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『知らない世界の知っている物語』 ~剣と知識を授かった平凡な会社員は、異世界の乱世を生き抜く~  作者: 相田 ソウ
第四篇 乱世に抗う力

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第十九話 一発をまとめる

アルベルトから、火縄銃の試作品と開発記録を受け取ったとの返書が届きます。火縄銃の秘密を知る者が増えたことを意識する中、アレクは再装填の遅さを解決するため、火薬と弾を一つにまとめる新たな装具を考えます。

十挺の試験に使った金を数え終えたのは、翌朝だった。

火薬と弾だけではない。

三台の荷車を動かし、山道と採石場へ見張りを置き、護衛と火槍兵へ食事を出した。

射撃場を整えた者たちにも、その間の仕事がある。

一日で使った金額を帳面の下へ書くと、火縄銃一挺を作る時とは違う種類の重さが残った。

「これで全部か」

マティアスは俺が差し出した帳面を見た。

「採石場へ残した見張りが戻った後の食事まで入れています」

「銃を掃除した時間は」

「ロルフさんたちの手間として、こちらに」

「火薬を一回分ずつ容器へ移した者は」

「兵の費用へ入れました」

「一度撃つために、何人を使った」

俺は帳面の別の頁を開いた。

十挺を持った射手が十人。

予備と、火薬、弾、火縄、道具を担当する者が九人。

火槍兵長。

火薬を扱う者。

見張り。

護衛。

荷車を動かす者。

俺とロルフもいる。

「銃を持ったのは十人です」

「聞いていない」

マティアスは帳面を指で叩いた。

「十挺を一度撃たせるために、何人を動かした」

数え直すと、十人では済まない。

火縄銃が一挺増えれば、銃を持つ兵を一人増やせばよいと思っていた。

実際には、火薬と弾を運ぶ者がいる。

火縄を管理する者がいる。

不発の銃を調べる者がいる。

銃を戦場まで運ぶ者も必要だ。

「戦で使うなら、さらに槍兵が必要です」

「弓兵も欲しいと言っていたな」

「はい」

「柵を作るなら木を切る者がいる。土を盛るなら、土を運ぶ者がいる」

「分かっています」

「では、十挺のために何人の口へ食わせる」

答えられなかった。

武器の値段だけを数えても、軍を動かす金にはならない。

「次の試験では、人を減らせる場所も探します」

「減らすために事故を増やすな」

「はい」

「一人が二つの仕事をできることと、二つの仕事を同時にできることは違う」

それも帳面へ書こうとした時、扉が叩かれた。

入ってきた兵が、封をされた一通の手紙を差し出す。

「アルヴェイン大公からです」

俺は立ち上がった。

封には見覚えがある。

アルベルトが使う印だった。

試作品を送り出してから、十挺を作るまでには日数がかかっている。

その間に荷車はアルヴェインへ着き、帰りの使者もここまで来られたらしい。

マティアスが手を伸ばした。

「開けろ」

「俺宛てです」

「なら、お前が開けろ」

封を切る。

最初に書かれていたのは、貸し出していた火槍が無事に戻ったことだった。

続いて、火縄銃の試作品一挺と、試作品に至るまでの開発記録を受け取ったこと。

火槍を貸し出す際に決めた条件は、これですべて果たされたこと。

そして、今後の開発、追加製作、完成品の購入、技術協力については、後日あらためて話し合いたいと書かれていた。

文面はアルベルトらしく簡潔だった。

試作品を送ったのは俺だ。

帳面を箱へ入れ、火槍と一緒に荷車へ載せた。

アルベルトが受け取ることも、最初から分かっていた。

それでも、受け取ったと書かれた文字を見ると、工房にしかなかった火縄銃が、別の土地にも存在するのだと実感させられた。

「何と書いてある」

俺は手紙をマティアスへ渡した。

マティアスは一度読み、机へ置く。

「約束どおりだな」

「はい」

「何か不満か」

「ありません」

火槍を借りなければ、従来の火槍と新しい火縄銃を同じ条件で比べることはできなかった。

試作品と記録を渡すことは、その対価として受け入れた。

アルベルトが何かを奪ったわけではない。

「ただ、向こうにも一挺あるんですね」

「お前が送った」

「分かっています」

「分かっている顔には見えん」

手紙を運んだ者がいる。

箱を受け取った者がいる。

保管場所へ運んだ者がいる。

