【第五篇の主要な登場人物】
第五篇「乱世に広がる火」の終了時点における、主要な登場人物を紹介します。第五篇の内容を含みますので、物語を読み終えてからご覧ください。
『第五篇 乱世に広がる火』終了時点
第五篇に登場した主要人物をまとめます。
【中心人物】
◆ アレク・ハルトマン
本作の主人公。十七歳。前世は三十歳の日本人会社員・佐藤恒一。現在はマティアス・クレーマーを主君としている。
第四篇の論功行賞により、ベルグハーフェンに隣接する山間の小領地と兵百人を与えられた。領内には中心村であるアイヒェンタール村と複数の小集落、山林、牧草地、山道などがある。領民の暮らしを安定させながら、木炭、木材、鉄鉱石、蜂蜜などの産物をクレーマー商会の物流へ組み込もうとしている。
すべての領地経営を自分一人で行うのではなく、村長や役人へ水路、道、倉、冬支度などの仕事を任せ、朝に指示を出してからベルグハーフェンへ向かう生活を始めた。ベルグハーフェンでは火縄銃の製造、訓練、兵站、クレーマー商会の仕事を行い、領地へ戻った後に報告を受けている。
火縄銃については、第四篇で実戦を経験した十人を中核として、新たな兵を段階的に訓練した。完成した火縄銃だけを使わせるのではなく、木製の模擬銃によって装填、構え、号令、交代を覚えさせ、射手だけでなく火薬、弾、一発筒、火縄、修理道具を運ぶ支援兵も育てている。
第五篇後半では、レオンハルトとマティアスから預かった兵を合わせ、射手三百人と支援兵百人からなる火槍隊四百人をまとめた。戦場では射手を百人ずつ一班、二班、三班に分け、土塁、馬防柵、槍兵、弓兵、騎兵と組み合わせた交代射撃を指揮している。
シュヴァルツ伯軍との決戦では、三百挺による最初の四巡で千二百発を放ち、密集していた敵中央へ大きな損害を与えた。火縄銃だけで一万人を倒したのではないが、敵の前列を崩し、後続を詰まらせたことで、味方の槍兵と騎兵が突入できる状況を作った。
敵軍が崩れた後は、自らの直轄兵百人を率いて林を抜け、マティアスが予測した古い街道へ先回りした。三十人、三十人、四十人の三班に分かれ、先頭の六十挺でシュヴァルツ伯と護衛の騎馬を止めている。
アレクはシュヴァルツ伯へ繰り返し降伏を求め、一騎討ちの要求も拒否した。しかし、シュヴァルツ伯が降伏を装って槍と短剣で抵抗したため、自分と兵を守るために剣で討った。命令を捨てて決闘を行ったのではなく、生け捕りを試みた末の結果として、レオンハルトから命令違反ではないと認められている。
今回の戦功により、国王へ子爵叙爵を推挙されることになった。現在の領地に隣接する谷の入口、二つの村、街道沿いの宿場、古い関所、山林、牧草地も、王家の追認を受けるまで暫定的に管理する。
エリーゼとの文通も再開した。以前用意していた林檎の花の髪飾りを誕生日の贈り物として渡し、十七歳の誕生日には新たな首飾りを選んだ。戦が終わった後も、自分がシュヴァルツ伯を討ったことを隠さず、迷いを含めてエリーゼへ手紙で伝えている。
◆ マティアス・クレーマー
クレーマー商会を率いる商人であり、アレクが自ら選んだ現在の主君。第四篇の論功行賞により、クレーマー商会の本拠があるベルグハーフェンの領主となった。
ベルグハーフェンの領主となった後も商会を手放さず、人、金、物資、契約、倉、荷車、街道を結びつける力によって領地と軍を支えている。アレクの山間領についても、領民の税だけで火縄銃や火薬を負担させず、兵の日常生活と軍需品の費用を分けて考えている。
レオンハルトから火縄銃専門の大規模工場建設を命じられた際には、アレクやロルフが挙げた建設地、水源、材料、職人、住居、警備、火災、検査、輸送などの問題を、クレーマー商会全体の仕事として引き受けた。ベルグハーフェンで製造と組み立てを行い、アレクの山間領で試射、訓練、不具合の記録を行う流れを整えている。
