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『知らない世界で、前世の知識が武器になる』 ~剣と銃で乱世を生き抜く転生領主の成り上がり~  作者: 相田 ソウ
第三篇 乱世の潮目

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第四話 旗を持たない男

王家の関所を越えたアルベルト一行は、マティアスと取引している有力商人ヴェラーを訪ねます。顧客の情報を守るヴェラーに対し、アレクは質問の向きを変え、マティアスが人と物を動かす仕組みを探ります。

 翌朝、アルベルト一行は宿場を出て、再びグランヴァルト王家の関所へ向かった。

 前日に連れてきた四十騎のうち、同行しているのは二十騎だけだった。王都から届いた許可書に、関所の先へ進める護衛は二十騎までと記されていたためである。残る二十騎には、宿場で荷物と帰路を守るよう命じられている。

「本当に二十騎だけで行くのですね」

 アルベルトの少し後ろを進みながら、アレクが尋ねた。

「許可されたのが二十騎だからな」

「アルベルト様なら、あと一人くらい増やせと言うかと思いました」

「他国の規則だ。理由もなく破るつもりはない」

「少し意外です」

「お前は私を何だと思っている」

「言えば大抵のことは通ると思っている人です」

「間違ってはいない」

「やはり自覚はあるのですね」

 アルベルトが笑う。

 その隣を進んでいたゲオルクは何も言わなかったが、僅かに口元を緩めていた。

 関所へ近づくと、前日と同じ黒地に金の獅子の旗が見えてきた。

 柵の前には既に何台もの荷車が並んでいる。関所兵たちは積み荷を開き、証書と照らし合わせながら、一台ずつ通行の可否を決めていた。

 一行に気づいた兵が声を上げる。

「アルヴェイン大公殿下がお見えになった!」

 関所の奥からナーゲル隊長が歩いてきた。

「お待ちしておりました」

「待たせたのはそちらだろう」

「王都の許可が必要でしたので」

「昨日も聞いた」

「本日も同じ説明になります」

「本当に融通が利かんな」

「昨日は職務に忠実だとお褒めいただいたものと思っておりました」

「その図太さは気に入っている」

「光栄です」

 ナーゲル隊長はアルベルトと言葉を交わしながらも、一行の数を自分の目で確かめていた。

「二十騎。間違いありません」

「わざわざ数えるのか」

「当然です」

「私が嘘をついていると?」

「大公殿下を疑っているのではありません。私自身が確認したという事実を残すためです」

 許可より多くの兵を通したことが後で問題になれば、責任を問われるのはナーゲル隊長である。アルベルトが二十騎だと言ったというだけでは、王都への説明にならないのだろう。

「よい答えだ」

「ありがとうございます」

 ナーゲル隊長は部下から通行許可書を受け取り、アルベルトへ差し出した。

「ベルグハーフェンまでの通行が認められております。その先へ向かわれる場合は、改めて許可を得ていただきます」

「誰が境を監視している?」

「各街道の関所と、王都から派遣された巡回隊です」

「随分と念入りだな」

「国内の状況が落ち着いておりませんので」

 ナーゲル隊長は一度言葉を切り、関所の西側へ目を向けた。

「そのことについて、一つ忠告がございます」

「何だ」

「西へ進まれる途中で兵を見掛けても、むやみに近づかれませんよう」

「どこの兵だ?」

「分からない者たちが増えているからこそ、申し上げております」

 アレクは思わずナーゲル隊長を見た。

「所属が分からないのですか?」

「王国軍、地方領主の兵、傭兵、商人が雇った護衛。それだけなら旗や装備で見分けられる場合もある。だが、ここ数日は所属を示さない武装集団まで街道を動いている」

「盗賊では?」

「その可能性もある。しかし、盗賊にしては装備が整い、隊列を組んで動く者もいる」

「領主が旗を隠して動かしているかもしれない?」

「それを確かめる前に近づけば、争いになる」

 ナーゲル隊長はアレクの問いへ答えながら、アルベルトへ視線を戻した。

「今のところ、大きな衝突は確認されておりません」

「今のところ、か」

「はい」

 前日までと同じ言葉だった。

 まだ戦は始まっていない。

 まだ軍同士は衝突していない。

 しかし、兵と物資は既に動いている。どこかで一人が剣を抜けば、積み重なった警戒が一気に戦へ変わるかもしれなかった。

「分かった。余計な争いは避ける」

「お願いいたします」

 ナーゲル隊長が一歩退いた。

「開門!」

 兵士たちが丸太の柵を動かす。

 街道の先へ続く道が開かれた。

「行くぞ」

 アルベルトが馬を進める。

 アレクとゲオルク、その後ろに続く騎士たちも関所を越えた。

 景色そのものが大きく変わったわけではない。

 街道の両側には草原と農地が広がり、その向こうに低い丘と森が見えている。振り返れば、黒地に金の獅子の旗が風にはためいていた。

 それでも、アレクには空気が僅かに変わったように感じられた。

 ここから先はグランヴァルト王国内である。

 アルヴェイン大公であるアルベルトでさえ、王都の許可を得なければ自由には動けない。そして、その王国内では王家、レオンハルト、シュヴァルツ伯が、それぞれ異なる思惑で兵を動かし始めている。

