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11/28

草

 私の家は建売住宅である。


 妊娠をきっかけに、それまで住んでいたマンションを出て、一軒家を購入しようという話になった。


 私自身、家にはそれほどこだわりがなかった。


 注文住宅だと、家をこうしたい、ああしたいと細かいことを全部決めなければいけないし、家を建てる前には地鎮祭みたいなこともあるし、大工さんに十時や三時のお茶やお菓子を持って行ったりすることもある。


 夫婦そろってそういう面倒なことが苦手だったので、建売住宅を購入した。


 私はかなりの面倒くさがり屋である。


 自分でも怠け者だという自覚はある。


 もちろん、やらなければいけないことはちゃんとやる。


 でも、やらなくてもいいことなら、なるべくやりたくない。


 一方で、努力が嫌いというわけではない。


 ピアノの練習も真面目にやったし、勉強も努力した方だと思う。


 つまり、自分がレベルアップできることや、自分のためになることなら努力はできる。


 でも、それ以外のことは、なるべくやりたくない。


 できるだけ怠けていたい。


 だから、一つだけ絶対に譲れない条件があった。


 庭がないことだ。


 庭があると草が生える。


 その草むしりが、とにかく嫌だった。


 花を植えれば、水やりもしなければいけないし、剪定もしなければいけない。


 うちの母は畑仕事が好きで、家の周りにもたくさん花を植え、植木鉢でもいろいろな花を育てている。


 水やりだけで一時間くらいかけることもある。


 私には、ああいう生活は想像もできない。


 ああいうことだけは絶対にしたくなかった。


 そんな私の希望に一番ぴったりだったのが、今住んでいる家だった。


 玄関には小さな花壇みたいなのが付いていて、夏椿が植えられ、その周りには砂利が敷かれていた。


 私の中では、かなり決め手となった。


 購入した当時は、これでもう雑草の心配をしなくて済むと思っていた。


 ところが、実際に住み始めると、世の中の雑草というものを甘く見ていたことに気づいた。


 花壇の砂利の間から生えてくるのはもちろん、玄関の階段の隙間や、駐車場のブロックの隙間からも雑草は生えてくる。


 たぶんブロックの下は土なのだろう。


 夏なんて最悪である。


 もし具合が悪くて一週間くらい外に出られなかったとしたら、雑草は膝丈くらいまで伸びてしまい、歩くだけで足に触れてしまうくらいになる。


 そうなると、結局は雑草を抜かなければいけない。


 これは、庭を綺麗にしておきたいという問題ではない。


 近所の人たちの目もあるからだ。


 例えば、悲惨な事件や孤独死などのニュースで、その家が映されることがある。


 そういう時、庭が雑草だらけで荒れている様子が映されることがある。


 あれは、庭の手入れがされていないことによって、その家が普通の状態ではないことを表しているのだと思う。


 私自身は、ほとんど引きこもりなので、草が伸びていても、それほど困ることはない。


 それでも、世間体というものがある。


 だから、雑草は抜かなければいけない。


 本当に嫌な仕事だった。


 異世界では、家の外をどうするかは、まだ決めていない。


 異世界の人たちと交流するのか、それとも交流しないのかも決めていない。


 ただ、草だけは生え続けている。


 今は私の家は異世界の人たちから認識されないようにしてもらっているので、草ぼうぼうでも問題はない。


 私自身も、今のところ外へ出るつもりはない。


 だから、そのまま放っておいてもいい。


 でも、私にはヒューゴがいる。


 今、草ぼうぼうになっているところは、全部ヒューゴに草むしりをしてもらおうと思う。


 自分で草むしりをしなくて、ヒューゴがやってくれるのなら、私だって綺麗な方がいいしねWWW


 うちには坪庭もある。


 一坪くらいの広さで、砂利が敷き詰められ、大きめの石が二つほど置いてあり、夜にはライトアップもできるようになっている。


 坪庭との境目には、セキュオという防犯ガラスが入っている。


 一階のガラスはすべてセキュオになっている。