火縄銃は一度に必要数を発注するのではなく、材料と人員を安定させるため、まとまった単位で製造する方式を採用した。ロルフ一人の技量だけに頼らず、部品ごとの分業、検査役の育成、完成品の最終確認を組み合わせ、製造数を増やしている。
アレクが十七歳の誕生日を迎えた際には、領内や火縄銃のことばかり考えて身なりを気にしていないことを指摘し、動きやすさと防御を両立させた鎧を贈った。この鎧は、後にシュヴァルツ伯との戦いでアレクの身を守っている。
シュヴァルツ伯との決戦前には、密書を送ってきた四人の若い領主が本当に協力する人物かを見極めるため、商人に姿を変えて敵領へ入った。四人と時間を分けて会い、彼らが何を望み、何を恐れているのかを確かめたうえで、すぐに公然と寝返らせず、敵軍内部から情報を送らせる策を立てている。
四人から得た情報と、商人として知っていた古い街道の位置を合わせ、シュヴァルツ伯が敗走時に使う退路を予測した。敵中央を火縄銃で崩し、四人に旗、騎兵、荷車を動かさせ、アレクの百人を古い街道へ先回りさせることで、シュヴァルツ伯と護衛を本隊から切り離した。
戦後、ヴィクトル、カスパル、ロベルト、エイドリアンの四人を臣下として受け入れた。四人の領地は取り上げず、日々の統治も本人たちへ任せる一方、外交、軍役、街道、兵站、税の基準を統括する。
四人の領地とベルグハーフェンを結ぶ街道、橋、渡し場、宿場などを管理する立場となったことで、レオンハルトから国王へ伯爵叙爵を推挙される。正式な叙爵と領有には王家の追認が必要だが、第五篇終了時点で、ベルグハーフェン一つを治める領主から、複数の領主と地域を束ねる存在へ進み始めている。
【レオンハルト陣営】
■ レオンハルト・フォン・グランヴァルト
グランヴァルト王国第一王弟。新しい武器や知識を、提案した者の身分だけで判断せず、実際に何ができるかを確かめて使う人物。
第四篇の戦後、兵站、物流、グリュン川大橋、倉、兵糧を支えた働きを評価し、マティアスをベルグハーフェンの領主として認めた。アレクがマティアスの配下であることを踏まえ、アレクへの領地と兵百人も、マティアスを通じて与える形にしている。
火縄銃の軍事的価値を認め、自軍で使うだけでなく、アルベルトへの販売や今後の戦を見据えて大規模工場の建設を命じた。ただ数を増やすのではなく、製造、品質、火薬、弾、訓練、修理まで含めて一つの戦力にすることを求めている。
シュヴァルツ伯との決戦では、約六千七百人を率いて約一万人の敵軍と戦った。左右を小川と林で狭めた地形へ敵を誘い、低い土塁、浅い溝、馬防柵、槍兵、弓兵、騎兵、三百挺の火縄銃を組み合わせて敵中央を崩している。
今回は王都軍の助力を受けずに勝利した。シュヴァルツ伯を討ち、四人の若い領主の帰順を受け入れたことで、王都におけるレオンハルトの政治的な力も大きく増すことになる。
戦後は、戦死者の家族や軍務へ戻れない重傷者への補償を、目立った武功への褒美より先に決めた。敵将を討った者だけでなく、土を掘った者、兵糧を運んだ者、命令を守った者、降伏した敵を殺さなかった者の働きも記録させている。
マティアスを伯爵、アレクを子爵へ叙するよう国王へ推挙した。さらに、火縄銃三千挺と射手三千人を将来の目標に定め、千五百人ずつ二つの火槍隊へ分ける構想を示している。射手を支える兵も千人規模で必要と認め、火縄銃だけではなく、補給と指揮を含めた大部隊を作ろうとしている。
■ ユリウス・フォン・カレンベルク
レオンハルト直属の家臣。真面目で冷静な人物であり、使者、書状、命令、軍議、記録を堅実に処理する。
第五篇では、火縄銃の製造数、アルベルトへの受け渡し、兵の配置、工兵の作業、戦場の連絡など、多くの実務を担当した。
