と卸す。

「(これは何だ?)」

 彼は、そう思いながら、紙に書かれている商品名と卸されている商品を交互に

 見比べる。

 紙に書かれているのは「ちくわ」とその数が書かれているのだが、眼の前に卸されているのは、大量の軍事物資と漆黒色をした姿形が中世の甲冑を彷彿とさせる

 物体だ。

「(この物体・・・・何かSF映画とかで登場しそうな感じがする)」

 彼は、その物体を見ながら思った。




「そら、店長が発注したパワードスーツや。ようやっと、製造元から送って

 きよったか」

 後ろから、関西訛りの声が聞こえたので、彼は振り返った。

 そこには、眼鏡をかけた偉丈夫な男性店員が立っていた。

 偉丈夫な男性店員は、三年ほど前に、出張先のアフリカで鬼獣群と交戦した

おりに左眼を失明し、義眼を埋め込んでいるため、それを隠すために眼鏡をかけていた。また、同時に左足も負傷したため、歩くときは左足をひぎずっている。




「・・・・パワードスーツですか、重岡さん」

 彼はSF小説やそれに系統する映画などにしか登場しない名称を聞いたため、

 質問した。

 彼に声をかけてきたのは、尚文露店主もいちもく置く古株の男性店員で、

 重岡浩という店員であり、ここに雇われて戸惑っている彼を良く面倒をみている

 店員の1人だ。


「そら、鬼獣っての近接戦闘でも生き残れるために開発された装備品やで

 兄ちゃんは、初めてみるか?」

 重岡は、関西訛で尋ねてくる。

「ええ、まあ・・・、それとこの紙には「ちくわ」としか書いてないんですが」

 彼は、困惑した表情を浮かべながら紙を手渡す。

 受け取った重岡は、一瞥して苦笑を浮かべた。

「店長にも困ったもんやけど、毎度の事やから気にやる必要はないちうわけや。

 やけど、これに関しては具体的な商品名で発注すると、ちびっと問題があって

 だな・・・」

 重岡はそう言いながら、何か考える様な表情を浮かべる。

「何か問題があるんですか?」

 彼は、なんとなしに尋ねた。



「兄ちゃんが、ここでぇ働くむっちゃ前に、店長がそのまま商品の名を出して

 売り出した時、二日、三日経ってから日本国防軍や在日米軍から苦情が

 殺到したんや」

 重岡は苦々しい表情を浮かべながら応えた。

 彼は、それを聞いて聞かなきゃよかったと思いながら、ふっと上空に

 視線を向ける。

 上空では、V-22 オスプレイの大編隊が編隊を組んで飛翔していた。

「今、飛行しとるのは、民間機や、しかも他地区からの支援部隊や」

重岡が関西訛で告げる。

「えっ、あれ民間機なんですかっ!?」

 彼は驚きながら尋ねた。

「せや、機体に漫画・アニメ・ゲームに関連やる ロゴを模った貼り付けって

 塗装を行っとるから、間違いなく民間機や、国防軍や米軍機でぇはしやんからな」

 重岡は、編隊を眺めながら応えた




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