 一行は、その中心へ近づこうとしていた。


◇ ◇ ◇


 関所を越えてしばらく進むと、街道脇の林の近くに二十人ほどの武装集団が見えた。

 半数は地面へ腰を下ろし、残る者は立ったまま周囲を警戒している。槍、剣、弓を持っているが、鎧や盾の形は揃っていなかった。

 領主や商会の旗も見当たらない。

 一行に気づいた男たちが立ち上がり、武器へ手を添えた。

 ゲオルクも右手を僅かに上げ、後ろの騎士たちへ隊列を崩さないよう合図する。剣を抜く者はいない。だが、馬上の騎士と街道脇の武装集団は、互いの動きを見逃さないよう見つめ合った。

「どこの兵でしょう」

 声を落としたアレクに、ゲオルクが答える。

「分からん」

「傭兵に見えます」

「装備だけならな」

「商人の護衛という可能性は?」

「近くに商隊がいない。依頼主と別行動をしているのでなければ、護衛とは考えにくい」

 男たちの中には、周囲と比べて上等な胸甲を身につけた者もいた。立ち方や合図の送り方にも、ある程度の統率が感じられる。

 村人が身を守るために集まっただけではない。

 かといって、どこかの正規兵だと示すものもなかった。

「こちらから話を聞きますか?」

「近づくなと警告されたばかりだろう」

 前を進むアルベルトが、振り返らずに答えた。

「ですが、何者か分からないまま通り過ぎるのも不安です」

「今は向こうも同じことを考えている」

「俺たちには旗があります」

「だからといって、向こうがお前を信用するとは限らん」

 深紅地に金の龍を掲げたアルヴェイン大公家の旗は、一行の所属を明らかにしている。

 しかし、相手から見れば、他国の大公が二十騎を連れてグランヴァルト国内を進んでいるのだ。名乗っているから安全だとは限らない。

「今は誰も敵ではない」

 アルベルトが言った。

「向こうが武器を抜いたら?」

「その時は身を守れ」

「こちらが先に抜いたら?」

「向こうにとって、我々が敵になる」

 一行は速度を変えず、武装集団から距離を取って進んだ。

 男たちも追ってはこなかった。

 互いに相手を警戒しながら、何もせず離れていく。

 林が後方へ遠ざかってから、騎士たちの緊張が僅かに緩んだ。

「誰が敵か分からないのは、戦っている時より怖いですね」

 アレクが言う。

「戦場なら、旗と陣形で敵味方が分かるからな」

 ゲオルクが答えた。

「今は、剣を抜かなかったから通り過ぎられました」

「ああ」

「一人でも間違えていたら?」

「最初は四十人ほどの争いで済むかもしれん」

 アルベルトの声が前から聞こえた。

「済む、ですか」

「互いの素性が分かれば、アルヴェイン大公家と相手方の争いになる。相手がどこかの領主に雇われていれば、その領主も巻き込まれる。死者が出れば、謝罪や賠償だけでは収まらない者もいるだろう」

「さらに兵が増える」

「そうだ」

 小さな衝突が、旗と面子によって大きな争いへ変わっていく。

 前世の歴史にも、偶発的な事件から戦争へ進んだ例はいくつもあった。後から見れば、なぜ止められなかったのかと思うような出来事でも、その場にいる者たちは相手の意図を知ることができない。