シュヴァルツ伯との決戦では、単独の合図だけで部隊を動かす危険を避け、旗、角笛、使者を組み合わせた。アレクの直轄兵百人を正面から林へ移動させる際にも、決められた合図だけではなく、指名された使者が命令書を届ける方法を取っている。
戦後は敵味方の兵数、死傷者、捕虜、降伏した諸侯、火槍隊の戦果を記録した。シュヴァルツ伯本人であることを証明するため、遺体、印章、濃紫の本陣旗、命令書、護衛の証言も確認している。
論功行賞では、一般兵から指揮官までの働きを読み上げ、マティアスとアレクの戦功を王都へ送る書状へまとめた。レオンハルトの大胆な判断を、正式な命令と記録の形へ変える役割を担っている。
■ ギルベルト
第四篇まで、表向き「火槍兵長」と呼ばれていた人物。第五篇で火槍隊がアレクの直轄となった後、初めてギルベルトと名乗った。姓はまだ明かしていない。
第四篇の戦いを経験した十人を中核として、新たな兵へ火縄銃の扱いを教えた。射撃が上手いだけではなく、装填手順、火縄と火種の管理、号令の復唱、赤い布による合図、射撃後の安全確認を重視している。
兵が増えた後は、アレクが戦術と全体の配置を考え、ギルベルトが各班へ命令を伝える形で役割を分担した。三百人の射手と百人の支援兵をまとめ、一班、二班、三班による交代射撃を現場で指揮している。
決戦では、煙と銃声の中で兵の聞き違いや装填の遅れを止め、最初の四巡で千二百発を発射させた。一班百人が林へ移動した後も、二班と三班による交代射撃を続け、正面の戦列を維持している。
古い街道では、百人を三十人、三十人、四十人へ分け、シュヴァルツ伯を止める射撃と後続への警戒を両立させた。敵将を囲んだ後も降伏した護衛や敗走兵へ無用な発砲をさせず、アレクが一騎討ちを受けなかったことも証言している。
戦後は、成功だけでなく、不発、部品の破損、号令の聞き違い、装填棒を抜き忘れかけた事例まで記録した。その功績を認められ、レオンハルトから正式な火槍隊長に任じられる。将来はマティアス側に置かれる千五百人の火槍隊を率いる予定である。
【職人と火縄銃製造】
▲ ロルフ・ブレンナー
火縄銃の最初の試作品を組み上げた鍛冶職人。無愛想で実務的な性格で、成功した結果だけを見て満足せず、失敗した原因を次の製作へ残そうとする。
第四篇の戦いで不発となった二挺を調べ、点火孔、火皿、煤、湿気、装填、移動中の扱いなどを確認した。二挺が同じ原因で撃てなかったと決めつけず、断定できないことも記録として残している。
火縄銃の製造数が増える中で、ロルフ一人がすべての部品を作る方法は取っていない。複数の職人が担当部品を作り、基準に合うかを検査してから組み立てる。ロルフが休んだだけで工場全体が止まらないよう、部品ごとの検査を任せられる者の育成も始めている。
鉄筒については、安価に大量生産できるという理由だけで鋳造へ切り替えることを認めなかった。鋳巣、亀裂、厚みの偏りによって破裂する危険があるため、鉄筒は鍛造を基本とし、鋳造は小部品や補助的な工程から試している。
戦場から戻された火縄銃についても、ばね、掛け金、木台、点火孔などの不具合を調べ、次の製作へ反映させる。三千挺という大きな目標が示された後も、数だけを優先して危険な武器を兵へ渡すつもりはない。
【アルヴェイン大公国】
◆ アルベルト・ヴァレンシュタイン
アルヴェイン大公国を治める大公。アレクの恩人であり、以前の主君。アレクがマティアスを選んだ後も、敵対も絶縁もしていない。
第四篇で貸し出した従来型火槍と引き換えに、火縄銃の試作品一挺と、試作品に至るまでの開発記録を受け取った。第五篇では、その後の火縄銃購入と技術協力について、マティアス、アレクらと改めて話し合っている。
最初はマティアスから火縄銃三十挺を購入し、同時にアルヴェイン側でも将来の自力生産へ向けて職人と技術を育てる方針を選んだ。アルヴェイン側で作った数を記録して報告すること、第三者へ渡す場合は事前に知らせること、品質や安全に関する情報を共有することなどを条件としている。
