十五話
尚文露店主が直接注文品を届けにきた事で、その場の17地区の住民に取っては、
戦闘での状況より、別の意味で悪い事だった。
その訳は、尚文露店主が商品を届けにくれば、サービスとしてカロリー計算は完璧だが味が潰滅的な軍事レーションがもれなく渡されるからだ。
極端な飢餓以外では、誰も口にはしたくない。
「(おい、言えよ、軍事レーションは要らないから持って帰れって!!)」
注文した商品と共に、まずい軍事レーションを渡された男性住民が小声で隣の
男性住民に告げる。
「(そっちこそ言えよ!! なんで俺が言わなきゃならないんだっ!?)」
12.7x99mm NATO弾を受け取った男性住民が、軍事レーションを手にしながら
告げてきた、男性住民に囁く様な声で応える。
2人ともかなり必死の表情だ。
「(いや、もう、ありがたくもらっておこうや・・・どうせ断ってもなんだかんだで渡されるだけだしな)」
2人の男性住民の言い争いに何処か冷めきった声で、まずい軍事レーションを
リュックに入れた男性住民が告げた。
「(お前、それ食えるのか? 特に渡されたのは糞まずい軍事レーションで、
ベスト二位に入る「「野良犬や野良猫も、大変申し訳なさそうに返してきた食物」と称される物だぞ・・・それ)」
12.7x99mm NATO弾を受け取った男性住民が囁く様に告げる。
「(お前ら、ちょっと状況を考えろよ、糞まずかろうがなかろうが、このままだと、冗談抜きで泥水啜るか、ベルトの革をしゃぶるくらいまでの飢餓を経験することになるぞ。俺はそんな眼に合うのは二度とごめんだ)」
三人目の男性住民が、眉間を顰めながら応える。
「(あー、そうか、お前はアラスカでそんな眼にあったとか言ってな)」
12.7x99mm NATO弾を受け取った男性住民が、何かを思い出すように告げた。
「(そうだよ、5万8000人の日本決死隊が鬼獣10万体(匹?)以上に
包囲された、あのアラスカの闘いで飢えを経験した)」
三人目の男性住民が、何かを思い出す様な表情で応えた。
三人目の男性住民が応えた様に、状況は好転する兆しは見えなかった。
突破した緊急増援部隊が、鬼獣群の猛反撃を受けているためだ。
緊急増援部隊は、出現した三万匹(体?)という数字の鬼獣群を撃退しているが、 後から後から続々と出現し六千人という死傷者を出していた。
現在第七波目の鬼獣群と交戦に入っていた。
緊急増援部隊は、主戦場で手榴弾、自動小銃、無反動砲、機関銃などで死闘を
繰り広げている。
「(そして女性から言われるんだな、「情けない、ここには男は私しかいないのですか!!」ってな・・・)」
まずい軍事レーションを渡された男性住民が、何とも言えない表情を浮かべながら 小声で応えて、手に持っているレーションに視線を移す。
「(いったい何時の鉄の女と、何処のフォークランド紛争と大日本帝国陸軍だよ・・・それを経験したお前もお前だけどな)」
12.7x99mm NATO弾を受け取った男性住民が、大げさに溜息を吐きながら告げる。
三人の男性住民は、尚文露店主の方に視線を向けたが、尚文露店主は鼻歌交じりにバイクを転がして立ち去って行く姿があるだけだった。