「戦を始めるのは、簡単なのかもしれませんね」

「終わらせることに比べればな」

 アルベルトはそれだけ答え、前へ向き直った。

 実際に幾度も戦場へ立ってきた者の言葉には、軽口を返しにくい重さがあった。


◇ ◇ ◇


 昼前、一行は街道沿いに広がる交易地へ入った。

 高い城壁や大きな城を持つ都市ではない。街道を中心として、商店、宿屋、工房、倉庫が帯のように続いている。

 道の両側には、毛皮、葡萄酒、油、穀物、縄、馬具、農具などを扱う看板が並んでいた。荷車の出入りも多く、店先では商人と職人が値段や納期について声を上げている。

 深紅地に金の龍の旗を掲げた二十騎が入ると、街道を行き交う者たちが次々と道を空けた。

「やはり目立ちますね」

 周囲から集まる視線を感じ、アレクが言った。

「今さら隠せん」

「旗を畳んで、アルベルト様だけ普通の服へ着替えるというのは?」

「二十騎を連れた普通の男がいるか」

「商人の護衛に見えるかもしれません」

「護衛にしては馬も鎧も揃いすぎている」

「では、最初から隠れるのは無理だったのですね」

「私は隠れるために来たのではない」

 アルベルトが堂々と進むため、町の者は一目で身分の高い人物だと分かる。正体を知らなくても、道を塞ごうとする者はいなかった。

「ヴェラー商会は、この町に本店を置いているのですね」

「ああ」

 ゲオルクが答える。

「昨日、関所を通った麦はベルグハーフェンへ向かっていました」

「支店か、商会が借りている倉庫で受け取るのだろう。本店にすべての商品を運び込む必要はない」

「本店がここにあっても、別の町で売買できる?」

「代理人や支配人を置けばな」

 ヴァイスブルクでも、大きな商会は町ごとに店や倉を持っていた。取引のすべてを主人一人が行うわけではない。

 マティアスの名を聞いてから、アレクは一人の商人がすべてを決めているように考えがちだった。しかし、実際に荷車を動かし、荷を受け取り、証書を確認するのは、各地にいる多くの者たちである。

 案内役の騎士が前方を指した。

「あちらです」

 街道に面した三階建ての建物だった。

 一階は石造りで、二階と三階には頑丈な木材が使われている。正面にはヴェラー商会の名を記した大きな看板があり、建物の横には本店と同じほどの広さを持つ倉庫が建っていた。

 店の前には荷車が三台止まり、使用人たちが毛皮と酒樽を運び込んでいる。

「思っていたより大きな商会ですね」

「西方では名の知られた商人だ」

「先に教えてください」

「聞かなかっただろう」

 アルベルトが馬を止める。

「ゲオルク、五人だけ連れてこい。残りは店の外で待機させる」

「承知しました」

 大公が二十騎すべてを連れて店へ入れば、話し合いではなく捕縛に来たように見える。

 アルベルトとゲオルクが馬を降りたため、アレクも続いた。

「アレク」

「はい」

「お前も来い」

「分かっています」

「昨夜、何を聞くか考えたか?」

「一応は」

「ならば使え」

「いきなり俺へ任せないでくださいよ」

「私が先に聞く。答えが得られなければ、お前の番だ」

 最初からそのつもりだったらしい。

 アレクは小さく息を吐き、アルベルトと並んで店へ入った。


◇ ◇ ◇


 ヴェラー商会の一階では、十人を超える使用人が働いていた。

 長机で帳簿を書く者、訪れた商人と話す者、荷札と証書を見比べる者がいる。奥の扉からは倉庫へ荷を運ぶ者たちが絶えず出入りしていた。

 アルベルトが入ると、入口近くにいた使用人の手が止まった。

 続いて大公家の旗を持つ騎士へ気づき、慌てて姿勢を正す。

「アルヴェイン大公殿下でいらっしゃいますか?」

「そうだ。ヴェラーに会いたい」

「ただいまお呼びいたします」

 使用人が階段を駆け上がった。

「来ることは伝えていたのですよね?」

 アレクが小声で尋ねる。

「この町へ寄る可能性は知らせた」

「今日来ることは?」

「伝えていない」

「それは事前の連絡と言えるのでしょうか」

「来るかもしれないと分かっていれば十分だ」

「ヴェラーさんは、いつ来るのか分からないまま待つことになります」

「商人なら、突然来た客をどう迎えるかも見たい」

「わざとですか」

 アルベルトは答えず、僅かに笑った。

 しばらくすると、階段から一人の男が下りてきた。

 五十歳前後だろう。アレクより僅かに背が高く、商人らしい豊かな体格をしている。黒に近い焦げ茶色の髪は丁寧に整えられ、こめかみには白いものが混じっていた。鼻の下には短い髭を蓄えている。