アレクが小姓だった頃、早い段階でマティアスについていきたいと願い出た時のことも語った。アレクを簡単に手放したのではなく、自分のもとへ留めるより、アレク自身が選んだ相手のそばで多くの人や物事を結びつける方が、大きなものを生み出すと考えて送り出している。
火縄銃、マティアスやレオンハルトとの関係、アルヴェインにもたらされた利益を見て、あの時の判断が間違っていなかったと感じている。アレクが今後も、自分一人では作れない何かを人々の間へ運んでくることを期待している。
◆ エリーゼ・フォン・ヴァレンシュタイン
アルベルトの姪。アレクと文通を続け、時間をかけて信頼と好意を育てている少女。
第五篇では、アルベルトとの火縄銃会談に同行し、久しぶりにアレクと再会した。以前より身長が伸び、大人びた姿となっている。アレクから遅くなった誕生日の贈り物として、林檎の花をかたどった髪飾りを受け取った。
アレクの十七歳の誕生日には、戦場でも使える革の手袋を贈っている。アレクは戦いで壊さないため、その手袋を身につけずに大切に保管した。代わりにマティアスから贈られた鎧と別の革手袋を使い、無事に帰るという約束を守っている。
アレクからは、林檎の花の髪飾りに続く贈り物として首飾りを贈られた。二人は鎧と革手袋、髪飾りと首飾りを互いに見せながら再会を喜んだ。周囲から見れば親密な二人だが、本人たちは久しぶりに会えたことを素直に喜んでいる。
戦が終わった後も文通を続けている。アレクの領地で起きたことや、火縄銃以外の日々の暮らしを知ろうとし、自分の近況も手紙へ書いている。
アレクがシュヴァルツ伯を討ったことについても、英雄としての話だけではなく、本人が迷い続けていることを手紙で知らされる。二人の距離は以前より近づいているが、第五篇終了時点ではまだ婚約には至っていない。
【敵陣から帰順した四人】
● ヴィクトル・フォン・ドルンハイム
十八歳。シュヴァルツ伯側に属していた若い領主で、四人の中心となる人物。
父親は、火縄銃十挺が初めて実戦投入された戦いで、アレクの火槍隊による二度目の射撃を受けて死亡した。ヴィクトルは、父親を討った部隊を率いていたアレクを恨んでいる。
それでも、シュヴァルツ伯へ従い続ければ領民がさらに兵として動員され、領地が疲弊すると判断した。個人的な感情と領主としての責任を分け、幼い頃から親しい三人とともにマティアスへ密書を送っている。
決戦では敵中央に近い位置へ残り、シュヴァルツ伯の本陣旗が後方へ動いたことを、自家の旗を使ってマティアス側へ知らせた。
戦後は領地と領民を守ることを条件に、マティアスの臣下となった。最初の仕事として、領内の兵と城砦を確認し、シュヴァルツ伯の死を認めず抵抗を続けようとする家臣を調べる。
アレクと同じ主君のもとへ入ったが、父親を討たれた過去が消えたわけではない。第五篇終了時点では、互いに短い視線を交わすだけで、まだ本当の意味で仲間になったとは言えない関係にある。
● カスパル・フォン・ファルケナウ
十七歳。ヴィクトルたちと幼い頃から親しく、父親たちがシュヴァルツ伯へ従うことへ反対していた若い領主。
軍議へ出入りできる家臣を持ち、シュヴァルツ伯軍の作戦、兵数、配置、攻撃時刻などを調べた。得た情報は、そのまま軍事情報として送るのではなく、商人への商品注文書へ見せかけてマティアスへ伝えている。
四人がレオンハルト本人ではなくマティアスへ密書を送ったのも、商人との取引を装えば敵の監視を避けやすいと考えたためである。また、マティアスなら書状だけで信用せず、必ず人となりと事情を確かめると予想していた。
戦後はマティアスの臣下となり、シュヴァルツ伯側に残った諸侯の動向を調べる役目を与えられた。誰が降伏を望み、誰がまだ兵を集め、抵抗を続けようとしているのかを見極める。