 セキュオは、割って侵入するまでに時間がかかる防犯ガラスで、普通のガラスより高価である。


 もしセキュオを割って侵入されたとしたら、家の中の物を盗まれることよりも、セキュオを割られることの方が我が家にとっては痛手かもしれない。


 廊下の一角から、そのセキュオ越しに坪庭を見ることができる。


 坪庭の反対側は隣の家との境界の塀になっている。


 だから、この坪庭は、リビングの戸を開けた私たち家族だけが楽しめるようになっている。


 購入する時は、坪庭も素敵かもしれないと思っていた。


 ところが、実際に住んでみると、暑い日も寒い日もドアを閉め切ってエアコンをつけているので、坪庭を見ることはほとんどなかった。


 しかも、猫が来て、砂利の上でふんをしていくこともよくある。


 結局、それは自分で片付けるしかない。


 腹立たしいことしかなかった。


 こんな場所を作るくらいなら、掃除道具入れとか物入れにしてくれた方が、よっぽど場所を有効に使えたのにと思っていた。


 今は日本の家をそのままコピーしてきているだけなので、坪庭には石とライトアップの設備しかない。


 でも、暑い時期が終わって、エアコンをつけなくても廊下との境目の戸を開けていられる季節になったら、この坪庭に異世界の植物を置くのもいいかもしれない。


 初めての異世界との交流、触れ合いは、植物になると思う。


 JINさんおすすめの植物をここへ置いて、眺めるのもいいかもしれない。


 なんで、こんなに草の話をしたのかというと、日本のソフィーの配信で、姫モンステラの話が出てきたからである。


 姫モンステラというのは、観葉植物の一種である。


 私は寝室で姫モンステラを育てている。


 私が育てている姫モンステラは、手のひらに乗るくらいのガラスのコップのような容器に植えてある。


 表面には白い化粧石が敷かれ、その下にはハイドロコーンが入っていて、土は使っていない。


 土で育てると虫が来るかもしれない。


 私は虫が嫌なので、土ではなく、ハイドロコーンで育てている。


 最初の一株は、だいぶ大きくなってバランスが悪くなってしまったので、節のところで切った。


 切った方は、一か月くらい水につけていたら根が生えてきた。


 そこで、こちらも同じように、白い化粧石とハイドロコーンを入れた容器へ植え替えて育てている。


 もう一つ、節があるかどうか微妙だと思いながら切ったものもあった。


 葉っぱは綺麗だったので、枯れるまで置いておこうと思い、とりあえず水につけておいた。


 すると、奇跡的に一本だけ根が生えてきた。


 今は、その成長を楽しみにしながら、水を替えて見守っている。


 ここまで読んで、「あれほど草が嫌いだと言っていたのに、なんで観葉植物なんて育てているんだ」と思った人もいるかもしれない。


 その話をしようと思う。


 子供が引っ越した時に置いていった、引き出し付きのセミダブルベッドを、今は私が使っている。


 そのベッドを私が使うことになった時に、マットレスは新しいものに替えた。


 さらに、ベッドカバーやシーツ、カーテンまで同じ柄でそろえた。


 焦げ茶色をベースにした、とてもシックな寝室になった。


 その写真を配信で見せると、みんなから「ビジネスホテルみたい」と言われた。


 そして、「ここは観葉植物があった方がいいぞ」と言われた。


 なるほどと思い、手のひらサイズの観葉植物の造花が三つセットになったものを買って飾ってみた。


 最近の造花は、本物と見間違えるくらいよくできている。


 すると、予想以上に部屋が素敵になった。


 緑のある部屋っていいなと思った。


 自分でも、とても素敵な寝室になったと満足していた。


 そんな時、誕生日にリスナーさんの一人からプレゼントが届いた。


 私が専業主婦として恵まれた生活を送っていることは、リスナーさんたちも知っている。


 そのため、私が面白がりそうな珍しい物や変わった物を、プレゼントしてくれることがある。


 オリヅルランも、その一つだった。


 株分けしたオリヅルランを、ほかのプレゼントと一緒に送ってくれたのである。


 家には、お酒を飲む人がいない。


 そこで、水割り用の重たいガラスのコップに水を入れ、そのオリヅルランを飾ることにした。