 身につけている深い茶色の服に派手な装飾はない。しかし、布の質と仕立てを見れば安物でないことは分かる。右手には太い銀の指輪が一つだけはめられていた。

 柔らかな笑みを浮かべているが、その目はアルベルト、ゲオルク、アレクを順番に見ている。

 歓迎の言葉を考えるだけではなく、誰がどの立場で来たのかを観察している目だった。

「アルヴェイン大公殿下、このような場所までお越しいただき、光栄に存じます」

 男はアルベルトの前で深く頭を下げた。

「お前がヴェラーか」

「はい。ヴェラー商会を預かっております」

「話がある」

「承知しております。二階に応接室がございますので、そちらへご案内いたします」

 突然の訪問に驚いた様子は見せなかった。

 来る日までは知らされていなくても、訪問そのものは予想していたらしい。

 ヴェラーの案内で二階へ上がる。

 応接室には大きな机と椅子が置かれ、壁には西方の街道と河川を描いた地図が掛けられていた。別の壁には複数の川船を描いた絵があり、棚には分厚い帳簿が並んでいる。

 アルベルトが中央の席へ座る。

 アレクが少し後ろへ下がろうとすると、アルベルトが隣の椅子を示した。

「アレク、ここへ座れ」

「俺もですか?」

「昨夜考えたことを使うのだろう」

「はい」

 アレクが隣へ座り、ゲオルクは後方へ立った。

 向かい側へ腰を下ろしたヴェラーが、アレクへ視線を向ける。

「あなたが、アレク・ハルトマン殿ですか」

「俺のことをご存じなのですか?」

「お名前だけは、マティアス殿から伺っております」

 最初からマティアスの名が出た。

 アルベルトが僅かに身を乗り出す。

「やはり、マティアスと関係があるのだな」

「商売上のお付き合いがございます」

「それだけか?」

「難しいご質問です」

 ヴェラーは笑みを崩さなかった。

「私ども商人には、商人なりに守らなければならない信用がございます。取引相手の事情を、本人の許可なくお話しすることはできません」

「大公が相手でもか?」

「大公殿下だからこそでございます」

「私へ話したと知れれば、別の者も自分の情報を渡されると考えるか」

「そのとおりです」

 アルベルトは不快そうな顔を見せなかった。

 むしろ、ヴェラーがどこまで立場を守るのか確かめるように見つめている。

「では、聞き方を変えよう。最近、お前の商会は何を買っている?」

「随分と広いご質問ですな」

「麦、油、縄、塩、干し肉、馬の飼料」

 品名を挙げるたび、ヴェラーの笑みが僅かに固くなった。

「昨日は、お前の商会へ向かう麦を関所で見た。クレーマー商会の指定倉庫へ運ばれる鉄材もあった」

「存じております」

「誰のために集めている?」

「それは申し上げられません」

「マティアスか?」

「同じ答えになります」

 ヴェラーの口は固かった。

 どの品を扱っているかは否定しないが、買い手と目的については答えない。

 アルベルトは何度か質問を変えたものの、ヴェラーは顧客の情報を守り続けた。

 やがて、アルベルトがアレクを見る。

「交代だ」

「もうですか?」

「同じことを聞いても、同じ答えしか返ってこない」

「それは俺が聞いても同じでは?」

「だから、違うことを聞け」

 アレクはヴェラーへ向き直った。

 誰のために物資を集めているのか。

 その答えを直接聞くことはできない。

 ならば、ヴェラー自身について聞けばよい。

「ヴェラーさんの商会は、以前から麦や飼料を扱っていたのですか?」

「全く扱わなかったわけではありません。しかし、以前は毛皮と葡萄酒が中心でした」

「最近になって、扱う物を増やした?」

「そうなります」

「なぜです?」

「利益が見込めるからです」

「マティアス様に命令されたわけではない?」

 ヴェラーの目が僅かに変わった。

「なぜ、そう思われます?」

「嫌々やっているようには見えないからです」

 アルベルトとゲオルクの視線がアレクへ集まった。

 ヴェラーはすぐには答えず、アレクの顔を見ている。

「俺たちがマティアス様について尋ねても、ヴェラーさんは守ろうとしています。命令に従わされているだけなら、大公に逆らってまで黙る理由はないと思いました」

「命令へ従っているのなら、命じた者を恐れている可能性もあるのでは?」

「それなら、もっと怖がって話さないようにすると思います。ヴェラーさんは怒らせないように黙っているというより、自分で決めて話さないように見えます」

 ヴェラーの笑みが僅かに深くなった。

「マティアス殿があなたを気に掛ける理由が、少し分かったような気がします」

「俺について、ほかに何か言っていましたか?」

「それは本人へお尋ねください」

「昨日会った商人にも同じことを言われました」

「商人は余計なことを話さない方が長生きできます」

 同じような言葉まで返ってくる。

 おそらく、マティアスの周囲にいる者たちの間で共有されている考え方なのだろう。

 アレクは本題へ戻った。

「では、マティアス様から何を得たのですか?」

「何を、と申しますと?」

「ヴェラーさんが自分から扱う品を増やしたくなるものです。命令ではなく、利益が出ると思える何かを渡されたのでしょう?」

 ヴェラーの表情から笑みが消えたわけではない。

 しかし、先ほどまでより真剣な目でアレクを見ている。

「売り先ですか?」

 アレクが続ける。

「麦や油を買っても、売れなければ損をする。マティアス様が買い手を見つけたから、今まで扱っていなかった物まで買えるようになった?」

「半分は正解です」

「半分?」

「買い手だけではありません」

 ヴェラーは少し考えた後、アルベルトへ顔を向けた。

「これは、マティアス殿の秘密をお話しするものではございません。私がなぜクレーマー商会を利用するのか、その理由としてお聞きください」

「よい」

 アルベルトが頷く。

 ヴェラーは机の上へ、西方の簡略な地図を広げた。

「例えば、この町で麦を百袋買い、ベルグハーフェンへ運ぶといたします」

「はい」

「まず荷車が必要になります。荷車を引く馬と御者も要る。途中で野営させないのなら、御者や護衛が泊まる宿も探さなければなりません」

「街道で盗賊に襲われる可能性もあります」

「そのための護衛も必要です。そしてベルグハーフェンへ着いても、買い手がすぐ受け取れるとは限らない」

「倉庫へ置く必要がある」

「はい。さらに川船へ積み替えるなら、船と船員、荷役を行う人足、船着き場の使用許可まで要ります」

 一つの商品を運ぶだけで、多くの者と契約しなければならない。

 荷車を持つ者が船まで持っているとは限らない。倉庫に空きがあっても、そこまで運ぶ御者がいなければ使えない。川船を確保できても、荷を下ろした先に買い手がいなければ商品は売れない。