● ロベルト・フォン・リンデンフェルス
十七歳。シュヴァルツ伯軍の後方に近い位置で、荷車、兵糧、軍資金、退路に関する情報を集めた若い領主。
シュヴァルツ伯が敗走を始めた際には、重要な荷を守るために移動させたように見せながら、荷車を古い街道へ向かわせた。これによって後続の兵や騎兵の進路を乱し、先頭を逃げるシュヴァルツ伯と護衛を本隊から切り離している。
戦後、四人を代表する形で、マティアスのもとへ仕えたい理由を説明した。マティアスが密書を受け取るだけでなく自ら会いに来て、四人の家族と領民を危険に晒さない方法を考えたことを評価している。
マティアスの臣下となった後は、ベルグハーフェンと四人の領地を結ぶ街道、橋、渡し場、倉、兵糧、借財、通行税を調べる仕事を任された。
● エイドリアン・フォン・モルゲンフェルト
十六歳。四人の中で最も若く、騎兵を率いている。
決戦では、シュヴァルツ伯の護衛へ合流しようとする騎兵を、レオンハルト側の騎兵を迎え撃つように見せかけて別の方向へ動かした。その結果、シュヴァルツ伯が退却を始めた時、そばに残った護衛は五人ほどとなった。
父親から、若い自分には領地のことは分からないと言われ続けてきた。そのため、分からないなら学ぶとマティアスへ言い切り、若さを理由に領主としての責任から逃げない姿勢を見せている。
一方で、行動力の強さが先走る危険もある。マティアスからは、若さを示すために自分だけが先頭へ出る必要はないと注意されている。
臣従後の最初の仕事は、騎兵を使った街道の巡回である。武器を捨てて故郷へ帰ろうとする敗走兵は帰し、村から食料を奪った者や盗賊となった者を捕らえる役目を担う。
【敵対勢力】
◇ シュヴァルツ伯
グランヴァルトの地方諸侯を集め、王都とレオンハルトへ対抗してきた有力者。中央へ権限が集まることへ反発する一方、自身の勢力を拡大しようとする野心も持っていた。旗の色は濃紫。
第四篇の戦いでは王都軍とレオンハルト軍に退けられたが、本人も主力も残していた。第五篇では再び諸侯から兵を集め、約一万人を率いて、約六千七百人のレオンハルト軍と戦った。
兵力では上回っていたが、小川と林に挟まれた狭い正面へ多くの兵を押し込む形となった。そこへ土塁と馬防柵の後ろから三百挺の火縄銃による交代射撃を受け、敵中央が大きく崩れる。さらにレオンハルト側の槍兵と騎兵が攻め込んだことで、軍全体が敗走した。
退却時には、領地へ戻るため最も早い古い街道を選んだ。だが、四人の若い領主が旗、騎兵、荷車を動かしたことで本隊と護衛が分断され、先頭を逃げたシュヴァルツ伯の周囲には五人ほどの騎兵しか残らなかった。
街道では、林を抜けて先回りしたアレクの百人に阻まれた。二度の射撃によって騎馬を失った後も降伏せず、アレクへ一騎討ちを要求したが拒否される。
その後、降伏するように見せかけて地面の槍を拾い、さらに短剣を抜いて抵抗したため、最後はアレクの剣に討たれた。
シュヴァルツ伯の死によって、彼を中心として続いてきた戦いは終結した。しかし、一万人の軍を破り、敵将を討ったことで、レオンハルト、マティアス、アレクを取り巻く王国内の力関係は大きく変わり始めている。
第五篇の登場人物紹介を読んでいただき、ありがとうございました。
領地と兵を得たアレクは、領主としての生活を始める一方、三百挺の火縄銃と四百人の火槍隊を率い、シュヴァルツ伯との戦いに決着をつけました。マティアスに臣従した四人の若い領主を含め、それぞれの立場と関係も大きく変化しています。
戦場から王都へ届いた勝利が、レオンハルト、マティアス、アレクの未来をどう動かすのか。第六篇「乱世を動かす火」もお楽しみいただければ幸いです。
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