開発記録を読む者も出るだろう。

アルベルトを疑う必要はない。

俺とアルベルトの関係も変わっていない。

だが、秘密を知る場所は一つから二つへ増えた。

「秘密ではなくなった、とは言いません」

俺は言った。

「でも、俺たちだけの秘密ではなくなりました」

「そうだ」

マティアスは手紙を返した。

「アルベルトを疑う必要はない。だが、秘密を知る人間が増えたことまで忘れるな」

「アルヴェイン側でも、作ろうとするでしょうか」

「試作品と記録を受け取った。調べるなとは言えん」

「はい」

「作れるかどうかは別の話だ。筒を作る職人、木台を削る職人、火縄を落とす金具を作る者、火薬と弾を揃える者がいる」

記録があっても、すぐ同じ物を作れるとは限らない。

俺たちも、最初の一挺から十挺へ増やすまでに何度も失敗した。

それでも、時間をかければ作れる者が出るかもしれない。

「レオンハルト殿下にも見せます」

「その前に返事を書け」

「何と?」

「受け取ったという手紙を受け取ったと書けばいい」

「それだけですか」

「今後の話は後ですると向こうが書いている。手紙一枚で決めるな」

俺は頷いた。

アルベルトへ一発でも早く返事を送りたい気持ちはある。

だが、今後の開発や購入、技術協力は、俺一人の親しさで決められる話ではない。

火縄銃は、もう俺とアルベルトの間だけで渡せる物ではなくなっている。

◇ ◇ ◇

レオンハルトは手紙を読み終えても、すぐには口を開かなかった。

机の上には、十挺を一斉に撃った時の試験記録も置かれている。

十挺すべてが発射した。

十人で撃つこともできた。

五挺ずつに分ければ、二組目の発射までの時間を短くできた。

それでも、再装填中の火槍兵は無防備だった。

「アルベルトは、約束の品を受け取った」

レオンハルトが言った。

「はい」

「向こうが作ることを止められるか」

「止められません」

「では、どうする」

「こちらの開発を進めます」

「いつまで工房へ籠もるつもりだ」

答えに詰まった。

筒の精度。

火皿。

火蓋。

火縄ばさみ。

ばね。

掛け金。

一発ごとの火薬と弾。

ここまで進んでも、直す場所はいくらでも出てくる。

雨の中では撃っていない。

馬の近くでも撃っていない。

長く使った時に筒がどう傷むかも分からない。

すべてを確かめてから戦場へ出そうとすれば、いつまでも終わらない。

「隠しているだけの武器は、倉庫の鉄と同じだ」

レオンハルトは試験記録を指した。

「使える形へしろ」

「次は、撃った後を槍兵に守らせます」

「それだけか」

「柵や土塁も」

「作る場所と時間がある時だけだな」

「はい」

「銃そのものは、早く撃てないのか」

前世の火縄銃も、装填に時間がかかった。

だからこそ、撃つ兵を分け、交代させる方法が考えられた。

だが、兵を三つに分ければ、それだけ多くの火縄銃が必要になる。

今は十挺しかない。

十挺を三つの組へ分けても、一組は三挺か四挺だ。

一人が次の弾を用意する時間そのものを短くできなければ、途切れずに撃つことは難しい。

「考えます」

「いつまでに」

「次の試験までに」

「明日か」

「それは少し」

「では、次の試験の日を誰が決める」

俺はマティアスを見た。

「お前だ」

先に答えたのはマティアスだった。

「必要な物と人を出せ。準備にかかる日数も出せ。それを見て俺が決める」

「分かりました」

「今度は、十挺を撃てたという報告だけを持ってくるな」

「二発目を早く撃てる方法を持ってきます」

言葉にしてから、急に重く感じた。

だが、言わなければ何も進まない。

工房へ戻る途中も、前回の装填手順を頭の中で繰り返した。

火縄を安全な位置へ移す。

火薬を受け取る。

蓋を開ける。

筒口へ入れる。

空の容器を返す。

弾を取る。

筒口へ入れる。

装填棒で押し込む。

棒を抜く。

火皿へ細かな火薬を置く。

火蓋を閉じる。

火縄を挟む。

火縄を上げる。

火蓋を開く。

構える。

このうち、筒内へ火薬と弾を入れることは省けない。

装填棒で奥まで押し込むことも必要だ。

火皿の火薬と火縄もなくせない。

なら、何を減らせる。

工房へ入ると、作業台の上に前回使った小さな火薬容器が残っていた。

その横には、型を通した弾が一つ置かれている。

俺は火薬容器と弾を手に取った。

別々の手で持つ。

戦場でも同じだ。