「以前は、それらをすべてヴェラーさんが手配していた?」

「私か、商会の者が一つずつ交渉しておりました」

「今は違う?」

「クレーマー商会へ頼めば、条件に合う者を紹介してもらえます」

 ヴェラーの指が地図上を動く。

「この町からベルグハーフェンへ向かう荷車。ベルグハーフェンで空いている倉庫。南へ向かう川船。荷下ろし先で麦を必要としている商人。それらを結びつけるのです」

「マティアス様が、全部持っているわけではない?」

「違います。荷車も倉庫も船も、それぞれ別の者のものです」

「護衛も?」

「必要なら、仕事を求めている傭兵や護衛商会を紹介されます」

「それで手数料を取る」

「無料では、これほど多くの者を働かせ続けられませんからな」

 ヴェラーが笑った。

 マティアス自身が何百台もの荷車や、すべての倉庫と船を所有しているのではない。

 しかし、どこに空きがあり、誰が仕事を求め、どの町で何が不足しているのかを知っている。それらを結びつければ、自分で所有していない荷車や船まで、一つの大きな仕組みのように動かせる。

「空のまま戻る荷車に荷物を積めば、安く運べますね」

 アレクが言った。

「そのとおりです。船も同じです。往路に麦を運び、帰路に酒や木材を積めば、片道だけ荷を載せるより船主の利益が増える」

「倉庫も、空いている場所へ荷を入れれば賃料を得られる」

「はい」

「皆が得をする?」

「少なくとも、得をすると判断した者が参加します」

「マティアス様が命令したからではなく?」

「我々商人は、マティアス殿の家臣ではありません」

 ヴェラーは穏やかに答えた。

「利益が出ると思うから使うのです。損をすると判断すれば使いません」

「だから、命令ではない」

「はい」

 アレクが初めてマティアスと話した時に抱いた印象と同じだった。

 マティアスは、相手を怒鳴りつけて従わせるのではない。相手が何を求めているのかを見つけ、自分から動きたくなる条件を示す。

「物を持っているから動かせるのではなく、持っている人たちをつないでいる」

 アレクが呟く。

「その言い方は、かなり近いでしょう」

 ヴェラーが頷いた。

「だから私は、以前なら扱わなかった麦や油にも手を広げられるようになりました。運ぶ方法と売る方法を、一から自分で探す必要がなくなったからです」

「失敗はないのですか?」

「もちろんございます」

「マティアス様が結びつけた取引でも?」

「荷が腐ることもあれば、船が遅れることもある。売る前に相場が下がる場合もございます」

「それでも使う?」

「自分一人で何も知らずに動くよりは、損をする可能性を減らせます」

 万能な仕組みではない。

 天候も、事故も、相場の変化も消すことはできない。それでも、ばらばらに動いていた者たちを結びつければ、無駄を減らし、今までできなかった取引が可能になる。

「兵を持っていなくても、人を動かせる」

 アレクが言う。

「兵と違い、命令はできませんがな」

 ヴェラーが答えた。

「嫌になれば離れる?」

「ええ。ですから、利益を生み続けなければなりません」

 簡単なことではない。

 一度だけ良い話を持ってくれば済むのではなく、関わる者たちが次も利用したいと思う結果を出し続けなければならない。

 それでもマティアスの周囲には、既に多くの商人、倉庫、荷車、船が集まり始めている。

 旗も領地も持たない商人が、軍とは異なる力で西方の物流を動かしていた。


◇ ◇ ◇


「では、なぜ今、軍で使える物資がこれほど動いている?」

 アルベルトの一言で、部屋の空気が変わった。

 先ほどまで物流の仕組みを説明していたヴェラーの笑みが薄くなる。

「商売でございます」

「それだけか?」

「商人にとっては、それが大きな理由です」

「誰が買っている」

「申し上げられません」

「レオンハルトか」

 ヴェラーは答えなかった。

「シュヴァルツ伯か」

 沈黙が続く。

「王都か」

 ヴェラーは表情を変えない。

「すべてか?」

「殿下」

 ようやくヴェラーが口を開いた。

「一つ、お尋ねしてもよろしいでしょうか」

「何だ」

「今、グランヴァルトで誰が戦を始めたとお考えです?」

「まだ誰も始めていない」

「そのとおりです」

「だが、兵は集められている。物資も動いている」

「はい」

「ならば、戦の準備をしている者はいる」

「それも間違いではございません」

「誰だ」

「皆です」

 アレクはヴェラーを見た。

「皆?」

「王都は、国内の争いが起きた場合に備えます。レオンハルト殿下も、自らの領地や味方を守るために兵を動かすでしょう。シュヴァルツ伯も兵を集めている。ほかの領主たちも、どちらかの軍に攻め込まれる可能性を考えて備蓄を増やしております」

