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『知らない世界で、前世の知識が武器になる』 ~剣と銃で乱世を生き抜く転生領主の成り上がり~  作者: 相田 ソウ
第七篇 乱世を越える黒獅子

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第二十八話 恩ある国へ

お読みいただき、ありがとうございます。

新たな領地での仕事を進めるアレクのもとへ、一通の急報が届きます。

 十八歳の誕生日から数日後、アレクは執務室で、山村へ向かう荷車の手配について報告を受けていた。

「最初は一台で運びます。荷を積んだ状態で、どこまで通れるかも確かめる予定です」

 オスカーが地図へ指を置いた。

 村へ続く道には、細い線に沿って幾つか印がついている。荷車同士がすれ違えない場所と、雨が降ると水が溜まる場所だった。

「村の方には、もう伝えてありますか」

「はい。道を知る者と、石を運び出す者を頼んでおります。働いた分の賃金も、あらかじめ知らせました」

「買う分の代金とは、分けてください」

「そのようにしております」

 アレクは頷いた。

 まだ、鉱山を再び動かせると決まったわけではない。

 黒い石がどれほど採れるのか。工房で使える物なのか。村から運び出しても、買い手の払える値段に収まるのか。

 確かめることは多かった。

 それでも、村へ仕事を頼む書状は、すでに出されていた。

「昔、鉱山で働いていた者にも、話を聞けることになりました」

「坑道の場所を、よく知っている方ですか」

「はい。ただ、御本人は、自分も中へ入るつもりでおられるようです」

 アレクは顔を上げた。

「無理に入る必要はないと、伝えてください。外から教えていただくだけでも助かります」

「承知いたしました」

 オスカーが書き留めた時、廊下で足音がした。

 普段、書類を運んでくる者の歩き方とは違った。

 扉の外で短いやり取りがあり、すぐに声がかかる。

「マティアス様から、急使が参っております」

 アレクは椅子から立った。

「通してください」

 入ってきた男の外套には、乾いた泥がついていた。

 深く頭を下げると、封じた書状を差し出す。

「至急、お越しいただきたいとのことです。御領内から出せる兵についても、現在の人数をお持ちください」

 アレクは封を切った。

 最初の数行を読んだところで、紙を持つ手が止まった。

 アルヴェイン軍の補給街道が、ベルン軍によって遮断された。

 前線には、アルベルトがいる。

 ◇ ◇ ◇

 ベルン伯爵領へ進出したアルヴェイン軍の陣では、昼を過ぎても、後方から来るはずの荷車が現れなかった。

 城門の外で待っていた兵が、街道へ目を向ける。

 道の先に土煙が見えた。

 だが、やって来たのは荷車ではなく、二騎の騎兵だった。

 一人は腕を布で吊っていた。

 馬から下りる時、そばの兵へ手を貸してもらわなければ、足を地面へつけられなかった。

 報告を受けたアルベルトは、すぐに二人を呼び入れた。

「どこまで行った」

「後方の渡河点までです。街道を、ベルンの兵が塞いでおります」

 傷のない方の騎兵が答えた。

「荷車は」

「手前の宿場へ引き返したと、道を逃れてきた者が申しておりました。近づいて確かめようとしましたが、川のこちら側にも敵の騎兵が出ております」

 アルベルトは卓に広げられた地図を見た。

 アルヴェイン軍が落とした城は二つ。アルベルトは、そのうち前線に近い城に入っていた。

 兵糧も矢も、後方の城を経て、一本の街道を通って運ばれてくる。

 街道から外れれば、丘と林が続く。人が歩ける道はほかにもあったが、重い荷車を幾十台も通せるとは限らなかった。

「川向こうだけではないのだな」

「はい。すでに渡った兵が、街道沿いへ広がっております」

