二十四話
――――無差別戦闘地域を隔絶している防壁は、見るからに頑丈な防壁だ。
一説によれば、一つの要塞のように頑丈に製造していると言われている。
しかし、それでも「グランド・ゼロ」以降、毎年数万から数十万匹(体?)の
鬼獣群が、世界各地域で設置されている防壁を突破し、防衛軍と死闘を繰り
広げている。
特に中型鬼獣「イントゥルーダー」、大型鬼獣「デバステーター」、変異種鬼獣「ハウンド」の侵略は、防衛軍全将兵を震え上がらせているのが現状だ。
そして、この場所も例外ではない。
――――無差別戦闘地域を隔絶している防壁が、日本国防軍により解除されて、
各戦区の増援住民、日本決死隊並び国防軍が進軍を開始してからまもなくして、
尚文露店主が悪い方に予想していた事が見事に大当たりした。
防壁の一定箇所に設置されている警報機が一斉鳴り響き、尚文露店主は、大方の
弾薬や銃器類の書類の確認作業の手を止めた。
この場にいない彼も一度聴いた警報音であり、彼の世界では「国民保護
サイレン」と呼ばれている警報音だ。
警報機の凄まじい音と共に、鬼獣の甲高い奇声と激しい雷鳴の様な銃撃音が響いてくる。
その場にいた住民達は、その警報機が鳴り響くと同時に一つの生き物であるかのような動きで戦闘態勢へと移行する。
手慣れた作業で重火器類の安全装置を外す者、のんびりと飲んでいたコーヒーを
一気に飲む者、携帯電話で知人に連絡する者・・・・たいした混乱も起こさず
誰も彼もがにそれぞれの持ち場に住民が向かって行く。
「まったく、嫌な予想ほどよく当たる」
尚文露店主はちくわを齧りながら小さく呟きながら、鬼の様な形相を浮かべながら移動していく住民達の姿を見送る。
しばらくその光景を眺めた尚文露店主は、ちくわを咀嚼しながら乗っかってきた輸送車両へと向かう。
輸送車両から出てきた時、尚文露店主の右手には黒い布に包まれた物体を手に
していた。
そして、いつの間に近づいていたのか、1人の男性店員が話しかけてきた。
「店長、どちらに行かれるのですか?」
そう静かに尋ねてくる。
「戦場だ」
尚文露店主は口元に笑みを浮かべながら、男性店員に見向きもせずに応える。
「・・・「情政省」が黙ってはいませんよ」
その男性店員が聞き慣れない名称を、さらに声を落として告げてくる。
「そう心配するな。若いの、現場の状況は任せられている。
それに俺は、鬼獣が好き勝手に暴れ回る光景には、どうしても我慢が出来ないんだ」
尚文露店主が静かに応える。
「しかし」
男性店員が怪訝な表情を浮かべながら、さらに何か言おうとする。
「それに、久しぶりにこの武器も使ってやらないとな。
こんな武器は、保管して愛でるモンじゃない。使ってこそ初めて価値がある
武器だ―――――、まぁ、俺もコレを使うのはツングースカ以来だよ」
尚文露店主は最後の方は、男性店員にも聞こえない様な声で告げる。
ちくわを口に銜え、黒い布を取り払いながらふっと、最後にこの剣を振るった
時の事を思い出した。
尚文露店主が最後に振るったのはーーーー
現 ロシア連邦クラスノヤルスク地方で、大型鬼獣「デバステーター」が
1,000体(匹?)が出現した時だった。
その多さに、尚文露店主は、今手に持っている武器の力を限定解除を行ったのだ。
そして、その性能は想像絶する威力があった。
半径約30-50kmにわたって森林が炎上し、約2,150平方キロメートルの範囲に
存在した樹木がなぎ倒した。
また、1,000キロメートル離れた家の窓ガラスも割れ、その爆発によって生じたキノコ雲は数百km離れた場所からも目撃された。
さらに、閃光はヨーロッパ西部にも届き、ロンドンでも真夜中に新聞を読めるほど明るかったと記録される事になった。
表向きは、隕石が大気中で爆発したと情報操作はされているが・・・。
尚文露店主は、姿を現した一本の全長120cmの十字剣を見ながら不敵な笑みを
浮かべている。
長剣にはルーン文字の様なものが記されてるが、剣そのものが使い古された様に汚れ、随所に罅が入っている。
綺麗であれば、見る者を魅了していたような十字剣だ。
話しかけてきた男性店員は、その剣を見て生唾を飲み込んでいる。
「―――――最後のご奉公だ。対鬼獣用武器最後の一本剣「聖剣」フラガラッハ。
魂に火を灯せ」
尚文露店主がそう静かに語り掛けた。