 ところが、私の部屋が寒かったのか、水はちゃんと替えていたのに、だんだん枯れてきてしまった。


 もう駄目かなと思っていたところ、プレゼントしてくれたリスナーさんから、「もっと日当たりのいい場所に置いてみたら」とアドバイスをもらった。


 二階のトイレは日当たりが良かったので、そこへ移動させた。


 トイレなら水もすぐ替えられるし、必ず毎日行く場所なので、そのたびに様子を見ることもできる。


 すると、もう駄目だと思っていたオリヅルランが、少しずつ元気を取り戻していった。


 あの時は、本当に感動した。


 そこからは、もっと元気に育ってほしいと思うようになった。


 百円ショップで、水に混ぜる液体の栄養剤を買い、水を替えるたびに入れるようにした。


 すると、オリヅルランはますます元気になり、どんどん葉が増えていった。


 私は基本的に、世話をするより世話をされたいタイプである。


 面倒なことは、なるべく避けたい。


 それなのに、このオリヅルランだけは違った。


 私が水を替え、栄養剤を入れ、日当たりのいい場所へ移した。


 その結果、自分の手で元気を取り戻し、すくすく育っていく姿を見ることができた。


 それが、とても嬉しかった。


 その時に思った。


 草って、いい。


 花は咲けば枯れるし、手間もかかる。


 でも観葉植物は違う。


 私が少しだけ手をかけて、あとは見守っているだけで、元気に育ってくれる。


 そのくらいの距離感が、私にはちょうどよかった。


 それから私は、少しずつ観葉植物を増やしていった。


 ガジュマル、サンスベリア、マドカズラ、アイビー、そして姫モンステラ。


 どれも手のひらサイズで、手間はあまりかからないのに、おしゃれで綺麗な観葉植物ばかりだ。


 ただ、残念ながら冬だったこともあり、ガジュマルとアイビーは枯れてしまった。


 いろいろ手を尽くしてみたが、駄目だった。


 今、寝室にあるのは、サンスベリアとマドカズラ、それから姫モンステラである。


 それらの観葉植物は、おしゃれなワゴンに並べて飾っている。


 朝になると、遮光性の高いカーテンを開け、レースのカーテンだけにする。


 そして、ワゴンを窓際まで移動させて、少しでも日が当たるようにしている。


 葉っぱには、たまに霧吹きで水をかける。


 容器の水が減ってきたら、水を足す。


 異世界へ来てからも、その習慣は変わらない。


 毎朝ワゴンを窓際へ移動させ、少しでも日が当たるようにしている。


 葉っぱには霧吹きで水をかけ、容器の水が減れば水を足す。


 この世界は、蛇口から出る水がミネラルウォーターしかない。


 なんとも贅沢な環境で育っている観葉植物たちである。


 そのことを、一緒にソフィーの配信を見ていたJINさんに話した。


「私も今、新しい姫モンステラの成長を見ているのが本当に楽しいんです。


 最初は根もなかったのに、少しずつ根が伸び、毎日のように成長していく。


 その生命の神秘というか、小さな変化を見守っている時間が、本当に楽しいんです。


 自分は何か特別なことをしているわけではありません。


 ただ水を替えて、毎日見守っているだけなのに、少しずつ成長していく姿を見るのが、本当に嬉しいんです」


 すると、JINさんからコメントが届いた。



 JIN:理美さんは、本当に素晴らしいですね。


 その考え方は、神として本当にふさわしい考え方です。


 理美さんなら、きっと素晴らしい神様になれます。


 理美さんは、神様になることに興味はありませんか?



 私は今まで、「神様を信じますか」とか、「神様に興味はありませんか」という勧誘なら、見たり聞いたりしたことがある。


 でも、「神様になりませんか」とか、「神様になることに興味はありませんか」と言われたのは、生まれて初めてだったWWW


 冗談なのか、本気なのか、それとも神様ジョークなのか、私にはよくわからなかった。


「一応、考えておきます」


 私は、とりあえずそう答えておいたWWW

JINさんマジっすねWW

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