「戦いたい者だけが買っているわけではない?」

「戦を避けたい者ほど、攻められないよう兵を揃えようとする場合もございます」

 一人が兵を集める。

 隣の領主は、それを自分へ攻め込む準備かもしれないと考える。対抗するために兵と物資を集めれば、最初の側は相手が攻めるつもりだと警戒する。

 互いに戦を避けたいと思っていても、相手の考えを完全には知ることができない。

「準備が、次の準備を呼ぶ」

 アレクが言った。

「はい」

「止める人はいないのですか?」

「自分だけが先に兵を帰せば、相手がそのまま攻めてくるかもしれない。その危険を引き受ける者は多くありません」

「商人は?」

「戦が始まる前に、売れる物を動かします」

「戦になれば、もっと値段が上がるのでは?」

「売る前に街道を閉じられるかもしれません。橋を落とされ、倉庫を焼かれれば、商品を持っていても金にはならない。徴発されれば代金を受け取れる保証もありません」

 商人が軍需品を動かしているからといって、戦を望んでいるとは限らない。

 戦が始まることを恐れているからこそ、今のうちに売ろうとする者もいる。

 ヴァイスブルクから西へ向かっていた大量の物資には、複数の理由が混ざっていたのだ。

「俺たちは、物の流れを見れば、誰が戦おうとしているか分かると思っていました」

 アレクが言う。

「それが間違いだと?」

 アルベルトが尋ねた。

「間違いではないと思います。でも、買っている者が攻めたいのか、攻められることを恐れているのかまでは、物だけでは分かりません」

「なら、何を見る」

「兵がどこへ集まっているか。誰の城へ食料が入っているか。運ばれた後、どれくらいの速さで消費されているか。それに、売った商人が何を聞いたか」

「見るものが増えたな」

「減ると思っていたのですけど」

「知るほど、簡単な答えは減る」

「アルベルト様は、それを分かっていて俺を連れてきたのですか?」

「分からないことを増やすためにな」

「普通は答えを教えるものでは?」

「答えが一つしかないならな」

 アレクは机上の地図を見た。

 同じ荷車に積まれた麦でも、戦うための兵糧かもしれず、攻められることを恐れた領主の備蓄かもしれない。不作の町で暮らす者を救う食料という可能性もある。

 品物だけを見て目的を断定することはできなかった。

「マティアス様は、この状況をどう見ているのでしょう」

 アレクの問いに、ヴェラーは首を横へ振った。

「本人へお尋ねください」

「居場所を教えてもらえれば聞けます」

「それはできません」

「ベルグハーフェンにもいない?」

「昨日、別の者から聞かれたのでしょう?」

「同じ答えか確かめたかったのです」

「少なくとも、今はベルグハーフェンにはおられません」

 アルベルトが口を挟む。

「マティアスは、レオンハルトと関係を持っているな?」

 ヴェラーの表情が僅かに固くなった。

 返事はなかった。

「答えなくてもよい」

「殿下」

「顔を見れば、全く無関係ではないことくらいは分かる」

 ヴェラーは苦笑した。

「アレク殿の前で、それをなさいますか」

「こいつを見て覚えた」

「俺のせいにしないでください」

 軽いやり取りを交わしながらも、アルベルトの目は鋭いままだった。

「レオンハルトのために物資を集めているのか?」

「申し上げられません」

「正式な臣下ではないな?」

「それも、私からお答えすることではございません」

「シュヴァルツ伯側の商人とも取引しているか?」

「取引相手についてはお話しできません」

「王都ともか?」

「同じでございます」

 アルベルトは椅子へ背を預けた。

「アレク、お前はどう見る」

「本人の前で言うのですか?」

「本人ではない。ヴェラーだ」