「人数は」

「街道に並ぶ歩兵のほか、こちら側にも騎兵が出ておりました。林に隠れた兵もおり、総数は確かめられておりません」

 隣にいた将が、地図の後方を指した。

「今から兵を戻し、両側から攻めれば」

「戻す兵を、どこから出す」

 アルベルトが尋ねた。

 将の指が止まる。

 前方では、ベルン軍がまだ動いていた。

 城の守備を薄くし、街道へ大勢を向かわせれば、その間にこちらを攻められる。

 二つの城を取ったことで、守らなければならない場所も増えていた。

「後ろを向いたところへ、前から来るか」

 アルベルトは低く言った。

 敵は城を奪い返すのではなく、城を守るアルヴェイン軍への補給を断とうとしていた。

「兵糧の残りを出せ。予定ではなく、今、倉にある分だ」

 控えていた者が走った。

「負傷兵を後ろへ送る荷車は、まだ出すな。街道の様子が分かるまで城内へ留めろ」

「承知しました」

「川沿いの道を知る者を集める。荷車を通せるかと、使者だけなら抜けられるかは、分けて確かめさせろ」

 次々に人が出ていった。

 腕を吊った騎兵だけが、立ったまま残っていた。

 アルベルトはそちらを見た。

「報告は受け取った。手当てを受けてこい」

「しかし、まだ道の途中で見た兵について」

「座れ」

 兵が戸惑った。

 アルベルトは近くの椅子を示した。

「倒れてからでは、話も聞けん。手当てをする者を、ここへ呼べ」

 兵はようやく腰を下ろした。

 外から、荷を積み直す者たちの声が聞こえてきた。

 アルベルトは書記官を呼んだ。

「本国へ急使を出す。グランヴァルトへの救援要請もだ」

 将が顔を上げた。

「援軍を求められるのですか」

「道を取り戻せば、こちらの兵を動かせる。意地を張って待ち、兵糧を減らす理由はない」

 アルベルトは、地図の街道へ指を置いた。

「奪った城を守るために、兵を飢えさせるつもりはない」

 ◇ ◇ ◇

 マティアスのもとへ着くと、アレクは馬を預け、そのまま軍議の部屋へ向かった。

 中には、すでにヴィクトル、エイドリアン、カスパル、ロベルトがいた。

 卓には地図が広げられている。

 以前、増員の相談をした時と同じ部屋だったが、椅子へ深く腰を下ろしている者はいなかった。

「来たか」

 マティアスが顔を上げた。

「書状は読みました。アルベルト様は、御無事なのですか」

「届いた報告ではな。城は保っている。ただし、その報告が出てから日が経っている」

 アレクは唇を結び、卓へ近づいた。

 マティアスは別の書状を開いた。

「陛下より命令が下った。アルヴェインからの要請を受け、こちらから救援を出す」

 王の印が見えた。

「目的は、補給街道の奪還だ。アルヴェイン軍へ兵糧を通し、負傷者を後ろへ運べるようにする。勝手に別の城を攻めるな」

 五人が頷いた。

 マティアスは地図の街道を指した。

 アルヴェイン側から前線へ伸びる道が、川を越え、丘の間へ入っていく。

「敵は、この渡河点と、その先の街道を押さえている。ただし、こちらへ届いた図が、今の配置を示しているとは限らない」

「先に確かめます」

 カスパルが言った。

「街道の敵だけでなく、脇道を通ってこちらへ回れる兵がいるかも見ます」

「そうしろ。道が開いて見えても、荷車を通せるとは限らん。橋と渡し場も確かめろ」

「承知しました」

 ロベルトは、その少し後ろにある宿場へ指を置いた。

「荷車はこちらへ集められます。街道が開いてから荷を用意するのでは、前線で待つ日数が増えます」

「荷車を敵に奪われるな。待機させる場所にも護衛を置け」

「護衛をつけ、進める場所までです。その先は、知らせを受けてから動かします」

 返答を聞き、マティアスは頷いた。

 アレクは持参した兵の名簿を置いた。

 募集を始めた者の数と、今すぐ出せる兵の数は、別に記していた。