火薬は一回分ずつ量って渡し、弾は別の箱から取る。

だから二度手を伸ばす。

二つを最初から一つにしておけないのか。

「ロルフさん」

奥で金具を削っていたロルフが顔だけを上げた。

「何だ」

「小さな筒を作れますか」

「何に使う」

「一発分の火薬と弾を入れます」

「今の容器へ弾も入れるのか」

俺は空の火薬容器へ弾を近づけた。

口が狭くて入らない。

「これより少し太くします。底へ弾を入れて、その上に一発分の火薬を入れる。蓋をして、兵が腰へ持つんです」

「使う時は」

「蓋を外して、銃口へ逆さに当てます。火薬が先に入って、その後に弾が落ちる」

ロルフは手を止めた。

俺の手から火薬容器と弾を取る。

容器を逆さにし、銃口へ当てる真似をした。

「筒が細ければ、中で弾が止まる」

「銃口より少し太くします」

「太すぎれば、急いだ時に銃口へ当てにくい」

「縁を少し広げれば」

「広げれば腰でかさばる」

始まった。

一つ良くしようとすれば、別の問題が出る。

だが、今回は前と違う。

火縄銃そのものを作り直すのではない。

小さな容器の形を変えるだけだ。

「木で作りますか」

「火縄を持った兵へ、薄い木と火薬を十発分持たせるのか」

「では、鉄で」

「落とした時に火花が出れば、お前が拾うのか」

俺は材料棚を見た。

厚い革。

木片。

焼いた土の容器。

壊れた道具から外した金具。

壁際には、別の仕事で使うために集められた獣の角が置かれている。

ロルフも同じ物を見た。

角を一本取り、作業台へ置く。

「これなら、鉄より火花は出にくい。紙や薄い木より水も通しにくい」

「燃えませんか」

「火へ入れれば燃える」

「駄目では」

「火薬を入れて、火へ入れても平気な軽い筒が欲しいなら、神に頼め」

「頼んでも、たぶん作ってくれません」

神は剣の才能と身体能力はくれた。

火薬を入れても絶対に燃えない便利な容器まではくれなかった。

「燃えない物ではなく、すぐ燃え移らず、火花が出にくい物を使う」

ロルフは角の細い部分を切る位置へ印を付けた。

「内側を削る。弾が止まらん太さにする。銃口へ当てられるよう、口の形も揃える」

「蓋は」

「木でいい」

「緩ければ火薬が漏れます」

「固ければ開かん」

「その間にしてください」

「便利な頼み方だな」

ロルフは角を切り始めた。

最初の筒は、内側へ弾を入れたところで止まった。

角の内部は、見た目ほど滑らかではない。

細い棒へ布を巻き、内側を削る。

二つ目は弾が通ったが、銃口へ当てる部分が広すぎた。

三つ目で、ようやく火薬と弾の代わりに砂と木の球を入れ、銃口へ続けて落とすことができた。

「一発分を入れた筒ですね」

俺が言う。

「見れば分かる」

「名前が必要です」

「一発筒でいい」

ロルフは短く答えた。

「そのままですね」

「分からん名前を付けるよりましだ」

反論できなかった。

一発筒。

何を入れる道具なのか、名前だけで分かる。

昔の本で似た道具を見たような気はする。

だが、その名前までは思い出せない。

今必要なのは、前世の正しい呼び名ではない。

この世界の兵が、聞いてすぐ使い道を理解できる呼び名だった。

◇ ◇ ◇

一発筒を三本作ったところで、マティアスが工房へ来た。

俺が構造を説明すると、最初に尋ねたのは装填時間ではなかった。

「兵一人へ何本持たせる」

「まずは十本です」

「火槍兵は十人だったな」

「はい」

「百本か」

三本を作っただけで、少し進んだ気になっていた。

実際に十人へ十本ずつ持たせるには百本必要になる。

加工に失敗する物。

木栓が合わない物。

内側へ弾が引っ掛かる物。

火薬が漏れる物。

試験で壊れる物。

予備も要る。

「百本では足りないな」

マティアスが言った。

「ですが、銃を百挺作るよりは」

「それで安いと思うな。誰が作る」

「ロルフさんだけでは無理です」

「誰に作らせる」

角を切り、内側を削り、木栓を合わせる作業なら、鉄筒を作るほど高い技術はいらない。

ただし、火薬と弾を入れる容器だ。

形だけ似ていればよいわけではない。

「ロルフさんが基準を作ります。ほかの職人が削った後、弾が通るか、水が漏れないかを確認します」

「火薬を入れるのは」

「火薬を扱う者です」

「職人ではないのか」

「職人が作業台で火薬を詰めるのは危険です」

木屑。

炭火。

熱した鉄。