「ヴェラーさんの前でも言いにくいです」

「間違っていれば、顔に出るかもしれんぞ」

「それを言ったら、余計に顔へ出さなくなるでしょう」

 ヴェラーの口元が僅かに動いた。

 アレクはこれまで聞いた話を頭の中で整理する。

「マティアス様は、今のところ誰か一人のためだけに商人をつないでいるわけではないと思います」

「理由は?」

「もしクレーマー商会を使えば、すべての情報がレオンハルト殿下へ渡ると知られたら、シュヴァルツ伯側や王都に近い商人は利用しなくなります」

「そうだな」

「広い商人網を作るためには、簡単に一人の旗の下へ入ったと見せられない」

「レオンハルトとは無関係だと?」

「それも違うと思います」

 先ほどレオンハルトの名が出た時だけ、ヴェラーの表情が変わった。

「関係はある。ただ、どのような関係なのかは分かりません」

「悪くない」

「合っていますか?」

「本人に聞け」

「またそれですか」

「私も確かな答えを持っていない」

 アレクはヴェラーへ視線を移した。

 ヴェラーは肯定も否定もしなかった。

 旗を持たないからといって、どこにも関係していないとは限らない。

 むしろ複数の旗の間を移動できるからこそ、マティアスは兵や領主には作れないつながりを築けるのかもしれない。


◇ ◇ ◇


 面会は一刻近く続いた。

 マティアスの居場所も、誰と正式に手を結んでいるのかも、集められた物資の最終的な行き先も分からなかった。

 それでも、来る前より見えるものは増えている。

 マティアスは単に多くの商品を買い集めているのではない。商人、荷車、倉庫、船、護衛、買い手を結び、それぞれが自分の利益のために動く流れを作っていた。

「本日はありがとうございました」

 ヴェラーが立ち上がる。

「まだ聞きたいことはある」

 アルベルトが言う。

「またお越しください。その時も、お話しできる範囲でお答えいたします」

「逃げるつもりではないだろうな」

「商会の本店を置いておりますので、簡単には逃げられません」

 アルベルトも席を立つ。

 アレクは最後に一つだけ確かめたいことを思い出した。

「ヴェラーさん」

「何でしょう」

「マティアス様は、なぜこれほど多くの商人から信用されているのですか?」

 ヴェラーはすぐには答えなかった。

 窓の外に見える倉庫へ目を向け、言葉を選んでいる。

「信用されている、と言い切るのは少し違うかもしれません」

「違うのですか?」

「商人は、取引相手を無条件には信用しません。マティアス殿の言葉だからといって、確かめずに金を出す者ばかりではない」

「では、何を信じているのでしょう」

「損をしても、次に取り返す道を持ってくる男だと思われているのです」

「次の道?」

「商売は必ず成功するものではございません。荷が腐ることもある。船が沈むこともある。予定していた買い手が破産することもあれば、相場が急に変わることもあります」

「マティアス様の取引でも、失敗する」

「当然です」

「その時に、どうするのですか?」

「逃げません」

 ヴェラーの答えは短かった。

「失敗を認めたうえで、次の取引を持ってくる。今回失ったものを一度ですべて取り戻せなくても、別の荷、別の町、別の買い手を探し、関係を切らないようにする」

「必ず儲けさせるからではない?」

「そんなことを約束する者こそ信用できません」

 ヴェラーが笑う。

「失敗した時に逃げず、次を考える。それができるから、我々はもう一度話を聞こうと思うのです」

 失敗を隠さず、何が悪かったのかを考え、別の方法を試す。

 アレク自身も、ヴァイスブルクで何度も同じことを繰り返してきた。帳簿を揃えようとして反発され、橋を直そうとして資金と人手が足りず、そのたびにアルベルトやヨハンたちと方法を考え直した。