「私の騎馬鉄砲隊は、百人を出せます」

「補充した者の訓練は」

「ギルベルトが確かめています。射撃だけでなく、馬の扱いと隊での移動も含め、出せる者で百人です」

 今回の募集で集まった新兵は、出陣する百人には含めていなかった。

「留守の兵まで連れていくな」

「城と領内の守備は残します」

 マティアスは名簿を確かめ、書記官へ渡した。

「鉄砲隊は、合わせて六百人を出す」

 アレクは顔を上げた。

「こちらに属する徒歩の鉄砲兵三百人。それに、陛下から預けられる二百人だ。アレクの百人と合わせ、お前が指揮を執れ」

「王直属の兵も、こちらへ来るのですか」

「陛下の命令で、合流地点へ向かっている。各隊の到着予定は、使者に確かめさせているところだ」

 マティアスはアレクを見た。

「五百人は今回、お前に指揮を預ける兵だ。損害と物資の使用は、所属ごとに分けて報告しろ」

「承知しました」

 アレクは、六百人という数を紙へ記した。

 自分の騎馬鉄砲兵が百人。

 マティアスとレオンハルトの徒歩の鉄砲兵が、合わせて五百人。

「今回出す兵は、総勢二千四百だ」

 マティアスが続けた。

「鉄砲兵六百。槍や弓を持つ歩兵が千五百。鉄砲隊とは別の騎兵が三百だ。荷を運ぶ者は、この数に含めない」

 ヴィクトルが書き留めた。

「現地へ出る軍は、ヴィクトルがまとめろ。全軍を動かす判断と、アルヴェイン側との連絡を任せる」

「承知しました」

「こちらからも連絡役をつける。俺は後続の物資と、本国から来る命令を取りまとめる。先に出た兵だけで何もかも済ませようとするな」

 ヴィクトルは、地図を見直した。

 アレクも顔を寄せる。

 六百人の鉄砲隊を、どこへ置けばよいか。

 前線へ着いてから考え始めるのでは遅かった。

 ◇ ◇ ◇

「馬で動ける兵を、先に出してはどうでしょう」

 アレクが言うと、エイドリアンが頷いた。

「歩兵と荷車に合わせて進む必要はない。前方の様子も、早く確かめられる」

 カスパルが、街道から外れた道を指した。

「ただし、馬が通れればどこでもよいというわけではない。土地に詳しい案内役が要るな」

「国境で、アルヴェイン側の者と引き合わせる」

 マティアスが答えた。

「先行するのは、騎馬鉄砲隊百人と騎兵二百人だ。エイドリアンがまとめ、アレクとカスパルも同行しろ」

 エイドリアンが返事をした。

「残る騎兵百人は、歩兵と荷車の護衛へ回す。ヴィクトルとロベルトは後続を率いろ」

 アレクは徒歩の鉄砲隊が進む道を見た。

 馬を持つ自分たちが先へ出れば、当然、到着する時刻は分かれる。

「徒歩の五百人は、ギルベルトに任せます。各隊の隊長と引き合わせ、合流後の指揮も先に確かめておきたいです」

「そうしておけ」

 マティアスは、先行する三人へ視線を移した。

「三百で敵全軍を相手にするな。まず、どこまで進めるかと、何を守らねばならんかを確かめろ。孤立した味方がいれば救え。ただし、敵を深追いするな」

「承知しました」

 アレクは答えた。

 ヴィクトルが尋ねた。

「先行隊との連絡は、どこで受けますか」

 エイドリアンが地図へ指を置く。

 使者を戻す道と、次の知らせを待つ場所が決められていった。

 ロベルトは、荷車を止める宿場へ印をつけた。

「ここへ水と飼葉も用意させます。戻ってくる使者の馬を、すぐ替えられるように」

「早いな」

 カスパルが言った。

「馬が倒れてから探す方が面倒だ」

 ロベルトは顔を上げずに答えた。

 その言い方に、アレクの口元がわずかに緩んだ。

 以前と変わらないところがある。

 マティアスが最後に地図を見渡した。

「味方の兵糧が尽きる前に、街道を取り戻す。各自、支度を急げ」

 誰も笑わなかった。

 それぞれが、自分の書類を取った。

 ◇ ◇ ◇

 軍議が終わると、四人は兵を集めるために部屋を出ていった。