工房には火薬を近づけたくない物が多すぎる。

一発筒の本体と木栓は工房で作る。

火薬と弾を詰める作業は、火種を持ち込めない別の場所で行う必要がある。

「では、誰が一発分を確かめる」

「兵站の火薬を扱う部門です」

「兵に渡した後は」

「火槍兵が持ちます」

「どこへ」

答えようとして止まった。

一発筒を十本、紐で腰へ吊るすことも考えた。

だが走れば互いにぶつかる。

木栓が外れれば、腰へ火薬がこぼれる。

雨が降れば、角の筒そのものは濡れにくくても、木栓の隙間から水が入るかもしれない。

「箱を作ります」

「また物が増えたな」

「一発筒を裸で持たせるより安全です」

「どんな箱だ」

俺は厚い革を手に取った。

腰へ付けられる大きさに折る。

十本を立てて並べるなら、横に広すぎない方がよい。

二列に分ければ、腰から大きく張り出さずに済む。

「革で作ります。内側へ油紙を縫い付けて、雨と水を防ぎます。一発筒がぶつからないよう、革で仕切る」

「蓋は」

「縁へ深くかぶせます」

「走れば開く」

「革の差し込みと、角の留め具を付けます」

「急ぐ時に開かんのではないか」

ロルフと同じ問いだった。

簡単に開けば、走った時にも開く。

開きにくくすれば、装填が遅くなる。

「留め具を外す動作も、試験で測ります」

マティアスは俺の手元にある革を見た。

「箱を開けたまま撃つのか」

「一発筒を取ったら閉めます」

「十発分の火薬を、燃えた火縄のそばで勝手に開ける兵が出たら」

俺は答えられなかった。

道具を作るだけでは足りない。

誰が、いつ、どの命令で開けるかまで決めなければならない。

「火槍兵長の許可がなければ、開けられないようにします」

「補充する時は」

「火槍兵長がいないこともあります」

「なら、誰が開けさせる」

「兵站火薬部門の上官です」

「戦場でもか」

「いえ。補充作業の時だけです」

マティアスはようやく頷いた。

「誰でも開けられないようにするなら、誰が開けさせられるかも決めろ」

「はい」

俺は帳面へ新しい規則を書いた。

射撃と訓練の時は、火槍兵長だけが弾薬箱の開放を許可できる。

補充作業の時だけは、兵站火薬部門の上官も許可できる。

補充は火縄や火種を持ち込まない場所で行う。

残っている一発筒を数える。

破損と火薬漏れを確かめる。

十本まで補充する。

兵站側と火槍兵の双方で本数を確かめる。

補充後は箱を閉じ、再び許可が出るまで開けない。

「火皿の火薬はどうします?」

俺が尋ねる。

一発筒に入れるのは、筒内で弾を飛ばすための火薬だ。

火皿へ置く細かな火薬は別に必要になる。

「同じ箱へ入れれば、一度に燃える」

マティアスが答えた。

「腰箱を別にします」

携帯用弾薬箱には一発筒十本だけを入れる。

腰箱には、火皿用の細かな火薬、予備の火縄、火打道具、点火孔を掃除する細い棒、小さな布を入れる。

二つとも腰ベルトへ取り付ける。

「腰が重くなりますね」

「銃を軽くした分、別の物を持たせているな」

「必要な物です」

「必要かどうかは、持って歩かせてから言え」

それも試験へ加えた。

机の上では使いやすく見えても、腰へ付けて山道を歩けば邪魔になるかもしれない。

しゃがんだ時に蓋が開かないか。

走った時に一発筒が箱の中で動かないか。

転んだ時に木栓が外れないか。

確かめることはまだある。

それでも、今回は火縄銃本体へ新しい金具を加えるわけではない。

角と革と油紙なら、筒を鍛えるより早く数を揃えられる。

◇ ◇ ◇

一発筒と弾薬箱を作っている途中、別の問題も出た。

火槍兵が持ち歩く火縄だ。

火縄は火を付けてからすぐに使うとは限らない。

風が強ければ燃え方が変わる。

雨が降れば火が消える。

予備の火縄を腰箱へ入れても、戦の最中に火打道具から点火し直していては遅い。

燃えている火縄を、火を消さずに守る道具があったはずだ。

前世で読んだ本の挿絵に、細い筒のような物が描かれていた記憶はある。

だが、名前までは思い出せなかった。

「ロルフさん。燃えている火縄を筒の中へ入れておけませんか」

「火を消したいのか」

「逆です。火を消さず、風と雨だけを避けたいんです」

「筒を閉じれば消える」

「空気の穴を開けます」

ロルフは細い金属筒を手に取った。

火薬を入れる容器ではないので、金属でもよい。

燃えている火縄を中へ収め、火が周囲の衣服や革へ直接触れないようにする。