 マティアスが何を考えているかは、まだ分からない。

 それでも、自分がこの男を気にしている理由の一つが、僅かに見えたような気がした。

「ありがとうございました」

 アレクは頭を下げた。

「次にお会いする時は、マティアス殿本人へ質問できるとよろしいですな」

「居場所を教えていただければ、すぐ聞きに行けます」

「それはできません」

「最後まで固いですね」

「信用が商売道具ですので」

 ヴェラーは笑ったまま、最後までマティアスの居場所を明かさなかった。


◇ ◇ ◇


 商会を出ると、外で待っていた騎士たちが馬を用意した。

「どうだった?」

 ゲオルクに聞かれ、アレクはヴェラー商会の倉庫を見た。

 使用人たちが毛皮を運び込み、別の扉からは油樽を積んだ荷車が出てくる。異なる品物が同じ商会を通り、別々の方角へ流れていた。

「分からないことが増えました」

「それはよかった」

「アルベルト様と同じことを言わないでください」

「何か一つくらい分かっただろう」

「マティアス様は、物をたくさん持っているから動かせるわけではない、ということです」

「では、何を持っている?」

「誰が何を持っていて、誰が何を欲しがっているかという情報です」

「それを使って人を結ぶ?」

「はい。自分の倉庫や船でなくても、持ち主に利益が出れば使える。商人も命令されたからではなく、自分のために動きます」

「兵を養うより安いかもしれんな」

「でも、命令はできません」

 アルベルトが会話へ入る。

「嫌になれば離れる。利益が出ないと判断すれば、別の商人へ行く」

「だから、マティアス様は利益を出し続けなければならない」

「簡単ではないだろう?」

「簡単なら、もう誰かが同じことをしていますね」

「ようやく分かったか」

 アルベルトが笑った。

「アルベルト様は、最初から知っていたのですか?」

「知っていたから来たのではない。何かをしていると気づいたから見に来た」

「では、アルベルト様も今日知った?」

「お前よりは先に気づいていた」

「少しだけ?」

「随分前からだ」

「本当ですか?」

「疑うなら、自分で確かめろ」

 結局、またそこへ戻る。

 アレクは苦笑しながら馬へ乗った。

 一行が町の宿へ向かおうとした時、後方から馬蹄の音が近づいてきた。

「アルヴェイン大公殿下!」

 一騎の兵が声を上げながら走ってくる。

 アルベルトが騎士たちを止めた。

 兵は一行の前で馬を下り、荒い息を整える間もなく頭を下げる。

「王家の関所より、急ぎの報告です」

「何があった」

「北街道でシュヴァルツ伯軍の移動を確認しました」

 周囲の空気が一変した。

「兵数は?」

「確認できただけで約二千五百。シュヴァルツ伯本人の濃紫色の旗も見えたとのことです」

「進行方向は?」

「南東です」

 ゲオルクがすぐに地図を取り出し、近くの荷箱の上へ広げた。

 北西にあるシュヴァルツ伯領から南東へ延びる街道は、途中で複数に分かれている。そのまま進めば王都方面へも行けるが、別の道を選べばレオンハルトに近い領主の領地へ向かうこともできる。

「目的地は分からないのか?」

「斥候が追っております。しかし、まだ進路を断定できません」

「王都には?」

「既に別の使者が向かいました」

「分かった。戻ってナーゲル隊長へ伝えろ。こちらでも変化を確認したら知らせる」

「はっ」

 兵が再び馬へ乗り、関所へ引き返していく。

 アルベルトは地図を見つめたまま動かなかった。

「シュヴァルツ伯本人が、二千五百人を率いて動いた」

 アレクが言う。

「ああ」

「追わなくてよいのですか?」

「我々は二十騎だ。追って何をする」

「進路を確かめるくらいなら」

「王家の斥候が追っている。我々が加われば、シュヴァルツ伯側に敵対行動だと受け取られるかもしれん」

「では、予定を変えますか?」

「変えない」

 アルベルトは地図上のベルグハーフェンへ指を置いた。

「明日、ベルグハーフェンへ向かう」

「軍が動いたのに?」

「軍が動いたからだ」

 アレクは二千五百という数を考えた。

 兵士が二千五百人。

 騎兵や荷馬、荷車を動かす人足まで加えれば、実際に食料を必要とする人数はさらに増える。

「二千五百人分の兵糧が要る」

「そうだ」

「馬の飼料も」

「武器を修理する鉄や炭、負傷者へ使う布や薬も必要になる」

 ゲオルクが付け加えた。

「すべてをシュヴァルツ伯領から持ってきたのでしょうか」

「それを確かめる」

「現地で買うなら商人が必要です」

「ああ」

「川を使って運ぶなら、ベルグハーフェンを通る可能性もある」

「ああ」

 アルベルトが地図を畳んだ。

「軍勢そのものを追えば、今どこにいるかは分かる。だが、何日動けるのか、誰が支えているのかまでは分からん」

「だから、物を見る」

「二千五百人分の物資は、簡単には隠せない」

 食料はどこかで買われ、荷車か船で運ばれる。途中で倉へ入り、兵へ配られる。何千人分もの流れを、すべて人目から消すことはできない。

「ベルグハーフェンへ行けば、シュヴァルツ伯軍を支えている者が分かるかもしれない」

「レオンハルト殿下や王都のための物資も混ざっています」

「だから比べる。誰の荷か決めつけるな」

「分かりました」

 ヴェラーから聞いたばかりだった。

 動いている物資のすべてが、戦を望む者のためとは限らない。

 しかし、本物の軍勢が動き始めた以上、その兵を支える流れも必ずどこかにある。

 王家、レオンハルト、シュヴァルツ伯は、それぞれの旗のもとで兵を動かしている。

 一方のマティアスは、まだ自分の旗を持たない。

 それでも、商人、荷車、倉庫、船をつないだ流れは、三つの旗の間へ広がりつつあった。

 その流れが、どの軍を支えようとしているのか。

 アレクたちは翌朝、答えの一端を探すため、ベルグハーフェンへ向かうことになった。

第四話を読んでいただき、ありがとうございました。

マティアスは、荷車、倉庫、船、護衛のすべてを所有しているわけではありません。それぞれを持つ者へ利益の生まれる道を示し、自ら動きたくなる流れを作っています。旗も領地も持たない商人の力を知った直後、シュヴァルツ伯本人が率いる約二千五百人の軍が動き始めました。

次回、アレクたちは大量の物資が集まる交易都市ベルグハーフェンへ向かい、河港と倉庫を流れる荷を追います。


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