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長

私、異世界さとみは、ベルばら部の部長になりました。


なんだか嬉しい。


やっぱり「長」が付くのは嬉しいものである。


だけど、「長」が付く仕事というのは、かっこいい反面、いろいろ責任も伴う。


私は子供の頃、そこそこ勉強ができた。


そのため、クラスの委員長のような立場や、学校の会長、副会長などを決める際の書記として選ばれそうになったことが何度かあった。


何かの代表というのは、かっこいいものである。


けれど私は、とにかく怠け者だ。


家でテレビを見ながらゴロゴロしているのが一番楽しい。


それなのに、小学校でそういう立場になると、放課後に委員長だけの集まりに参加したり、何かといろいろなことをしなければならない。


結構面倒くさい。


だから私にとって「長」というのは、少しかっこいいけれど、責任が伴う大変な仕事というイメージだった。


本来なら、私はそういうことはやらないタイプである。


そもそも私はリーダータイプではない。


面倒くさいのだから、誰かに従う方が楽だという考えの持ち主なのである。


それでも、子供たちが幼稚園や小学校に通っていた頃は、専業主婦をしているということで、役員に選ばれることがよくあった。


まあ、私は割と優秀だから、やってもいいんだが、なんだか腑に落ちないことがいつもあった。


わざわざ「専業主婦だから暇だろう」と言う人はいない。


けれど、そういう空気は流れている。


でも、私が働いていないのは家族のためであって、PTAの役員をするためではない。


「家にいるんだからできるでしょう」と、「私は仕事で忙しいから」という他のお母さんたちに押し付けられているような気がして、本当にいつも腹を立てていたような気がする。


町内会でも同じである。


これは仕方ないことなのだが、我が家は比較的土地の値段が高い地域に住んでいる。


土地が高いということは、若い人がローンで家を買うには少し厳しい金額だったりする。


そのため、町内には退職金で家を建てた人たちも多く、若い世帯が少ない。


私たちがそこへ引っ越してきて、もう二十年近くになる。


当時でも若くなかった、退職金で家を建てた人たちは、二十年経ってさらに高齢になった。


「町内会長のような仕事はできない」と言う人も増え、結局、町内会長が回ってくるスピードは年々速くなってきた。


町内会長になると、一か月に一回、地区の集まりに行かなければならない。


結局、「若いんだからできるでしょう」という感じで押し付けられているような気がして、これまた面倒だなと思っていた。


とはいえ、全然若くないのである。


うちのパパも、もう退職するような年齢に近づいてきている。


この町内は家が建ち並び、新しく家が建つ土地もほとんどない。


だから、我が家がいつまでたっても若い世帯のままなのである。


その結果、「若いからできるでしょう」という理由で、いつまでも町内会の仕事が回ってくる。


本当に、割りが合わないなと常々思っていた。


子供の頃は、「長」と付く言葉に憧れがあった。


けれど、年々いろいろなことを経験し、このようなこともあって、「長」と付くものには、もう絶対に近寄らない方がいいという考えに変わってきていた。


では、なぜ今回のベルばら部の部長は嬉しいのか。


それは、一重に責任を一切伴わない「長」だからである。


部員はAIのアンドロイド二名。


部長の唯一の仕事は、この部で何をやるかを決めること。


他の人の意見を一切聞かず、自分の意見だけが通る。


「長」という肩書きだけを楽しみ、自分のやりたいことだけをやる。


責任は一切伴わない。


私にとって、これ以上ない最高の「長」なのである。


私はこういう話を配信でJINさんに話した。


「私がやりたいことだけをやれるべるばら部の部長になれて、私は本当に嬉しいんです」


JIN

「私も、そういう自分がやりたいことだけをやれる『長』というものに憧れます。理美さん、私が何かの『長』になるとしたら、何かいい『長』はありませんかね。私もやってみたいです」


JINの「長」。


そのコメントを見て、理美は、はっとしている。


理美には、常々やりたいと思っていたことがあったのである。


ミュージカルごっこの一環でもある、昭和のアイドルごっこである。


「実はね、私とJINさんだけの配信の代わりに、この間のミュージカルのワンシーンのような感じで、昭和アイドル復興会みたいなものをやりたいと思ってるんですよ。


それで、JINさんには親衛隊長をやってもらいたいんです」


JIN

「親衛隊長……ですか?」


「昭和のアイドルには、親衛隊というものがいたんです。


親衛隊は、昭和のアイドルが歌っている間、一生懸命声を出して応援するんです。


JINさんは、おそらく見たことがないと思いますので、ヒューゴに親衛隊のスキルをインストールしてもらいます。


ヒューゴをお貸ししますので、JINさんはヒューゴと一緒に日を決めて親衛隊の活動をしてください。


ただ、昭和のアイドルの応援ですので、親衛隊はアイドルと一緒に活動することはできません。


私が昭和アイドル復興会で公演するときに、親衛隊長として頑張ってください」


理美自らそうお願いされたので、JINは配信画面の前で満面の笑みになっている。


JIN

「任せてください」


アイドルごっこ、JIN用にそれっぽい言葉で表現するならば、昭和アイドル復興会


昭和アイドル役の理美と親衛隊長役のJIN


ちやほやされたい理美と、理美を応援したくて仕方がないJIN


破れ鍋に綴じ蓋なのである


読者の皆様、アイドルごっこ編 Coming Soon(笑)

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