穴が少なければ火が弱る。

多すぎれば風や雨が入る。

試作品の穴を変えながら、火縄が燃え続けるかを確かめた。

「名前は」

ロルフが尋ねる。

「分かりません」

「昔の本には書いてなかったのか」

「書いてあったかもしれません。でも覚えていません」

「なら、火縄守りでいい」

また、そのままの名前だった。

だが、一発筒と同じで用途が分かる。

兵が聞き間違えにくい名前の方がよい。

火縄守りも腰ベルトへ付ける。

腰には弾薬箱と腰箱。

火縄守り。

そのほかに剣か短い槍を持たせれば、さらに重くなる。

火縄銃一挺を短くした時、持ち運びやすい武器にできたと思った。

実際には、武器の周りへ必要な物が増えていく。

それでも、増えた物の一つずつには理由があった。

一発筒は装填を早める。

弾薬箱は火薬と弾を濡らさず、勝手に開かないようにする。

腰箱は火皿の火薬と手入れ道具を分ける。

火縄守りは、燃えている火縄を維持する。

銃だけを見ていては、兵一人を戦場へ立たせることはできなかった。

数日後、最初の百本が揃った。

すべてが使えたわけではない。

弾が途中で止まる物。

水を入れると木栓の隙間から漏れる物。

銃口へ当てた時に傾く物。

木栓が手では抜けない物。

それらを除き、削り直し、足りない分を作り直した。

百本の一発筒が、十個の携帯用弾薬箱へ十本ずつ収まる。

弾薬箱の内側には油紙が縫い付けられている。

縫い目へも油を塗り、折り返した油紙を重ねた。

革の仕切りが、一発筒同士の間へ入っている。

箱を振っても、角が激しくぶつかる音はしなかった。

「銃より先に、箱が十個できましたね」

俺が言うと、ロルフは百本を作った職人たちの手元を見た。

「銃より簡単だ」

「安いですか」

「一つならな」

一つなら安い。

百本なら、角も木栓も手間も百本分必要になる。

さらに火薬と弾を詰める仕事がある。

マティアスが言ったとおりだった。

使う兵が戦場で量る時間を、戦の前に別の者が引き受ける。

作業が消えたわけではない。

行う場所と人間が変わっただけだ。

◇ ◇ ◇

次の試験でも、銃と火薬は別の荷車で運んだ。

前回と同じ山道を使い、同じ分かれ道へ見張りを置く。

警戒の方法を一から説明する場面はなかった。

それだけでも、一挺を初めて運んだ時とは違う。

採石場へ着くと、十人の火槍兵が腰ベルトへ装具を付けた。

一方には、十本の一発筒を収めた携帯用弾薬箱。

もう一方には、火皿の火薬や予備の火縄を入れた腰箱。

火縄守りも腰ベルトから下がっている。

銃だけを渡された時より、ようやく一人の火槍兵らしい姿になっていた。

だが、見た目が整ったことと、使えることは違う。

最初に、全員を山道の短い区間で歩かせた。

次に走らせる。

しゃがませる。

立たせる。

銃を構えさせる。

弾薬箱の留め具が一つ外れかけた。

革の差し込みが浅かった。

腰箱が銃の木台へ当たる兵もいた。

腰ベルトの位置を直し、箱を少し後ろへずらす。

火縄守りが走るたびに揺れ、膝へ当たったため、吊るす革紐を短くした。

一発筒そのものは、油紙と革の仕切りに守られている。

木栓が外れた物はなかった。

「まず一人です」

俺が言うと、火槍兵長が左端の兵を呼んだ。

兵は担当する一挺目を持ち、射撃位置の後ろへ立つ。

弾薬箱は閉じられている。

腰箱も閉じてある。

火縄は火縄守りの中で燃えている。

火槍兵長が兵の腰を確認した。

「許可が出るまで、弾薬箱へ触れるな」

「はい」

「弾薬箱開放許可」

兵が角の留め具を外し、革の差し込みを抜いた。

蓋を開ける。

「一発取れ」

兵が一本を取り出した。

「装填」

木栓を抜く。

一発筒を銃口へ逆さに当てる。

火薬が筒内へ落ちた。

続いて弾が落ちるはずだった。

だが、弾は一発筒の内側で止まった。

兵が筒を振ろうとする。

「止めろ」

火槍兵長が命じた。

兵の手が止まる。

火薬はすでに銃の中へ入っている。

一発筒には弾だけが残っている。

無理に叩けば、弾が急に落ちるかもしれない。

「筒を銃口から離せ」

兵がゆっくり離す。

ロルフが一発筒を受け取り、内側を見る。

「削り残しだ」

検査を通った物でも、弾の形と筒の内側が僅かに合わなければ止まる。

ロルフが内側を削り直す。

同じ箱に入っていた残り九本も、一つずつ弾が通るか確かめた。

「百本全部を、同じ弾一つで調べました」