 アレクは残り、マティアスが書状を封じるのを待った。

「まだ何かあるか」

「アルベルト様のことです」

 マティアスの手が止まった。

「前線におられると聞いて、すぐにでも向かいたいと思いました」

「顔を見れば分かった」

 アレクは少し目を伏せた。

 隠していたつもりではない。

 それでも、軍議の最初から気づかれていたと知ると、落ち着かなかった。

「アルベルト様には、何度も助けていただきました」

 この世界で、自分を使うと決めてくれた人だった。

 失敗を叱られたこともある。知らないことを、そのままにしておくなと言われたこともある。

 剣を与えられ、仕事を任され、帰る場所のある暮らしを知った。

「今度は、私が助けに行きます」

 マティアスは、封じた書状を卓へ置いた。

「ならば、焦るな」

 声は静かだった。

「助けに行く者まで帰れなくなっては意味がない。お前が連れていく兵にも、待つ者がいる」

「はい」

「アルベルト殿が必要としているのは援軍と兵糧だ。それを城まで届けるために、お前たちを出す」

 アレクは頷いた。

「もう一つ、ございます」

「何だ」

「戻りましたら、エリーゼ様のことで御相談があります」

 マティアスはアレクを見た。

 少し間があった。

「帰ってから聞こう」

「ありがとうございます」

「相談することを増やして、帰らんというのは許さんぞ」

 アレクは顔を上げた。

 マティアスは、次の書状を手に取っていた。

「兵の支度を確かめろ」

「はい」

 アレクは頭を下げ、部屋を出た。

 ◇ ◇ ◇

 出陣までの間、書状と使者が何度も行き来した。

 王直属の鉄砲兵が進む道。

 各家の兵が集まる日。

 アルヴェイン側の案内役と落ち合う場所。

 先行隊が出る時点で、後続の兵がどこまで来ているかも、順に確かめられていった。

 アレクは一度、自分の城へ戻った。

 庭には、出陣する騎馬鉄砲隊の馬が並び始めていた。

 兵が鞍を確かめ、荷を左右へ振り分けている。

 新しく城へ来た者たちが、その様子を遠巻きに見ていた。

 アレクは兵の間を歩き、顔を確かめた。

 戦場から一緒に戻った者もいれば、補充されて訓練を終えた者もいる。

 緊張した顔を見つけ、足を止めた。

「馬の様子はどうですか」

「問題ありません」

「自分の方は」

 兵が一瞬、言葉に詰まった。

「……馬よりは、落ち着いておりません」

「私も、出る前は落ち着きません」

 兵は驚いたようにアレクを見た。

「慣れておられるのかと」

「忘れたことがないか、毎回気になります」

 アレクは兵の荷へ目を向けた。

「だから、確かめましょう。隣の人の分もです」

「はい」

 兵の返事が、少しはっきりした。

 近くにいた男が、隣の鞍へ手を伸ばした。

「ここの紐、もう一度締めろ」

 言われた兵が振り返り、結び直す。

 アレクはそれを見届けてから、城内へ戻った。

 執務室では、オスカーが留守中の書類を揃えていた。

「鉱山の調査は、そのまま進めてください」

「運び出す石についても、予定どおりでよろしいでしょうか」

「はい。私が出るからといって、村へ頼んだ仕事を止めないでください」

 オスカーが頷く。

「ただし、危険な坑道を開くことや、大きな工事は別です。調べた結果を、先に知らせてください」

「承知いたしました。工房からの報告も、マティアス様のもとを通してお届けします」

 アレクは卓の書類を見た。

 出陣すれば、読めなくなる報告もある。

 すぐに返事を出せない日も続くだろう。

「日々の支払いや、すでに決めた仕事は進めてください。私の返事を待つ必要はありません」

「お預かりいたします」

 オスカーは、書類を自分の側へ揃えた。

 その動きを見て、アレクは卓から手を離した。

 ◇ ◇ ◇