俺が言う。

「弾も全部が同じではない」

ロルフが答える。

型を通して大きさを揃えても、僅かな違いは残る。

筒だけでなく、実際に入れる弾との組み合わせも見る必要がある。

「一発筒へ入れる前に、その弾が最後まで通るか確かめます」

俺は帳面へ書いた。

火薬と弾を詰める場所で、弾を筒の奥まで一度通す。

それから弾を底へ入れ、火薬を詰める。

検査の手順が一つ増えた。

だが、兵が敵を前にして弾を詰まらせるよりよい。

別の一発筒を使って、最初からやり直す。

「弾薬箱開放許可」

兵が箱を開ける。

「一発取れ」

「装填」

今度は火薬の後に弾が落ちた。

兵が装填棒を入れ、奥まで押し込む。

棒を抜き、体の横へ立てる。

腰箱から火皿用の細かな火薬を取り出す。

火皿へ置き、火蓋を閉じる。

火縄守りから燃えている火縄を出す。

火縄ばさみへ挟み、掛け金へ留める。

射撃位置へ進む。

火蓋を開く。

「構え」

「撃て」

発射音が岩壁へ返った。

弾は板の内側へ当たった。

兵は火縄を引き上げ、遅れて発射しないことを確かめる。

「一発取れ」

火槍兵長が命じた。

二発目には、「弾薬箱開放許可」はない。

最初の許可がまだ続いている。

兵が必要な時だけ蓋を開け、一発筒を取り出す。

「装填」

木栓を抜く。

火薬と弾を一度に筒へ入れる。

装填棒で押し込む。

従来のように、火薬を運ぶ者が一回分の容器を持ってくるのを待つ必要はない。

弾を別の箱から受け取る必要もない。

空になった火薬容器を返す動作もなくなった。

それでも、装填棒を使う時間は残る。

火皿へ細かな火薬を置く必要もある。

火縄を火縄ばさみへ戻す手順も変わらない。

一発筒を使えば、瞬きの間に次の弾を撃てるわけではない。

だが、砂時計の砂が落ちる様子は、前回とは明らかに違った。

前回は何度も砂時計を返した。

今回は、兵が火縄を掛け金へ留めた時、返した砂がまだ下へ落ち続けていた。

「構え」

「撃て」

二発目が飛んだ。

火槍兵長が命じる。

「弾薬箱閉め」

兵は弾薬箱の蓋を深くかぶせ、革を差し込み、角の留め具を掛けた。

火槍兵長が手で確かめる。

「以後、許可なく開けるな」

「はい」

一人の試験は成功した。

一発筒が弾を飛ばすわけではない。

火薬の力を強くするわけでもない。

命中率を上げる物でもない。

ただ、火薬と弾を一つにまとめただけだ。

それでも、敵を前にして行う動作をいくつも減らせた。

◇ ◇ ◇

十人を射撃線へ並べる。

全員の弾薬箱には、一発筒が十本入っている。

十人で百発分。

そのすべてが、今は腰の革箱に収められている。

前回は、火薬を射撃線から離れた窪地へ置き、必要な分を運ばせた。

今回は、射手自身が十発分を持つ。

補給する者の往復は減る。

その代わり、一人が転んだ時に失う火薬は増える。

火縄の火が弾薬箱へ移った時の危険も大きくなる。

火槍兵長が十人の前を歩き、留め具を確認した。

「命令前に箱へ触れるな」

誰も動かない。

「弾薬箱開放許可」

十人が留め具を外す。

動きは揃っていない。

すぐに開けた者もいれば、革の差し込みに手間取る者もいる。

「一発取れ」

十人が一発筒を一本ずつ取り出す。

「装填」

木栓を外す。

銃口へ逆さに当てる。

火薬と弾を入れる。

一挺目はすぐに入った。

二挺目も続く。

四挺目の兵は、木栓が抜けずに止まった。

力を入れて引こうとする。

「急ぐな」

火槍兵長の声が飛ぶ。

兵は一度手を止め、筒を握り直した。

木栓を僅かに回してから抜く。

火薬は漏れていない。

一発筒を銃口へ当てる。

十人全員が火薬と弾を入れ終える。

「棒を入れろ」

装填棒で押し込む。

「棒を抜け」

十本の棒が抜かれる。

「棒を見せろ」

十人が棒を体の横へ立てる。

一人も筒内へ残していない。

火皿へ細かな火薬を置く。

火蓋を閉じる。

火縄守りから火縄を出す。

火縄ばさみへ挟み、掛け金へ留める。

「前へ」

十人が射撃位置へ出る。

「火蓋を開けろ」

「構え」

「撃て」

発射音が続いた。

完全には一つに重ならない。

八挺が近い間隔で鳴り、残る二挺が僅かに遅れた。

不発はなかった。

煙が十人の前へ広がる。

火槍兵長は、全員が火縄を引き上げたことを確認する。

「一発取れ」

二発目には、弾薬箱の開放許可を繰り返さない。

十人が弾薬箱から次の一発筒を取り出す。

「装填」

前回の試験では、火薬を運ぶ者が十人へ小さな容器を渡すため、射撃線の後ろを何度も往復した。

先に受け取った兵は待ち、遅い兵は急いだ。

今回は、その動きがない。

十人がそれぞれの腰から一発分を取り出す。

六挺目の兵が、空になった一発筒を手に持ったまま装填棒へ手を伸ばした。

両手が塞がる。

兵は一瞬迷い、一発筒を地面へ置こうとした。

「空筒は腰箱の外袋へ」

火槍兵長が命じる。

兵は決めていた場所へ空筒を入れた。

試験前に手順を決めても、実際に急いで動けば迷う場所が出る。

そのたびに直すしかない。

十人の装填が進む。

一発筒を使っても、速い者と遅い者の差は残った。

火皿の火薬をこぼしかける者もいる。

火縄を火縄ばさみへ挟み直すのに時間がかかる者もいる。

それでも、最後の兵が火縄を掛け金へ留めた時、前回ほど砂時計を返していなかった。

「全員、準備できました」

火槍兵長が報告した。

「時間は」

レオンハルトが俺へ尋ねる。

「前回より短くなりました」

「どれだけだ」

俺は砂時計の記録を見た。

正確な一分や二分では表せない。

砂時計を返した回数と、最後に残った砂で比べる。

「火薬と弾を別々に受け取った時より、砂時計一回分以上早いです」

「十人全員がか」

「最も遅い兵が準備を終えるまでの時間です」

「なら、使える」

レオンハルトは短く言った。

十人を五人ずつに分ける。

左の第一組。

右の第二組。

前には、簡単な杭と少数の槍兵を置いた。

本格的な馬防柵でも、土塁でもない。

火槍兵が再装填する間、敵が真っすぐ近づけない場所を作るための最初の形だ。

槍兵には、火縄銃の前へ出すぎない位置を示した。

火槍兵が撃つ時は、決めた射線を空ける。

煙で見えなくなった時は、勝手に移動しない。

一つずつ規則を決める。

「第一組、構え」

五挺が上がる。

「撃て」

五つの音が続く。

第一組が火縄を引き上げる。

「第一組、一発取れ」

五人が一発筒を取り出す。

「第一組、装填。第二組、前へ」

第一組が火薬と弾を入れている間に、第二組が射撃位置へ出る。

「第二組、構え」

第一組は装填棒を入れている。

「第二組、撃て」

五挺の音が鳴った。

煙が左右へ流れる。

第一組は火皿へ細かな火薬を置く。

第二組が次の一発筒を取り出す。

火槍兵長の号令は忙しい。

だが、前回のように火薬を配る者が射撃線の後ろで交差することはなかった。

「第一組、準備完了」

第一組の五挺が、再び撃てる状態になる。

第二組が撃った後、以前より早く次の五挺を用意できた。

途切れずに撃てたわけではない。

第二組の発射音で、第一組への号令が聞こえにくくなった。

煙が火皿へ火薬を置く兵の手元へ流れた。

槍兵が射線を空けたか確認する時間も必要だった。

それでも、前回とは違う。

撃った後に何もできず、敵が近づくのを待つだけではない。

一発筒と二つの組、槍兵と杭を合わせれば、二度目の射撃へ進める。

まだ小さな形だ。

だが、形になり始めている。

最後の射撃が終わる。

火槍兵長が声を上げた。

「弾薬箱閉め」

十人が蓋を閉じる。

革を差し込み、角の留め具を掛ける。

火槍兵長が左端から順番に確認した。

一つ目。

二つ目。

三つ目。

十個すべてが閉じられている。

「以後、開放を禁じる」

射撃時の開放許可は、これで終わった。

残った一発筒の補充は、戻ってから行う。

補充場所へ火縄と火種は持ち込まない。

兵站火薬部門の上官が、補充作業の間だけ開放許可を出す。

残数を確かめ、破損と火薬漏れを見て、十本まで補充する。

最後にもう一度、「弾薬箱閉め」と命じる。

規則が増えた。

だが、規則が増えた分だけ、誰が何をするのかは明確になった。

◇ ◇ ◇

試験を終えた後、レオンハルトは空になった一発筒を一本手に取った。

角を削っただけの短い筒だ。

火縄銃のような長い鉄筒もない。

ばねも掛け金もない。

「銃を一挺増やすより、これを十本増やす方が早いな」

「ですが、十人へ十本ずつなら百本です」

俺が答えると、横からマティアスが続けた。

「誰が作り、誰が火薬を詰め、誰が数える」

「本体は職人が作ります。火薬と弾は、兵站火薬部門が火種のない場所で詰めます」

「火薬量を間違えた時の印は」

「確認した者が、一発筒の外側へ印を付けます」

「二人で同じ印を使ったら」