 翌朝、アレクは出陣の支度を整えた。

 ロルフから贈られた火縄銃を受け取り、目を落とす。

 装飾の施された部分にも、実際に使ってきた跡が残っていた。

 贈られた日のまま、飾っておいた物ではない。

 今回も、兵と共に持っていく。

 マルタが外套の肩を整えた。

「動きにくいところはございませんか」

「大丈夫です」

 アレクは腕を動かした。

 マルタは一歩退き、全体を確かめた。

「こちらのお手紙は、いかがいたしましょうか」

 卓の端に置かれた一通を示す。

「それは、使者へお願いします」

 エリーゼへ宛てた手紙だった。

 まだ、城へ招く日を決められそうにないこと。

 留守の間も、町と城の仕事は続くこと。

 戻ったら、また手紙を書くこと。

 兵の数や進む道は書かなかった。

 封をした手紙を、マルタが受け取る。

「確かに、お預けいたします」

「お願いします」

 アレクは扉へ向かった。

 廊下にはオスカーがいた。

「城のことは、お任せください」

「よろしくお願いします」

 短く答え、階段を下りる。

 庭で兵が姿勢を正した。

 林檎の花と、その周りの五つの蕾を描いた旗が、朝の風を受けていた。

 ◇ ◇ ◇

 合流地点には、エイドリアンの騎兵がすでに集まっていた。

 カスパルは案内役から道の様子を聞いている。

 少し離れた場所では、後続へ渡す物資をロベルトの兵が確かめていた。

 アレクが到着すると、ギルベルトが歩み寄った。

「徒歩の各隊長と、話を済ませました。揃った隊から、ヴィクトル様の兵と共に進みます」

「五百人が合流したら、まず銃と道具を確かめてください。移動中に傷んだ銃や道具があれば、修繕が必要な物として分けてください」

「承知しました」

「道の様子はこちらから知らせます。兵の疲れを見ながら進んでください」

 ギルベルトは頷いた。

 アレクの後ろにいる騎馬鉄砲兵へ、一度目を向ける。

「そちらも、お気をつけて」

「はい」

 アレクは手綱を取り直した。

 エイドリアンが馬を寄せてくる。

「先へ出す斥候の支度ができた。こちらも出るぞ」

 三百人の先行隊が、道へ向けて列を整えた。

 後続の鉄砲兵と歩兵は、護衛の騎兵や荷車と共に進む。

 ヴィクトルが先行隊の前へ出た。

「知らせを待っている。道を開く時は、後ろにも兵がいることを忘れるな」

「頼りにしています」

 アレクが答えると、ヴィクトルは頷いた。

 ロベルトが横から言った。

「荷も持っていく。腹を空かせて待っている相手へ、兵だけ届けるわけにはいかんからな」

「その荷を、通せるようにします」

「途中で敵へ渡すなよ」

 カスパルが言うと、ロベルトは眉を上げた。

「そちらが道を間違えなければな」

 エイドリアンが小さく息を吐いた。

「続きは戻ってからにしろ」

 笑いが短く起きた。

 それぞれが、自分の兵の方へ戻っていく。

 アレクは馬上から、後続の集結地を振り返った。

 旗の下へ兵が集まり、荷車が入ってくる。

 出発の声が上がった。

 先頭の馬が動き、騎兵の列が続く。

 林檎の花の旗も、街道へ出た。

 かつて、アルベルトの後ろについて城へ入った。

 何をすればよいかも分からず、与えられた仕事を一つずつ覚えた。

 今、背後には、自分の命令を待つ兵がいる。

 そのさらに後ろから、預けられた鉄砲兵と、共に戦う者たちが来る。

 アレクは前を向いた。

 アルベルトのいる城は、まだ見えなかった。

 そこへ続く道を、取り戻しに行く。

 馬の腹へ、静かに踵を当てた。

第二十八話を読んでいただき、ありがとうございました。

今回で第七篇は一区切りとなります。

次篇も、アレクたちの歩みを見守っていただけましたら幸いです。


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