「担当ごとに印を変えます」

「使った空筒は」

「回収して、内側と木栓を調べてから再利用します」

「火薬が残っていたら」

「掃除して、乾かします」

問いは終わらない。

一発筒を百本作った時点で、また新しい仕事が生まれている。

だが、今回は答えられることが前より増えていた。

「一発筒が仕事を減らしたと思うか」

マティアスが尋ねた。

「いいえ」

俺は答えた。

「兵が戦場で量っていた火薬を、戦の前に別の者が量るようにしました。弾も先に入れておく。一発筒が減らしたのは、作業そのものではありません」

「何を減らした」

「敵が迫っている時に、火槍兵が行う作業です」

マティアスは頷いた。

一発筒が短くしたのは、火薬を量る仕事そのものではない。

敵が迫る中で、兵が火薬を量る時間だった。

「アルベルトへも送るのか」

レオンハルトが一発筒を指で回した。

「火槍を借りた対価として約束したのは、試作品と、そこへ至るまでの開発記録です」

「これは、その後か」

「はい」

「隠すか」

すぐには答えなかった。

アルベルトへ隠したいわけではない。

向こうには試作品があり、今後の開発、追加製作、購入、技術協力については後日話し合うと手紙に書かれている。

一発筒も、その話し合いに含められる。

だが、親しい相手だからという理由だけで、今すぐ詳しい形と作り方を送ることはできない。

「アルベルト様への返書には、運用の改良が続いていることを書きます」

俺は答えた。

「一発筒の詳しい構造は、今後の協力について話す時に決めます」

マティアスが俺を見る。

「渡すか隠すかを今決める必要はない。何を渡し、何を受け取るかは、話し合う時に決めろ」

「はい」

アルベルトとの関係は、技術を渡さなければ壊れるほど弱くない。

マティアスやレオンハルトとの関係も、俺が勝手に技術を送ってよいほど軽くない。

両方を大切にするなら、曖昧な親しさで決めるのではなく、正面から条件を話し合う必要がある。

帰ったら返書を書く。

試作品と記録を受領したとの連絡への礼。

火槍の貸し借りに関する条件がすべて果たされたことの確認。

その後も運用面の改良が続いていること。

追加開発、製作、購入、技術協力については、会って話したいこと。

書くべきことは決まった。

一発筒の詳しい作り方は、まだ書かない。

「十挺は撃てる」

レオンハルトは射撃線へ目を向けた。

煙はすでに薄くなっている。

「はい」

「二発目も、前より早い」

「はい」

「なら、次は標的ではなく、敵へ使う時を選ぶ」

胸の奥が僅かに冷えた。

火縄銃を作ることと、人へ向けて撃つことは違う。

最初から戦で使う武器を作っていると分かっていた。

それでも、試験場の板へ弾を撃ち込んでいる間は、まだ開発という言葉の中にいられた。

実戦へ持ち出せば、弾の向こうに人がいる。

「怖いか」

レオンハルトが尋ねた。

「怖くないと言えば、嘘になります」

「なら忘れるな」

「何をですか」

「撃たれる側も怖い」

レオンハルトはそれだけ言い、射撃線を離れた。

十挺の火縄銃が布へ包まれる。

一発筒の残数を記録する。

弾薬箱と腰箱を腰ベルトから外し、破損がないか確かめる。

火縄守りから火縄を抜き、火を消す。

荷車へ積む物の数を、来た時と同じように数える。

開発は終わっていない。

雨の中で撃てるか。

長く使えば筒がどう傷むか。

一発筒を何百本、何千本と作れるか。

火薬と弾を運び続けられるか。

槍兵や弓兵とどう並べるか。

まだ確かめなければならないことは多い。

それでも、火縄銃だけを見続ける時間は終えなければならない。

戦は、武器一つが完成するまで待ってはくれない。

火縄銃を作る仕事は、まだ終わっていない。

それでも、火縄銃だけを見続ける時間は、ここで終わりにしなければならなかった。

第十九話を読んでいただき、ありがとうございました。

一発分の火薬と弾をまとめた「一発筒」と、それを安全に携帯する弾薬箱。敵を前にして行う作業の一部を戦の前へ移すことで、次の一発を撃つまでの時間は明確に短くなりました。

十挺の製作と基本的な運用準備が整い、火縄銃開発は次の段階へ進みます。次回からは政治と軍事情勢へ視点を戻し、形になり始めた火縄銃部隊が実戦へ向かう流れを描きます。

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